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この『アイなき世界』で僕らは  作者: 京 高
14 混迷する帝都
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214 ブラックマーケットを壊滅せよ!

 帝都の警備兵たちの教官役を解雇されてから三日後、俺は第一次闇ギルド掃討作戦に参加していた。


 一口に『闇ギルド』といってもその形態や規模は様々だ。リアルでも様々な犯罪組織があるのと同じだな。わざわざゲームの中でそんなことをしたいという思考が理解不能だが。

 元々は第三陣プレイヤー参加直後に起きた大規模イベントで、帝国側についていたイリーガル系の複数のギルドが『闇ギルド』として公式に手配されたのが始まりとなる。

 だがその後、活動拠点を帝都に移す間に再編や統合が行われ、さらにはその下部組織的なギルドも登場することになった。


 現在では俺たちプレイヤーが把握しているだけで、三つの正式な『闇ギルド』と六つの下部ギルドが存在している。

 これら九つのギルドを合わせて『闇ギルド』と呼称しているのだ。


 さて、今回のターゲットは四つの下部ギルドだ。こいつらはNPCから窃盗や強盗を繰り返したり、ブラックマーケットを開いて手に入れた盗品の売買を行ったりして『闇ギルド』全体の活動資金を作っている。

 まずは資金の流入口を潰すことで『ペインドラッグ』の買い付けの邪魔をしようという訳だ。


 ユージロの説明によると、役割的に活動場所を特定しやすかったということもターゲットに決定した理由の一つではあるそうだ。

 確かにブラックマーケットを開けるような場所がそうそうあるとは思えない。必然的に同じ場所で開催することになっているのだろう。


「な、何者だてめえら!?何しにきやがった!?」


 入り口脇にいた一人が突然乱入してきた俺たちに驚いて、ありがちな定番台詞を口にする。


「闇に隠れる悪を討つ!正義の味方ごっこでござるよ!」


 律儀に返した権三郎の台詞も定番で……、はなかったな。いや、正義の味方の真似事のようなことをしているのだから間違ってはいないんだが、ごっこはないだろう、ごっこは。もう少しマシな言いようはなかったのかと、心の中で突っ込んだのは俺だけではなかったはずだ。


 それでもさすがは大手ギルドのギルド長というべきなのか、間の抜けた問答を繰り広げながらも権三郎はきっちりと自分の役目を果たしていた。

 すれ違いざまに居並ぶ者たちを次々に倒していたのだ。殺したりはしておらず、彼ら特製の毒薬によって麻痺と昏睡の状態異常に陥っていた。


 これは別に倫理に則っている訳ではなく、死に戻ることによって襲撃の情報が広がらないようにするための措置である。

 他にも後で楽しくお話しして知っていることを吐かせたり、混ざっているNPCの悪人や犯罪者を警備兵に引き渡して金にするためであったりもする。

 何にしても殺されていた方がよかった、そしてゲーム内とはいえ悪事を働くようなことをしなければよかったと後悔するようなことになるのは間違いないだろうな。


 おっと、のんびりしていては獲物を全部権三郎に奪われてしまいかねない。

 俺は明かりに引き寄せられた虫のように、駆除すべき愚か者どもが集まっている所へと慌てて走り寄って行った。


 そういえば、今いるこの場所についての説明をしていなかったな。ここは帝都の地下深くに広がる太古の遺跡、などではなく地下通路の片隅だ。

 時の皇帝たちがそれぞれ自分だけが知る秘密の通路を作ろうと際限なく拡張していた結果、帝都の地下には網の目のように広がる地下通路が生み出されてしまっていた。


 しかもその管理を全くしていなかったものだから、いつしか魔物が住み着くダンジョンと化してしまっていたのだった。

 この話を最初に聞いた時、「真下にダンジョンがある?よく今まで滅びなかったな……」と驚くよりも呆れてしまった。


 そしてこの地下通路ダンジョンの特徴の一つとして、真っ暗闇だということが挙げられる。

 この暗いという特徴自体は珍しいものではなく、遺跡や洞窟、迷宮系のダンジョンでは定番ともいえるものである。

 逆に森や荒野などの屋外系のダンジョンではほとんど見られない。しかし隠し部屋的に洞窟が含まれていることもあるので、絶対ないとは言い切れなかったりするのだが。


 話を戻そう。暗視の能力などを持つごく一部を除けば、暗闇に包まれて周囲が見えない状況で活動できる人間はいない。

 俺もその一人であり、『闇ギルド』のやつらが明かりの元に集まっていたのは運が良かった。


 おっと、決して暗闇が怖いということではないので勘違いしないでもらいたい。

 もっとも暗闇に対する恐怖というのは人間が生物として根源的に持つものらしいのである意味当然のことではあるのだが俺は別に怖くないのでそんなことはどうでもいい話でとにかく固まっているやつらをさっさとぶっ潰すことにしよう。


「くっそう!いいところを邪魔しやがって!ただですむとは思うなよ!」


 一人で向かってくる俺を見て与しやすいと思ったのか、男たちの一人がそんなことを口走っている。その背後には数名の子どもたちの姿があった。


 外道が!

 人身売買にまで手を出していたか!


 カッと頭に血が上りそうになるのを懸命に抑える。幸いなことに数では勝っているからか子どもたちを人質や盾にしようとはしていない。

 そんな考えが思い付かないうちに終わらせてやるとしよう。


 近づいてくる一人目に向かって横薙ぎに戦斧を振るうと、大袈裟に距離を取っている。これだけでも大した力量ではないのが見て取れたのだが、そもそも俺の狙いはこの男ではなかった。

 途中で柄を持つ手を緩めると、大振りに振られた遠心力を伴って愛用の戦斧は一歩遅れて近寄ろうとしてきた二人目、三人目に向かって飛んで行くことになった。


「んなっ!?」

「げえっ!!」


 高速で飛来する巨大な質量を捌くこともできずに直撃を受けた二人は、もんどりうった上にのしかかる戦斧に潰されることとなる。

 PvPを繰り返してきた俺には手加減技能があるから、死んではいないはずだ。その証拠に二人は消えることなくその場に残り続けていた。


「や、野郎!」


 予想もできないような方法であっという間に二人の仲間が倒される様を見て呆けていた男たちだったが、俺が得物を手放したことに思い至って再び躍りかかってくる。

 だが遅い。

 既に俺はアイテムボックスから予備の戦斧を取り出して迎撃準備を完了していた。向かってくる男たちをズンバラリンとなます切りにしながら戦闘不能にしていく。


 これで死んでいないなんてあり得ない!?という映像となっていたが、手加減技能の働きによって残る男たちも死に戻ることなく意識だけを刈り取られて、その身を床へと横たえていくことになるのだった。

 そして戦斧の下敷きになって呻いていた二人も同じように気絶させた時には、ユージロや権三郎たちによって残る連中も一人残らず片付けられていたのだった。


手加減技能の登場が唐突でご都合主義的過ぎるですって?

……仕様です。

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