エピソード6
協会内で、アシェを待っていたのは……美しい女性だった。
ウェーブかかったロングの金髪に碧い瞳をした彼女は、アシェに優しく微笑む。
「はじめまして。わたしはステリュネ。この協会の代表を務めている者よ? よろしくね、アシェ」
「え? あ、はい……」
「彼女にはあらかじめ、君の事を伝えていたんだ。安心しておくれよ」
「は……い」
(安心……か。出来ないよ……だって……僕は、僕には……)
――魔剣がある。この世界の理から外れた魔剣が……。
「早速だけれどステリュネ。アシェ、いやアシェが背負っている物がなんのか分かるかい?」
フリヘートに聞かれたステリュネの瞳が一瞬淡く光り、すぐにその表情が驚きに変わる。
「これは……魔剣ね。それも、とてつもない力を宿した……災厄の魔剣だわ」
(災厄? そうか、そうだよ、ね。だって……この魔剣は名を奪うのだから……)
心のどこかで、淡い希望を無自覚に宿していたアシェは、それが砕かれた感覚がした。
自分はやはり、とんでもない業……罪を背負ったのだと突き付けられたからだ。
自責や、魔剣本体からよりも、明らかに善人なフリヘートとステリュネから突き付けられた事が、アシェの心の闇をより濃くしていく。
闇に染まっていく。
それに気づいたのか、ステリュネが悲しそうな声色でアシェに向かって声をかけてきた。
その声音はどこまでも優しい。
残酷な程に。
「アシェ。良く聞いてね? 貴方が背負っているのはとてつもない物、それは変えられないわ。だけれど、いえ、だからこそ。わたしは手を貸したいわ。魔剣でもなく、貴方……アシェにね?」
「え?」
困惑を隠せないアシェに、ステリュネは微笑むとゆっくりとアシェに近寄り、肩に手を置く。
繊細な割れ物に触れるかのように、慎重かつやさしく。
そして、アシェをまっすぐ見つめると断言した。
「わたしもフリヘートも、貴方を救うわ。その魔剣の呪縛から、絶対にね?」
力強いその言葉に、アシェの瞳から涙が零れる。
純粋な嬉しさと……この状況下で沈黙を貫く魔剣の静かさに恐怖を抱いて。
それでも。
抗えるなら抗いたいと、アシェは心から思った。
フリヘートに憧れたのも、空に焦がれたのも――全ては自由そうだと思ったからなのだから。
「さて、じゃあ具体的にどうしたらいいのか? 考えようか!」
フリヘートは、当然のようにそう告げた。
頼もしい彼らと共に始まる。
新たな運命の歯車が動きだした。
それを告げるかのように、協会の外にある町のシンボルの塔から鐘の音が鳴り響いた――




