第40話:釈明と心配の声
「いや、それはだって、剣聖や賢者と戦っていたわけだし、仕方ないだろう?」
「私が言いたいのは、どうしてそういう状況になってしまったのかっていうことよ!」
うーん、そう言われて、本当に仕方がない状況だったんだよな。
というわけで、俺はルミナとリンディアと戦わざるを得なかった状況について、アリスディアに説明をしていく。
もちろんこれはレイドを助けるためであり、本当に必要だったのだということも付け加えてだ。
最後まで説明を終えたものの、アリスディアの表情は冴えず、まだ納得していないように見える。
「……まだ何かあるのか?」
これ以上の説明は難しいと判断した俺は、何が不満なのかを直接聞いてみることにした。
「……だって、おかしいじゃない」
「おかしいって、何がだ?」
「そもそもの話なんだけど、どうしてレイドは火山まで退くことになったの? 勇者や英雄がそちらに来るというのであれば、最初からそこに戦力を集中させるべきだったんじゃないの?」
アリスディアの言うことは正論なのだが、これはあくまでも勇ボコの知識があるからこそ分かったわけで、そうでなければ勇者たちがどこに現れるのかなんて、本人たち以外には分からないことだ。
「今回はたまたま、レイドのところに現れただけだ。俺が事前に知っていたわけじゃないって」
「だけどシャドウ、あなたは戦争の前に火山まで行っているわよね? それはつまり、レイド側に何かが起きるって分かっていたんじゃないの?」
あー……まさかそこを指摘されるとは思わなかったな。
確かに、アリスディア目線で見ると、俺の行動は事前に何かを知っていたんじゃないかと思われても仕方がない。
とはいえ、本当のことを言ってしまうと俺がシャドウではない、別の誰かだとバレる可能性もある。
「それに、レイドから聞いたわよ。減魔鋼のせいで苦戦したんだって。……シャドウ、どうして減魔鋼を回収してこなかったの?」
「そ、それは……」
さらにアリスディアはレイドからの報告も交えて、俺への疑惑を問い質してきた。
……もしかして俺って、疑われている?
「……ねえ、シャドウ。私に隠し事があるんじゃないの?」
ギクッ!
「……な、なんでそう思うんだ?」
「だってあなた、王都に行ってから、少し変わったんだもの」
ギクッ! ギクッ!
「もしかして、魔王軍が嫌になったの? 王国に帰りたくなった?」
「まさか! それだけは絶対にない!」
「それじゃあ教えてよ! 最近のシャドウ、なんだかおかしいわよ!」
アリスディアの問い掛けに否定を口にすると、続けて彼女は声を荒らげた。
……なあ、シャドウ。お前、幸せ者だよな。
魔王であるアリスディアに、ここまで心配されているんだからさ。
「……分かった」
シャドウなら、ここでどうするだろうか。
いや、そもそも本当のシャドウだったら、レイディスのことなど考えることもなく、魔王軍のために力を尽くすことだろう。
だからこれは、隠者黒子という意思の、勝手な我がままであり、事実を話すことでアリスディアからの信頼を失ってしまうかもしれない。
でも、これ以上は隠しきれない。
隠し続けてしまうと、アリスディアを苦しめてしまうと思うから。
「……まずはっきりさせておくことがある。俺は魔王軍のために力を尽くしているだけで、王国に戻りたいだなんてこれっぽっちも思っていない、ということだ」
「分かった、信じるわ」
「ありがとう、アリスディア。それを踏まえてなんだが……魔族と人間、その橋渡しと共生ができないかを、考えているんだ」
俺の本音を聞いたアリスディアがどんな反応を示すのか。
正直怖いが、目を逸らすわけにはいかない。
俺はごくりと唾を飲みこみながら、まっすぐにアリスディアを見つめていた。
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