第32話:二度目の戦争
二度目の戦争は予想以上に拮抗した戦いを繰り広げていた。
まあ、俺が暗躍していたのは火山や王国内でだけで、平原では特に何かをしたということもないし、こんなものかと眺めている。
しかし、最前線だけではなく全体に目を向けなければならない。
特にレイドが守っている本陣の左側には注意を払わなければならない。
「……ふむ。どうやら順調にいっているようだな」
そう口にしたアリスディアだったが、いったい何が順調にいっているのか分からず、俺は首を傾げてしまう。
すると、そんな俺の反応を見たからか、アリスディアはこちらに視線を向けて口を開く。
「お前がここにいる、それが順調にいっている証拠だ」
「……そういうことでしたか」
口調が魔王のものになっていたので、俺もそれに合わせて答えていく。
確かに、アリスディアから見れば前回の戦争も、俺が動き出してから戦況が大きく変わったと思っているかもしれない。
故に、俺がまだ動いていないイコール、問題が起きていないと考えるのは自然なのだろう。
「気になるところは多少ありますが、想定の範囲内といったところですね」
「どこかに危険が生じているのであれば、我に構わず動くのだぞ?」
「……ありがとうございます」
ひとまずはこう答えておくのが正解だろう。
本当のことを言えば、アリスディア本来の話し方で色々と言われるのが目に見えているからな。
とはいえ、本当に多少気になるところがあるだけで、その他は順調に事が運んでいる。
最前線もイボエルがいるからだろう、こちらの優位で戦況が推移している。
右側はボルズが大暴れしているのか、雷や竜巻が荒れ狂っており、視線を向ける必要すらない気がする。
実際に勇ボコでも今回の戦争で、ボルズとブラックが見ている戦場に勇者や英雄も現れず、圧倒的優位を保ったままだが戦争に敗北していた。
そのせいもあり二人は戦争後の魔王会議で荒れに荒れたんだったか。
「ふむ……勇者と英雄たちがいないようだな」
アリスディアの呟きを耳にして、俺はレイドの戦場へ視線を向ける。
現時点では問題はなさそうに見えるが、戦況が大きく変わるのはこれからだ。
もうすぐ英雄の一人であるリンディアが現れて、レイドの戦場に広範囲魔法を放ってくるはず。
そこから戦況が一気に王国軍優勢へと傾き、レイドは戦場を火山へと変えざるを得なくなるのだ。
その時の王国軍の動きはあまりにも用意周到だった。
おそらく今も裏で暗躍しているのだろうけど、今回ばかりは絶対に思い通りにさせるつもりはない。
「……動いたか」
突如、レイド側の王国軍に動きがあった。
後方の部隊が大きく迂回し、レイド軍の後方へ回り込もうとしているのだ。
これにレイド軍も対抗して軍を分散させていくが……どうやら、ここまではストーリー通りのようだ。
「む? どうやらレイドの方が動いたようだな」
「はい。ですがこれも、想定内です」
「そうなのか?」
「そのための準備も終わっております」
「……ならば、よいが」
どうやらアリスディアは心配のようだ。
まあ、前にレイドを助けてほしいという話をしたばかりだから、心配になる気持ちも分かる。
しかし、今はまだアリスディアの安全が完全に保証されたわけではない。
イボエル、ボルズ、ブラック、どちらかの戦場で勝利が決定的になれば、俺も動けるんだがな。
「……待て待て、シャドウ! 待ってよ! レイドのところ、危ないんじゃないの!」
「ちょっと、魔王様!?」
また話し方が戻ってますけども!?
「だって! あの魔法、レイドが本気を出した時に使うやつじゃないのよ!」
アリスディアに言われて俺も改めて視線を向ける。
……確かに、あれはレイドが自らの領域を作り出す魔法、絶対領域。
普段は使わない魔法を展開していることに、アリスディアは焦りを覚えたのだ。
「確かに強敵が現れたのでしょうが、大丈夫です」
「どうしてよ!」
「絶対領域を発動させたレイド様が敗れるとは思えません」
普段通りの話し方のままのアリスディアに対して、俺は魔王口調をやれと言わんばかりに魔王対応で言い放つ。
そして、アリスディアもレイドが負けるとは思えないと思ったのか、浮かし掛けていた腰をもう一度下ろし、小さく息を吐く。
「……本当に、大丈夫なんでしょうね?」
「……そのはずだ」
「はずって! ……分かった、信じよう」
ふぅ。ようやく落ち着いてくれたみたいだ。
ここで俺が動いたら、それこそレイドに怒鳴られてしまいそうだからな。
とはいえ、ここでレイドが絶対領域を発動させるのは予想外だ。勇ボコのストーリーでもなかったはず。
ということは、勇者や英雄たちが少し予定とは異なっているけど、レイド側に現れたということだろう。
……これはむしろ、好都合なのではないか? 他の戦場を気にしなくてよくなったわけだし。
「魔王様。シャドウ」
「「うわあっ!?」」
そこへ俺たちの背後から声が聞こえ、二人して驚きの声を上げてしまった。
「失礼した」
「びっくりしたぁ……って、ブラック、様?」
思わず普段の口調になりそうなところを踏みとどまった俺は、突如現れたブラックに声を掛けた。
「も、持ち場はどうしたのだ、ブラック?」
「戦況がほぼ確定しましたので、戻ってまいりました」
レイドの方に意識を向け過ぎていたようで、俺はブラックが担当していた最前線の後方へ視線を向ける。
ここは最前線から抜けてきた王国軍を迎え撃つ部隊だったのだが、イボエルの大活躍によってほとんど敵が抜けてくることもなく、来たとしてもボロボロになった王国軍だけ。
ブラックが出張らなくとも、兵士たちだけで問題なく戦闘を終わらせることができていた。
「魔王様の護衛は私が引き受ける。シャドウは動いて構わない」
そして、ブラックの言葉を受けて、俺は彼……ではなく、彼女の意図を理解した。
「……かしこまりました、ブラック様。それでは魔王様、私が動く許可をお願いいたします」
これでアリスディアの安全は確保されたと言っていいだろう。
ならば、今度は俺が動く番だ。
「我が参謀、シャドウよ。そなたの暗躍を許す」
「仰せのままに」
アリスディアの指示を受け、俺は影に姿を消して暗躍を開始した。
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