80 お話ししましょう
「失礼します。お待たせ致しました」
「いえ、そんなに待っていませんよ」
「それは良かった。早速ですけど、色々と聞きたいことがあるんですよ。まずは少しお話ししましょうか」
「そうですね」
さて……何から聞こうかな。まずは相手の情報を聞き出さないといけない。テーブルを挟んで向かい合わせに座り、あえて扇で表情を隠したりせずに話すことにした。
「まずはあなたのことを話していただきたいです。単刀直入に聞くけど、あなたは誰?」
「……誰、とは」
「惚けなくて良いですよ。わたし、メルティア子爵とは何の関わりもないしお話ししたこともないんですよね。彼はご夫人を大切にしておられるし、女好きでもないと思います。あなたがメルティア子爵じゃないのは分かっているけれど、不可解な点が多いのよね」
そう、わたしはメルティア子爵と親しく見えるように振る舞っていたけど、見覚えがあるくらいで実際には全然そんなことはない。わたしが話している目の前にいるメルティア子爵も、本物とは真逆と言って良いほどに性格が違う。でもね、素人でも成り済ましている相手のことを調べるくらいはすると思うんですよ。特にこの人は妙に手馴れた様子があるし、言った通り不可解な点が多いんだよね。
「へぇ……やっぱりバレたか。さすがはフランクス……いや、ユリウスのロード。皇家直属の影の実力は本物なんだな。ここまで本物と違う態度を取れば気付いてくれると思っていたぜ?」
「……目的とターゲットを言いなさい」
「ん? 残念だが目的は言えねぇな。ターゲットも今は秘密だ。近い内にまた会うことになるだろうし、いつかは分かるんじゃね?」
はぁ? また会うことになるって……別に会いたくないんですけど。任務も面倒なことも、早く終わらせるのが一番ですよ。
「そう。わたしのことはどうやって知ったのかしら。そう簡単に情報を手に入れられるとは思えないのだけど」
「こっちのトップはそれなりに力のある方なんだ。どの血筋がロードなのかくらいは分かったぜ。まああんたの役割を調べ上げるにはかなりの年数を無駄にしているようだがな。安心しろ、言いふらすつもりも、ターゲット以外に危害を加えるつもりもない。あんたもオレらの邪魔さえしなければ傷一つ付けないがどうする? 真っ向からやり合ってどっちが勝つのかは気になるが、無駄に騒ぎ立てたくはないだろう?」
「それはそうね。でも何か勘違いしていないかな? 自分が優位に立っていると、本気でそう思っているの?」
ロードの力を舐めてはいけませんよ。特に戦闘特化の血筋で、それも過去一の実力を持つと言われているわたしが相手。皇帝陛下に許可をいただいているのだから、このまま逃がすか捕らえるか、もしくは殺すか。当主にもなりましたし、全ての決定権はわたしにあるんですよね。まずはわたしから逃げる方法を探すことを優先した方が身のためだと思いますよ。
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