engineer
☆ミキヒコ☆
「どうだ?ミキヒコ、交換出来たか?」
父ちゃんが声をかけてくれる。
薄暗い穴蔵みたいな空間。
「おぅ、今パッキングやってる」
オレは“船”のエンジンの外郭にいる。父ちゃんや叔父ちゃん達と“船”を直してる。
本当は他所までいける“船”だが、今は海の中を行く観光船に使われている“船”だ。
定期的にメンテはしてるけど、大型の魚に当たったりして、結構やられてる。
海の水は機械に悪いんだ。
外装の下がパッキングばりばりの小部屋に仕切られてるのは、万一外装がダメんなっても、その小部屋にだけで水が停まる様にだと、叔父ちゃんが教えてくれた。
でも、小部屋だから、身体の大きな人は入りにくい。
そこで普通は小部屋ごと交換するんだが、パッキングをするのに潜り込む必要があったりする場合。
身体の小さなオレが登場。
スルスル入って交換してパッキング材も充填するて寸法だ。
個人会社【本榛メカニック】が家の仕事だ。
修理取り扱いは家庭用品から“大型船”まで多種多様だ。
でも、あんまり儲かってないみたいだ。
儲かって無いからガイロイドも1台しかない。
この仕事、こんなでっかい“船”扱う時とか頭数が必要だけど、簡単には人員増が許されないからだ時間がかかって儲からないんだ。
人手が増えればバリバリできるのに。
ゴリさんたちは、貴重なランをオレ達みたいな下々には、あまり安く売ってくれないから人手が増えないんだ。
オレも年代物のランが元になったから、あまりでかく無いんだろうと言われてる。
けど、この仕事なら利点だろ。
でも、叔父ちゃん達の跡継ぎ申請が、ゴリさん達に通らなかったから、オレより年少の家族は居ない。
後五年したら、十八んなるからオレも跡継ぎ申請ができる。
んで、なるたけ金貯めて良いランを買いたいと思う。
「おわりでぃ」
父ちゃんに言った。
「ミキヒコ、この“船”は内側のパッキングもきっちりしといてくれや」
「あいよ。じゃあ内の充填すらぁ」
父ちゃんにいわれてオレは反対側のパッキングにかかる。
ゴリさんたち以外の客が乗ることの出来無い“船”のパッキングに。