即興劇《アドリブ》
ズズズズ______
漆黒の暗闇から姿を現した世壊しに、カオルとアイラは目を見開いた。
漆黒の巨体に無数に生えた脚、その姿は大きな蜘蛛の様にも思える。
しかし、その巨体の中心にあるのはギョロリを見開かれた大きな1つ目。
この世のモノとは思えない、その出で立ちに彼女達は……
(もの◯け姫のアレみたいやなー)
(ぅわー、ガチでキモい)
……各々の反応を示していた。
「ギギギィ……大妖怪『世壊し』様の姿に恐れをなしたかッ!」
…………。
世壊しの言葉にカオルとアイラは再びお互いの顔を見合わせた。
「ねぇ、カオちー。ぁいら、用事思い出したから後はお願いねー」
「おい! 用事って何やねんッ!」
引き止めようとするカオルを他所に、アイラは世壊しに背を向け走り出した。
…………!
だが、走り始めてすぐにアイラが突然止まった。
「なんや、やっぱ逃げんのは止めたんか?」
「違うッ! 何かに掴まれて足が動かないの!」
目を凝らしてよく見ると、彼女の脚に漆黒の暗闇が纏わりつく様に絡まっている。
「グギギィ……俺様から逃げれると思ったのか?」
「……ぷぷぷ。らしいでー」
世壊しの言葉に、何故かカオルが薄ら笑みを浮かべ同調する様にそう述べた。
すると、アイラは何も言わず抵抗するのを止め、両者を睨んだ。
「グギギィ……そうだ、大人しく俺様に喰われるのが賢明な判断だ」
「はぁ? 何言ってんねん。アホちゃう?」
恰も勝った気でいる世壊しにカオルは眉をひそめた。
「グギギガガッ! ニンゲン風情がッ____この俺さ……」
『激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム』
唐突にアイラが意味不明な言葉を発した。
…………。
その一瞬で、鬱蒼とした森の一部が焦土と化した……
【スキル解説】
【異界詠唱術】
アイラ=イケブチのユニークスキル。
異界の言葉に魔力を込めて詠唱する事により、魔法を発動する事が出来る。
詠唱時間が短い分、魔力消費が通常の魔法を使用するよりも遥かに大きい。
あと2話で終わります。
お付き合いのほど宜しくお願い致します…