幕内の異常事態
『……グギギ……くそ……何なんだよ、あいつらは……』
蠢く漆黒の闇夜は近くにカオル達が居ることに気が付いていないのか独り言のようなもの呟いている。
…………。
カオルは静かに魔導バイクのエンジンを切り、アイラと顔を見合わせた。
そして互いの共通スキルである『鑑定』を使用した。
「「(鑑定ッ)」」
すると、彼女達の目の前に使用者にしか見えない半透明の画面が表示される。
そこに表示された情報を確認し、彼女達は驚いた。
【世壊し】
異世界から来た妖怪。
闇夜を操り、幾多の夜を渡り歩く事が出来る。
「(なぁ、アイラ。『妖怪』って出てんやけど)」
「(ぁいらのも、そー書いてる)」
…………。
『妖怪』
彼女達の世界では昔話や民話に登場する異形の総称。
その存在は不明瞭で、彼女達の居た世界では実際に存在しないとされる空想の存在である。
「(どないする? 殺るか?)」
世壊しという妖怪を前にしても、カオルは臆する事なくアイテムボックスに魔導バイクを収納し、一番殺傷能力があるであろう大砲を取り出していた。
「(ちょ、ちょいまち。魔物なら大丈夫だろうけど、相手は『妖怪』だよ? 超→強かったら、どーするの?)」
今にも攻撃を仕掛けようとするカオルをアイラは慌てて制止した。
「(ちょっと様子を見ようよ。それでヤバそーだったら逃げよ)」
状況を鑑みない脳筋に任せると碌な事にならない。
カオルと数ヶ月を共に過ごしてきたアイラはその事を身をもって感じていた。
「(しゃーないなー)」
アイラの説得もありカオルは渋々といった様子で大砲をアイテムボックスへ収納し、二人で妖怪「世壊し」の動向を見守る事になった。
【スキル解説】
【鑑定】
対象物の情報を閲覧する事が可能なスキル。
レベルが上がるごとに、閲覧できる情報量が増える。
自身に使用する事で、状態確認やステータス確認もできる。
【アイテムボックス】
持ち物なら何でも収納できる便利スキル。
アイテムボックスに収納された物は、時間が停止しその状態が維持される。
1話が短い? 大丈夫、仕様です。