表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/173

まったり公園デート


 もちろん俺は、背後にいる柊木ちゃんのせいで全然眠れなかった。

 と、思っていたけどいつの間にか結構熟睡していたらしく、いい匂いで目が覚めた。


 まだ時間は朝の七時。

 俺が目をこすりながらキッチンに行くと、柊木ちゃんが何か作っていた。


 料理をしている女の人の後ろ姿は、なぜかぐっとくるものがある。


「あ。起きた。おはよう、誠治君」


 ちゅ、とおはようのキス。


「ちょっと、朝から……」

「三回も四回も一緒一緒♪」


 柊木ちゃんの機嫌はかなりよさそう。


「朝ごはん?」

「ううん。お弁当。ドライブで、誰もいないところに行くから」


 誰もいないところ? どこのことだろう。

 朝ごはんはもう出てるから、と言われてテーブルを見ると、トースト、目玉焼きとサラダが用意されていた。


「あ、先に歯磨きするタイプ? よかったら、これ使ってね」


 ごそごそ、とスーパーの袋の中から新品の歯ブラシを取りだした。

 何でもう俺の歯ブラシ買ってきてんだ。


 もしかして、俺が泊まりに来るってことを見越して、昨日かそれよりも前に買ってたんじゃ……?


「悪い先生だ」

「今日は先生じゃないもん♡」


 もう柊木ちゃんは朝食や何やらの準備は終えていたらしく、俺がご飯を食べて歯磨きを終える頃には弁当も出来あがり、すぐに柊木ちゃん宅をあとにした。


 丸っこい軽自動車に乗り込み、ドライブ開始。


「ええっと、ええっと……」


 信号待ちの合間にナビをイジる柊木ちゃんに代わって、俺が行先をちゃちゃっと入力した。

 行先は、県外の緑いっぱいの森林公園。


「誠治君、ナビの操作上手だね!」


 本当の俺は、ナビ付きの車を持ってる、なんて言えない。


「あー……機械関係は、得意だから」

「頼もしいっ。……あたし全然ダメで。あはは」


 ナビの操作程度って思うけど、柊木ちゃんにそう言われると、まったく悪い気はしないのである。


 二時間ほどのドライブは、控えめに言ってかなり楽しかった。

 あの先生がこうで、ああで、という各先生の裏側を柊木ちゃんが愚痴っぽく暴露したり、好きなロックバンドが一緒だったりと、ともかく盛り上がった。


 やってきたのは森林公園。

 結構山の中にあり、そのせいか、駐車場に車は全然いなかった。


「あ、あれぇ……」


 バックで駐車を失敗しまくる柊木ちゃん。


「春香さん、もしかして下手な人?」

「へ、下手じゃないってば! 苦手なだけだもん」

「いや、それほぼ一緒……学校に通勤したときはどうしてるの?」

「用務員さんにやってもらってる」


 この人マジかよ。

 キーを預けて駐車してもらうって、セレブ感あるけど、実態はただきちんと駐車できないだけ。


「代わって」

「え。誠治君できるの?」

「まあちょっと」


 はあ、と呆気にとられた柊木ちゃんだったけど、周りには俺たち以外誰もいなかったからか、運転を代わってくれた。


 いや、言い出しておいてあれだけど、柊木ちゃん、これ、ダメじゃね?

 免許を持ってない高校生に運転代わっちゃダメじゃね?


 まあ、先生と生徒が付き合うっていう禁忌を犯しているんだから、焼け石に水みたいなものかもしれない。


「頑張って!」


 と、言い終わるのと同時にきちんと駐車した。


「何で!? こんなにあっさり……」

「ええっと……あ。ゲーセンの運転するゲームあるでしょ? あれで」

「へえええ」


 レーシングゲームは、駐車なんて地味なことはしないけど、とりあえず納得してもらえた。

 本当の俺は運転免許持ってるからできる、とは言わないでおいた。


「内緒だからね? 高校生に先生が車を運転させたなんて」

「いや、そもそも俺たちの関係が内緒でしょ」

「あ、そうだった」


 ちろっと舌を出して笑う柊木ちゃんはやっぱり可愛い。


 弁当を持って歩くこと二〇分ほど。

 ちょっとした高台にやってきて、俺たちはベンチに座った。


 遠くには小さくなった街が見えて、その奥には海が見えた。


「いいところだね」

「春香さん、来たことあるの?」

「ううん。前調べて、今日遊ぶ候補のひとつにしてんだよ」


 ……飲み会の二次会断ったって言ってたから、柊木ちゃん、俺と今日遊ぶ気満々だったんだ。


「で、これ、何?」


 ベンチで俺を横にさせた柊木ちゃんは、俺に膝枕をしている。


「イヤだった?」

「イヤじゃないけど」

「じゃあオッケーじゃん」


 この先生、俺に何もさせない気だ。親鳥みたいにどんどん俺の口に弁当を箸で運んでくる。


「春香さんと一緒にいると、どんどんダメになっていきそう……」

「なっちゃえ、なっちゃえー♪」

「いいんかい」

「うん。卒業したら、あたしがずぅっと養ってあげりゅ♡」


 柊木ちゃんは、男をダメにする女の人だった。


「じゃあ……お願いします」

「りょーかいっ。それまで、バレないように頑張ってコソコソ付き合おうね♡」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作 好評連載中! ↓↓ こちらも応援いただけると嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/n2551ik/
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ