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あとがきという名の作者の悪ふざけ

※作者の妄想を垂れ流す話となり、作品のイメージを損なう恐れがあります

 ほのかな照明が差す部屋の中、二人の少女と覆面の人物が同じテーブルを囲っていた。テーブルの中央には一冊の本がぽつりと置かれていた。


「これが葉月ちゃんのたどってきた道なんだね」


「うん、そうだよ。大変だったんだからね。美里」


 葉月と呼ばれた少女が、もう一人の少女を美里と呼んだ。


「実は、いってなかったことがあるんだ……」


 覆面の男が重々しい口調で話し始めた。


「なにか隠していたネタでもあるの? 作者さん」


 葉月は覆面の人物を作者と呼びながら、気遣うように話しかけた。


「それがだね。この話はもっと気軽に読めるようなものにしようと思っていたんだ。学園に通う兄妹がいて、兄が活躍して『さすがお兄様』というのが口癖の妹がいる、そんな話にしたかったんだ」


「そうなの、それにしては、ちょっと重過ぎるような」


「いや、それがだね。とある人に、もっと重い話がなろうのサイトにあってもいいよねといわれてね。思いついたのが、ヒロインが罪悪感にまみれて自分自身を破滅に追い込んで喜んでいるというものだったんだよ」


「……くず」


 葉月は語りだした作者のことを冷たい目線で見ていた。


「気づいたらこんな鬱展開の話にって、あれ、話きいてる?」


「うん、きいてるよ。そのせいで、美里が魔物化した挙句お兄ちゃんに殺されたり、わたしは装置のパーツ扱いされたりしたんだね」


「あー、その場面は思い出してもきつかったよ」


 美里はうんうんと思い出しながらうなづいていた。


「ねえ、美里。秋といえば紅葉おろしだよね。食べたくなあい?」


「おお、いいね紅葉おろし。さんまと一緒にたべるとうんまいだよなぁ」


 葉月はイスから立ち上がると作者の方に近づいた。


「あの、葉月さんや、その凶悪な形をした腕はなんですか。まるで下し金のような鮫肌をしてますね」


 恐怖におびえる作者にちかづくと、頭に向けて鮫の魔物に変化させた腕を振り下ろした。


 『ザシュザシュ』となにかをすり下ろす音がした後、そこには真っ赤な紅葉おろしが出来上がっていた。


「さて、不要なごみは始末したし、他の場面もふりかえっていこうか」


 一仕事をおえたようにすっきりした顔をしながら葉月が美里に話しかけた。


「そうだねぇ、印象に残っているのは、鬼のおじさんこと葛原宗次の過去の話かなぁ。あの話だけで、2話もとってたからね」


「ああ、あの話はね。ニュースをみて思いついた話なんだ」


「うわっ、生き返った!?」


 いつの間にか、何事もなかったように話しだす作者をみて葉月は驚きの声をあげた。


「犯罪がおきるとさ、その犯人のことをニュースで流すけど、そのときに犯人を知る近所の人や知人の話をながしたりするじゃない」


「うん、よくみるね。おばちゃんとかが『普段からちょっとおかしな感じの人だった』と言ってるのとかさ」


「あとは…… 精神鑑定を受けていた経歴がないかとかかなぁ」


 作者の言葉をきいて二人は思い出しながら話した。


「そうそう、そんな感じだよね。そうやって、周りの反応から犯人はおかしなやつだったっていう印象を与えようとしているように見えたんだ。“普通”の人間ではなくおかしな人間だったから犯罪にはしったてね」


「それで、犯人は“人間”から“鬼”にされるってことか」


「そうやって鬼に仕立てることで、平和な日常が続いているという認識を保とうとしてるんだろうなと思うと……」


「思うと?」


「おかしくっておかしくて、ワイドショーをみながら思わず笑い転げたよ、アハハハハッ」


「うわぁ……」


 大笑いをする作者をみながら、二人はドン引きしていた。


「なんでこの作者はこんなにひどいんだろうか。罪悪感とかないのかな」


 葉月の独り言に、作者はにんまりと笑いながら反応した。


「そうそう、この話のテーマは“罪悪感”だったのだけれど、罪悪感をもつ君たち兄妹の対比として榎本を登場させたんだよ」


「榎本さんかぁ。あのひとは色々やらかしたけど、罪悪感とはまるで無縁そうだったよね」


「罪悪感ってどんな場面でどんな理由で感じるかってのを考えてネェ。ひとことであらわすと“恐怖”だね」


「恐怖? 恐怖って他者にむけるものだよね。罪悪感は自分にむけるものなんじゃないの」


 葉月は首をひねりながら聞き返し、作者が返事をした。


「例えば、物を壊したとしたらさ、直さないといけないという義務感を感じるよね。それはなんでだい?」


「壊したものを直さないと、怒られるからね。この前、間違えて割った皿を隠してたらかーちゃんに頭殴られたよ」


 美里が笑いながら話すのを、葉月が憐れみの目で見たいた。


「怒られるかもしれない、もしかしたら家から追い出されるかもしれないという恐怖を感じて、そのあとなんとか修復しようという焦燥感。それが“罪悪感”だと思っているよ。さっきキミがいっていた自分に向く感情というのは、そんな現状を引き起こしてしまった自分を責める気持ちなんだろうねぇ」


「榎本さんは世界が壊れても紬を元に戻したいという願いのためだけに動いていた、だから罪悪感なんて感じていなかったのか……」


「うんうん。でもそれは社会から離れて生きていくということになるから、あまりオススメできる生き方じゃないねぇ」


 しんみりした表情の葉月に、美里ががしっと肩をつかんだ。


「葉月ちゃん、そんなに悩んでも人生楽しくないよ。人生大事なのは……」


「う、うん」


「開き直りだよ!!」


 美里は胸をはりながら、誇らしげに言い切り、葉月は呆れた顔をした。


「ある総理大臣がいったもので、あたしの好きな言葉さ」


「くくくっ、あはははっ、やっぱり美里はすごいなぁ」


 そんな様子をみながら葉月はおなかを抱えて笑っていた。そこに作者が口を挟んできた。


「ちなみに、私が抱える罪悪感はだな。体育の授業でサッカーをしたとき、パスをしたら間違えて敵チームの窪田君に渡してしまったことだ」


「……ちっさ」


 悲痛な声で語りだした作者をみて、葉月がぽつりとつぶやいた。


「なにをいうか!! そのあと、私はクラスメートから『あいつマジつかえねー』とか思われていないか夜な夜な悩んでいたんだぞ」


「なんでこんなひとの物語にわたしたちは載せられてしまったんだろう」


 葉月は作者をみながら、深いため息を吐いた。

 美里は、悲嘆にくれる作者など意にも介さず葉月に楽しそうに話しかけた。


「ねえねえ、葉月ちゃん。あそこの屋台にいってみようよ。空魚の塩焼きだってよ」


「ああ、あの空飛んでた魚か。おもしろそうね」


 二人は楽しげに笑いながら、スゥッと姿を消した。


「あれ、お二人さん、どこいったの?」


 照明の落ちた暗い部屋の中に作者だけが残されていた。

 

開き直りって大事だよね!!

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