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アラサーTSメスガキ魔法少女に煽られて恥ずかしくないの?♡ざぁーこ♡  作者: 夏川優希


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27話 シンプルによわよわ♡


 セイラは魔法でステッキを作り出し、構える。

 どうやら机の下に律が隠れていることを思い出したらしい。



「か、怪人と対するときはまず相手の能力を見極めるのよ。じゃないといきなり致命傷を負いかねないんだから」



 セイラは小声でそう呟く。

 机の下に隠れた新人魔法少女である律にレクチャーをしている――そう解釈するのが流れとしては自然であるが。

 しかしどちらかというと、その言葉はセイラ自身に向けられているような。

 かつて誰かに言われた言葉を自分に言い聞かせているような印象を律は受けた。



(だ、大丈夫かな)



 相手の能力を見極める。

 それは確かに怪人と戦う時に重要なことなのかもしれない。

 しかし。



(あのヒルタって怪人の能力に限っていえば確かめなくても分かるような……)



 そして律の予想通り、ヒルタの能力は至極単純なものだった。

 つまり――怪力。



「うおらぁぁぁぁぁッ!」



 ヒルタは事務机を片手で軽々掴んで思い切り振り被る。

 単純で分かりやすく、そしてまともに食らえば致命傷になると子供でも分かる攻撃。

 しかしセイラは動かない。

 いや……動けないと言ったほうがいいか。

 デスクの下で身を屈めている律には、セイラの足が震えているのがよく見えた。



(だ、大丈夫か? 大丈夫なのか……?)


「死に晒せやあぁぁぁあッッッ!」



 ヒルタの無慈悲な攻撃がセイラに迫る。

 しかしセイラにその攻撃を避ける素振りはなく。

 固まったまま動かないセイラの頭頂部に攻撃が迫る。



(マズい! 止めに入らなきゃ――)



 が、その必要はなかった。

 セイラの魔法はすでに発動していたのだ。

 その星を模したステッキから伸びた白く細い布状のものが折り重なり、ヒルタの攻撃を受け止める。



「なっ……!」



 ヒルタは見た目に似合わぬ軽やかな動きで飛び退き、セイラから距離を取る。

 その布に並々ならぬなにかを感じ取ったのだ。



「なんだァ?」



 今度はヒルタがセイラの能力を見極める番であった。

 白い布状のものはステッキから手品のように次々と伸び、ヒルタに――ではなく、セイラ本人に巻き付く。

 布はあっという間にセイラの全身をすっぽり覆ってしまった。

 まるでミイラのようだ。



「だからなんだって言うんだよッ!」



 ヒルタは手に持った事務机を再び振りかぶり、それを思い切りセイラへ振り下ろす。

 何度も、何度も。

 しかしよほど丈夫な布なのか。

 セイラを傷つけるより先に事務机のほうが壊れてしまった。



「クソがッ、なんなんだよ」



 ひとまずセイラが無事なことに律はホッと胸を撫で下ろす。

 しかし。



(あれ? こっからどうするんだろ)



 セイラが鉄壁の守りを持っていることは分かった。

 確かにすごい力だ。

 とはいえ守っているばかりでは勝負に勝てない。

 なのにセイラが攻撃に転じる様子はなかった。

 白い布でグルグル巻きの状態のまま、本物のミイラのように動かない。

 その様子に、〈ブラッディドラゴン〉の構成員たちも違和感を覚えた様子。



「もしかしてコイツ、この状態になるとなんにもできないんじゃ……?」



 ダメージが通らないとはいえ、敵の前で身動きが取れなくなる。

 それはまな板の上の鯉となにが違うのだろう。

 ヒルタはミイラ状態のセイラをヒョイと担ぎ上げる。



「よし! こいつ連れて行って肥溜めにぶち込もうぜ」



 その言葉に、グルグル巻きの中から悲鳴のような声が上がる。



「や、やめろぉ! お前らなんかなぁ、姉ちゃんが来たらイチコロなんだからなぁ!」


「じゃあさっさと呼んでみろよ!」


「体にラクガキしちゃおうぜ〜」



 ヒルタだけでなく、〈ブラッディドラゴン〉の下っ端構成員までもがペンを手に取りセイラの包帯にラクガキを始める。

 額に肉だのなんだの描かれながらも、セイラは必死に叫んだ。



「アタシがコイツらを食い止める! だからリツは逃げろぉ!」


「はぁ!? どっかに仲間がいるのか?」


「探せ!」



 にわかに騒がしくなる〈ブラッディドラゴン〉たち。

 一部始終をみていた律は、デスクの下で丸まりながらこんなことを思った。



(そんなに強くないのに後輩のために体を張って……セイラってちょっと変わってるけど根は良い子なんだろうな)



 序盤のうざ絡みに目をつむりつつ、優しい律はセイラに甘めの評価を下す。

 そして律は変身ブローチを掲げた。

 もちろんセイラを救出するためだ。

 ――が、魔法少女に変身すれば当然こういうことになる。



「ざぁーこ♡」



 デスクを吹き飛ばすようにして登場した金髪ツインテールの魔法少女に、全員の視線が集まる。



「いたぞ! 魔法少女だ!」


「ヒルタさん、やっちゃってくださいよ!」


「ん? いや待て、あれってもしかして――」



 と、あれこれ話し出す〈ブラッディドラゴン〉の構成員を律は無視した。

 律の目は、まっすぐに包帯に包まれたセイラへと向く。



「先輩風吹かしまくった直後にこの体たらくはさすがにざこすぎ♡ シンプルによわよわ♡ ふざけてるの?♡」


「え? え?」



 “気弱な後輩”と思い込んでいた律の豹変に、セイラはグルグル巻の中から困惑の声をあげる。

 布のせいでセイラの表情は見えないが、戸惑っているのは間違いない。



「初心者捕まえて講釈垂れるとかざこの極み♡ キングオブざこ♡ 恥を知ったほうがいい♡」


「へっ……えっ……ええっ?」



 グルグル巻きの中から上がる半泣きの声に、律は心の中で頭を抱える。



(うわああああっ! そんなこと言うつもりじゃなかったのに!)



 なんて内心で思っている最中、ヒルタは弾丸のような速度で鋼のような拳を律に振り下ろした。



「なに無視してんだコラァ!」



 が、律の反応速度は弾丸よりも速い。



「脳筋は引っ込んでてよ♡ ざぁーこ♡」



 ――ゴッッッッッ。


 ヒルタの拳と律のステッキとがぶつかり合い、衝撃波が発生。

 事務所に散乱した書類が舞い上がり、構成員たちが悲鳴を上げ、グルグル巻き状態のセイラが吹っ飛ぶ。

 そして。



「ぎっ……ぎいあああああああっ!?」



 ぐしゃぐしゃに砕けた拳を庇いながら、ヒルタは床に崩れ落ちる。

 その様子を見ていた構成員のひとりが律を指差して叫んだ。



「やっぱりそうだ! あいつメスガキ魔法少女だよ!」



 その一言で、にわかに〈ブラッディドラゴン〉たちの表情が恐怖に歪む。



「ひっ」


「マ、マジかよ……」


「逃げろ!」



 ヒルタを置いて逃げ出す構成員たち。



「え? へぇっ……? メ、メスガキ……?」



 投げ捨てられたグルグル巻きの中から、セイラの呆然とした声が上がる。



「アンタ……い、いや。あなたは一体……?」



 が、セイラの疑問に答える暇はなかった。

 廊下から、先ほど逃げ出した〈ブラッディドラゴン〉構成員たちの悲鳴が上がったのだ。



「うっ……まさか……」



 机の下に隠れていたプイプイが苦々しい声を上げる。

 そして次の瞬間、さらに別の魔法少女が事務所に足を踏み入れた。

 それもひとりではない。

 数人の魔法少女がぞろぞろと荒れ果てた事務所に足を踏み入れる。

 てっきり、律はプイプイがセイラの戦いぶりを見て応援を呼んだのだろうとばかり思っていた。

 が、どうやら違うらしい。



「あわわわ……ど、どうしようプイ……」



 と、プイプイは彼女たちを見てそう呟いたからだ。

 そして彼女たちは初対面にもかかわらず挨拶も会釈もないままに律を取り囲んだ。

 とても仲間に対する態度として適切であるとはいえない。



(え? え? なに?)



 急展開に頭が追いつかない律。

 なにより、彼女たちが律を見る目に敵意が宿っているのが気になる。

 そして彼女たちの中から、長い黒髪の少女が一歩前へ進み出た。



「はじめまして律さん。わたしはルナ。魔法少女連盟東京支部の代表魔法少女です」



 代表魔法少女――それがどんな役職なのか知らないが、きっと他の魔法少女よりも偉いのだろうと律は思った。

 彼女の全身からもどことなく偉そうな雰囲気が漂っている。

 決して友好的ではない雰囲気に律も警戒感を抱くが――そんな中、オフィスの端っこに転がったグルグル巻き状態のセイラから、か細い声が上がった。



「ね、姉ちゃん……」


(えっ!? 姉ちゃん!?)



 ストレートの艷やかな黒髪、スラリとした長身、切れ長のクールな瞳、そして黒を基調としたシックな衣装。

 セイラとはまるでタイプが違うから分からなかったが、言われてみれば顔はよく似ている。

 ということは、つまり、彼女こそ魔法で重火器をも作り出してしまう魔力コントロールの達人。

 そして、魔法で家電を作るという律の夢の計画の鍵を握っているかもしれない人物であるということだ。



「前々からアナタとお話してみたいと思っていて、つい迎えに来てしまったの」



 姉であるはずのルナは妹の情けない声を無視し、律に話を続ける。



「これから魔法少女連盟の東京本部へ来てもらえる?」


「いいよ♡」



 律は即答した。

 その食いつきに、ルナも少々驚いたようだった。

 しかし律にとってはそれくらい当然のこと。



(家電のためならどこにだってついていくよ!)


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自分らが束になって掛かっても手足の出なかった相手を 一晩で消滅させた相手に 敵意を向けられるメンタルしゅごい 子供だから?
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