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本物の勇者になりたい  作者: たわしまつわ


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第二十七話 帰り道でも魔物の討伐

 目的だった剣の購入も済ませ、王都の観光を楽しんだ四人は、翌日ノックス村へ向けて出発した。早いペースで進んでも五日間はかかる道程だ。四人もつい急ぎ足になりそうなのを抑えながら、なるべく一定の速さで進むように気を付けていた。

 三日目、あと二日で村に戻れるというところまで来た時のことである。町の名前はサルトル。そこの冒険者ギルドでいつものように一泊させてもらおうと、受付に話をしたところ、頼みごとをされたのだった。

「最近、出没している魔物の討伐ができなくて困っているんです」

 という話であった。普段常駐している冒険者達が、王都に出かけて留守にしているため、討伐が滞っているのだという。

「全部で六件。旅の途中の方にお願いするのも心苦しいのですが、町の人々も不安に思っているようなので、あなた方に討伐を頼みたいのですが」

 そんな話を聞くと、アレンとしては断れない。人々を魔物から守るのが冒険者なのだと、常に考えているのだから。

「分かりました。お引受け致します」

 アレンは依頼書も見ずに即答していた。他の三人としても、アレンのこういう正義感の強いところを認めているので、異論はない。

「まあ、アレンなら引き受けるよね」

 クレアがそう言うと、仲間の了承なしに引き受ける返事をしてしまったことに気付き、アレンが頭を下げた。

「ごめん、みんなの意見も聞かないで勝手に決めてしまって」

「いいって。俺達も分かってるから」

「そうそう。こんなのさっさと片付けちゃいましょ」

「ありがとう。では、依頼書を確認します」

 そう言って、アレンが依頼書を受け取る。

「ヒュージスパイダー、ボーリングビートル、ワーベア―、ジャイアントホーネット、レッサーコモドドラゴン、ロックゴーレムですか。強敵もいないし、これなら明日中には何とかなると思います」

 自信をもってそう答える。以前倒した魔物ばかりだ。あの時よりレベルも上がっているし、エダニウスの剣もある。頼もしい仲間もいる。余裕で倒せるだろうとアレンは思っていた。

「ありがとうございます。アレンさん達パーティを頼らせて頂きます」

 ほっとしたように言う受付の職員から部屋の鍵を受け取り、アレン達は一泊するため割り当てられた部屋へと、階段を上がっていった。


 そして翌日。朝食を済ませたら、魔物討伐に出発である。

 依頼書の順に従って、目撃された場所へと向かう。

 最初はヒュージスパイダーである。牛と同程度の大きさで、蜘蛛の形をした魔物だ。噛みつきや足での殴り攻撃などがあるが、さほどの威力はない。しかし、一般の人間には十分な脅威である。

「僕一人で十分です。みなさんは必要があれば援護を」

「まあ今のアレンなら確かに大丈夫だろうな。任せた」

 ライルもそう判断した。決して油断しているわけでなく、冷静に自分の力を考えた結果なのが分かったからだ。

「任されました。行きます!」

 アレンが無造作に突っ込んでいく。

 ヒュージスパイダーが反応し、前足を振るってきた。

「一閃!」

 アレンが剣を横薙ぎに振るい、その前足に斬りつける。アレンの剣はランクプラス三のエダニウスの剣だ。一撃でスパイダーの足を斬り落としていた。

 すかさず二撃目をスパーダ―の頭部に叩き込む。斬れ味は鋭く、これも一撃で頭部を斬り落とす。

 そして三撃目。アレンの剣がスパイダーの体を斬り裂く。上半身を真っ二つにされて、ヒュージスパイダーが魔石を残して霧状になって消えていく。

「アレン凄い、本当にあっさり勝ったね」

 クレアがうれしそうに賞賛した。剣を買うまでに苦労はしたが、こうして簡単に魔物を倒せる威力があるのだと分かり、意味のあることだったのだと改めて理解できていた。

 それはアレンも同様である。

 仲間の無事と異常の有無を確認すると、アレンもうれしそうに言った。

「さすがエダニウスの剣、すごい威力だ。この調子なら残り五体も大丈夫そうですね。次に行きましょう」

 三人がうなずく。

 そして四人は次の場所へと向かった。


 ボーリングビートルは昆虫型の比較的硬い魔物だ。しかし、これも威力の上がったアレンの剣の敵ではなかった。ここもアレン一人で簡単に両断して倒している。

 ワーベア―は人型をした熊の魔物である。力も強く、体格も本物の熊より大きい。しかし、さほど硬くもないので、これも問題なくアレン一人で斬り倒していた。

 ジャイアントホーネットは不規則に飛び回るのが厄介だが、それほど大きくも強くもない魔物である。

「ここはあたしが」

 さすがに見ているばかりではつまらなくなったのか、リアナが相手をすると言い出した。彼女もレベル十二のシーフである。役不足の相手だが、少し体を動かしたくなったようだった。

 リアナ一人でジャイアントホーネットと対峙する。

 飛び回っていたホーネットが、時折尻尾の針を突き立てようと、リアナに襲い掛かってくる。それを簡単に見切り、リアナが余裕で回避する。

「適当なところで倒せよ」

 ライルが声を掛けた。リアナの実力なら最初に攻撃を受けた時、即座にカウンターで切って落としたはずなのだ。それをしないであえて回避に専念していて、明らかに遊んでいるのが分かったからである。

「了解。じゃあ、倒すね」

 これで何度目か、ホーネットの攻撃をかわした直後にリアナが動いた。短剣を振るってホーネットの体に斬りつける。いとも簡単にその体を両断し、ホーネットが魔石を残して霧状になって消えていった。

 アレンが無事と異常の有無を確認し、リアナを賞賛した。

「さすがリアナさん、余裕でしたね。見事な一撃でした」

「ありがと。これで残り二体だね」

「そうですね。この調子で片付けましょう」

 アレンの言葉に三人もうなずいていた。


 次の相手はレッサーコモドドラゴンだ。トカゲをずんぐりさせたような体をしていて、体長は二メートルを少し超えたくらい。そう大きくはないが、昆虫型以上に硬い体表を持っている。以前、剣の代金を稼ぐのに戦ったことがある。その時はライルの魔法で援護してもらっていた。

「エダニウスの剣で斬れるかどうか試してみます。難しそうなら援護をお願いします」

 アレンがそう言うと、三人が軽く笑ってうなずいた。こういう時でも自分の力を試したくなるのが、いかにもアレンらしいと思ったのだ。

「闘気剣!」

 念のため、アレンが闘気を剣に伝わらせて武器の威力を底上げする。刀身が淡く美しい輝きを見せた。

 レッサーコモドドラゴンは大した攻撃方法をもっていない。アレンは前足と尻尾の攻撃をたやすくかわすと、できた隙に剣を振り下ろした。

 硬いはずのコモドドラゴンの表皮があっさりと斬り裂かれていた。あまりの斬れ味の良さに、斬ったアレン自身が驚いたほどだ。

「これほど簡単に斬れるのか。これがエダニウスの剣」

 感心しつつ、攻撃を続ける。二撃目、三撃目、きれいにコモドドラゴンの体を斬り裂く。そしてあっさりと倒し切っていた。コモドドラゴンが魔石を残して霧状になって消えていく。

 アレンが仲間の無事と異常の有無を確認する。戦ったのはアレン一人なのでもちろん問題はない。それでも確認するのが大事なのである。

「知っているつもりでしたが、このエダニウスの剣、思った以上の威力がありました。以前の剣なら傷をつけるのがやっとだったのに、この剣だと深く斬り裂くことができます。本当にこの剣を手にできて良かった」

 そうして心底うれしそうに言った。アレンの気持ちは良く分かる。三人も口々に良かったと声を掛けるのだった。


 最後はロックゴーレムだ。レベル二になり立てだった頃、苦戦した記憶はまだ新しい。

「ライルさんの魔法で温度差を加えて、一気に倒しましょう。魔法が入ったら僕が一気に斬り裂きます。リアナさんとクレアは待機で」

 その時に学んだのが、この急激な温度差によってゴーレムの体を脆くして倒すという方法だった。

「了解だ。無駄に時間を掛けることもないだろうしな」

 ライルがうなずく。

 作戦が決まったところで、四人で一気に接近する。

 ゴーレムが動き出すのと同時に、ライルが魔法を発動させた。

「ファイアボール」

 拳大の火球を放つ魔法だ。初級のメイジでも使えるが、レベルの高いライルの火球ははるかに高温である。それがゴーレムの体を直撃し、しっかりと焼いて熱する。

「アイシクルランス」

 続いて氷の槍の魔法を放つ。極低温の氷がゴーレムの体に当たり、その周辺を急激に冷やした。そして温度差によってゴーレムの体が一部変色し、脆くなっていた。

「闘気剣!」

 念には念を入れ、アレンが必殺の闘気剣を放つ。その斬撃がゴーレムの腰を直撃し、一撃で斬り裂いた。先程もそうだったが、やはりこの剣は並の威力ではなかった。

 ロックゴーレムがあっさりと魔石を残して霧状になって消えていく。かつてあれだけ苦戦した相手でも、これほど簡単に倒せるようになったかと、アレンは自分達が強くなっている事実をしみじみと実感していた。

 例によって仲間の無事と異常の有無を確認し、六体の魔物の討伐完了を合わせて確認する。

「これで依頼書の魔物も終わりですね。戻って報告しましょう」

 まだ日は十分に高い。移動時間の方がよほどかかったくらいだ。四人は簡単に依頼を成し遂げ、冒険者ギルドへと戻っていった。


「もう全て討伐したんですか。すごいですね」

 ギルドで報告すると、職員が驚いた表情でそう言ってくれた。

「おかげで助かりました。ありがとうございます」

「いえ、大したことじゃありません」

「それではこちらが報酬の銀貨二枚になります」

「確かに受け取りました。無事に終わって何よりでした」

 アレンが職員とそんなやり取りをしているのを見て、三人もしっかりとしたやり取りができることに感心していた。アレンは強くなっただけでなく、精神的にも成長していることを実感していた。


 翌日、四人はノックス村へと帰途についた。

 途中何事もなく、二日後にはノックス村へと到着していた。

「よお、お疲れさん。良い剣は手に入ったか」

 冒険者ギルドに到着直後、ギルド長のガイストが出てきて首尾を尋ねてきた。ゴブリン戦以来、ガイストもアレン達をよく気に掛けてくれていた。

「ランクプラス三の長剣を買いました。魔物とも戦ってみましたが、凄まじいほどに良く斬れます。王都まで行った甲斐がありました」

 アレンは笑顔でそう答えた。ガイストが少し不思議そうな表情を浮かべ、そして納得したようにうなずいた。

「そうか。その剣を手に入れて、アレン自身も成長できたみたいだな。今の表情、とても頼もしく見えた。今後の成長が楽しみだ」

 歴戦の戦士であるガイストにそう評価されたことは、アレンにとって意外なことだった。しかし、エダニウスの剣を手に入れて戦闘力が上がったことで、得られたものは大きかった。この剣にふさわしい使い手になろうという気持ちも強い。その辺を見てくれたのだろうと納得した。

「ありがとうございます。剣に恥じない実力を身に付けられるよう、今後も努力していくつもりです」

「そうか。楽しみにしてるぞ」

 ガイストはアレンの肩を軽く叩くと、そのまま奥へと戻っていった。

「ねえ、アレン。私達も、ギルド長と同じように、アレンの成長を楽しみにしてる。もちろん、私も負けずにレベルを上げていくつもり。これからも一緒に強くなっていこうね」

 クレアがそう言って拳を突き出してきた。アレンはそれに拳を合わせ、そして言った。

「うん、頑張ろう、クレア。ライルさん、リアナさん、今後もよろしく」


 その後もアレン達の戦いは続く。

 それは強さという目には見えないものを追い求める、果てしない道程であった。しかし、毎日のように魔物と戦い、彼らは着実にその実力を高めていった。

 アレン、クレア、ライル、リアナの四人パーティの名前は、遠くない未来に、王国でも有名な冒険者として知られるようになる。それは彼らがそれだけの成果を上げたからである。

 そこに至るまでにも様々な物語があるのだが、ここではそれについて記さずにおく。彼ら四人の活躍が今後も続いていくことだけ記しておく。

 かつてアレンは言った。

「本物の勇者になりたい」

 その言葉を実現するのは、かなり先の未来の話である。

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