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本物の勇者になりたい  作者: たわしまつわ


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第十七話 ゴブリンとの決戦

 翌日、ゴブリンの軍勢は山を下り、平地へと進出してきた。これまでに三十体倒していたが、それでも残る三百弱のゴブリンが次々と現れていた。

 偵察に出ていたアレン達はその様子を詳細に観察していた。即時侵攻があるかどうかを判断する必要があったからだ。

 草原に現れたゴブリンの軍勢は日がまだ高いうちに進軍を止めていた。隊列を組み、組織的に攻めてくる態勢を整えていた。村までは二時間ほどの距離である。ここまで至近距離に迫られては、もはや猶予はない。この場所で迎撃する必要があった。

 ここにはギルド長ガイストの他、十人の冒険者が集結していた。彼らは村を守るという固い決意の元、ゴブリン達から百メートルほどの距離を開け、敵味方が良く見える場所に陣取っていた。

「カシム達は右、アレン達が左、中央は俺とダラス、ザストが受け持つ。一体たりとも通すな。迫ってきたヤツは全部倒すんだ」

 ガイストが気合の入った表情で力説した。その場にいた十人にもその意志は伝わってきた。数で圧倒的に劣るが、絶対に負けられない戦いだった。

 ゴブリンの軍勢が三列横隊で迫ってくる。隊列を組むという知性のあることが、人間にとっては驚きである。しかし、相手は下っ端とは言え魔族なのだから、何があっても不思議ではなかった。

 十一人が横一線に展開し、ゴブリンの軍を待ち受ける。

 ゴブリン達は少ない人間達が待ち構えるのを見ても動きを変えなかった。横隊のままゆっくりと歩調を合わせて歩み寄ってくる。それぞれに武器を構え、数の力で人間達を蹴散らすつもりのようだった。

 ゴブリンの表情が人間と同じとは限らないが、冒険者達には余裕の笑みを浮かべているように見えた。

「余裕でいられるのも今のうちだ」

 ガイストが一人つぶやく。彼は効果的な反撃のできる距離までじっと辛抱していた。

 やがて、双方の距離が三十メートルほどになった時、ゴブリン達が一斉に突撃してきた。ギャーともギューともつかない声を上げている。人間のウォークライと同じなのだろうと思われた。

 距離が二十メートルに迫った時、ガイストが合図を出した。

「魔法!」

「ファイアウォール!」

 メイジのライル、マイク、ザストがその合図に応えて魔法を発動させた。炎の壁の魔法である。高熱の炎が吹き上がり、ゴブリン達の目の前を真っ赤に燃やす。突撃の勢いを殺し切れず、最前列のゴブリン達がその炎に巻き込まれ、次々に焼かれて地に倒れていく。

「逆撃!」

 炎の壁が収まった時、ゴブリン軍の二列目、三列目は激しく混乱していた。そこへ戦士達が突撃し、斬りかかっていく。

 アレンが、ガイストが、カシムが、サムスが、ダラスがそれぞれ自分の武器を振るって、目の前のゴブリンを斬り倒す。一体倒したら即座に次を狙う。ゴブリン達は一瞬混乱し、大きな被害を出していた。

 アレンは魔族の軍勢を相手にするのは初めてだ。整った隊列の端から順に斬りつけていく。

「せいっ!」

 気合を込めて一撃で倒していく。相手の攻撃を受けている暇はない。ゴブリン達が立ち直れば、逆に自分がやられてしまう。とにかく一撃で倒すことを優先し、次々に斬り伏せていた。

 ある程度敵を倒したところで、戦士達はまたすぐに走り出す。ゴブリンに背を向けるのは恐ろしいが、混戦が続けば包囲されて倒されるのは自分達の方になるからだ。

 そしてまた百メートルほどの距離を取り、人間達が隊列を整える。ゴブリン達もかなりの被害を受けたが、それでもまだ二百以上の数が残っている。後方にいるゴブリンの指揮官から指示が出て、人間達と同じようにまた隊列を整え始めた。

「やけになって突っ込んできてくれれば楽だったんだがな」

 ガイストが苦笑を浮かべてつぶやいた。ここで隊列を整え直すなど、人間でもなかなかこうはいかない。大した知恵だと思った。


 ゴブリンの軍勢は一筋縄ではいかない相手だった。

 ゴブリン達は先程と同じように隊列を維持したまま前進してきた。そして互いの距離が四十メートルほどに迫ったところで、戦い方を変えて、三列横隊の後ろにいた十数体が攻撃を始めた。弓矢兵である。五十メートルほど離れたところからの攻撃で、射程ギリギリというところであった。それでも矢が十一人のところにまで届き、殺意を込めて降ってきていた。

「ホーリーシールド!」

「マジックシールド!」

 ヒーラーのクレアとハント、メイジのライル、マイク、ザストが魔法の楯を展開する。十数本ずつ降ってくる矢を三回にわたって防いだ。

 人間達が頭上に気を取られたのを好機と見て、ゴブリン軍が前進してくる。やはり足並みを揃え、隊列を維持して接近してくる。よほど訓練を重ね、戦い慣れていないとこうはいかない。

「ゴブリンも訓練をするのかよ」

「そうらしいな。だが、負けてやる義理はねえ」

 カシムとサムスの戦士二人がそんな軽口を叩いていた。整然と迫ってくる軍勢は、それがゴブリンであってもかなりの圧迫感がある。それに押されてつい口にしてしまったのだ。

 そしてまた互いの距離が三十メートルほどになったところで、ゴブリン達が突撃を開始した。横一線に並んだゴブリン達が咆哮を上げながら突進してくる。

 だが、整然と列を組んでいるのは弱点でもある。

「魔法、二回目!」

「ファイアウォール!」

 先程と同じように、ゴブリン軍最前列の位置に炎の壁が出現した。それがゴブリンの列を高熱の炎で焼いていく。それを防ぐことはできず、ゴブリン達が地に倒れていく。

「弓兵を狙え!」

 ここでアレン達が突撃する。今度は混乱した二列目と三列目を無視して、最後尾の弓矢兵を狙っていた。

 冒険者達は全力で走ってそこまでたどり着くと、縦横無尽に武器を振るった。弓矢兵のゴブリン達は接近戦用の装備がなく、ごく簡単に打ち倒すことができた。十数体のゴブリンを斬り倒し、即座に撤収する。

 ゴブリン軍の三列目がそんな冒険者達を狙って迫ってくる。

 それを相手にせず、アレン達はひたすらに逃げ去っていく。

 それをゴブリン達が追う。

「魔法で撤退を援護!」

 ギルド長のガイストが指示を出す。メイジたちが一斉にうなずき、魔法を放つ。

「ファイアボール!」

 距離はあるが炎の魔法を遠距離で打ち込む。さすがにゴブリン達も仲間達が何人も倒された炎の魔法を恐れた。追撃を諦めて足を鈍らせる。その隙にアレン達は無事に仲間の元へと戻ることができた。

 ゴブリン達はまた隊列を整えた。今度は列を増やさず、二列横隊のままである。とにかく接近し、乱戦に持ち込めば数の優位を生かして勝てるはずという戦術に見えた。繰り返すが、ゴブリンと言えど、その知性は侮れないものがある。

 そして今度は、足並みを揃えずに突撃してきた。一列のままだと炎の壁で大きな被害を受けることを学習したのだった。

「魔法、三発目!」

 ガイストの指示が飛ぶ。それでも人間側としては、炎の壁に頼るのが最善手なのだった。

「ファイアウォール!」

 三度目の炎の壁が現れた。それがゴブリンの先頭集団を焼いていく。しかし、後ろにいたゴブリン達はそれを逃れ、魔法の効果がなくなるのを待っていた。

 炎の壁が消えた時、ゴブリン達は少し後ろで突撃の機会を待っていた。

 ギャーともギューともつかない喚声を上げながら、ゴブリン達が突進してくる。だが、その数はかなり減っていて、百五十体ほどになっていた。

 そして乱戦が始まった。

 アレンが突撃して来たゴブリンが武器を振りかざしたところに、自分から間合いを詰め、痛烈な斬撃を見舞う。袈裟斬りにされたゴブリンが血しぶきを上げて地上に倒れる。

 そしてすぐに横合いから次のゴブリンが棍棒で殴りかかってきた。

「ホーリーシールド!」

 クレアが魔法の楯を発動させ、その攻撃を防ぐ。アレンが目でそれに感謝を伝え、再び斬撃を放ち、そのゴブリンを斬り伏せる。

 そこへ間髪入れず、次のゴブリンが襲い掛かってきた。クレアが必死に魔法の楯でそれを防ぐ。

 しかし、別のゴブリンがアレンに襲い掛かる。アレンはそれをカウンターで仕留めると、クレアを攻撃してきた一体に鋭い斬撃を浴びせ、一撃で斬り倒した。

 そんな乱戦が戦場のあちこちで起こっていた。

 リアナは見事な回避技術を駆使してゴブリンの攻撃を避け、次々に斬撃を放って血の雨を降らせるように倒していく。

 カシムが得意の楯防御を生かして、ゴブリンの攻撃を防ぎつつ、反撃で一体ずつ確実に仕留めていく。

 サムスが舞うような動きでゴブリンを翻弄し、隙を見つけては一撃を放ち、次々に倒していく。

 ガイストはその剛剣でゴブリンを一撃で仕留め、巧みに位置を変えながら確実に数を減らしていく。

 ダラスが持ち前の技量を発揮し、ゴブリンの包囲を受けないように、見事な立ち回りでゴブリン達を一撃で倒していく。

 ヒーラーのハントも自前のメイスを振るい、魔法の楯で自分の身を守りつつ、ゴブリン達を殴りつけ、倒していく。その陰ではメイジのマイクが隙を見ては魔法を放ち、真空の刃の魔法でゴブリンを斬り裂いている。

 メイジのライルとザストは近距離戦に持ち込まれないよう、ゴブリン達から距離を置き、真空の刃の魔法を駆使してゴブリンの数を減らしていた。

 結局、人間達の強さはゴブリン達の予想を上回っていた。たった十一人の相手なのだが、乱戦に持ち込んでもゴブリンの方が次々に倒され、人間を倒すことができないままであった。仲間が次々と血しぶきを上げて倒される様子を見て、さすがにゴブリン達にも恐れが表れ始めていた。

 そこへガンガンと何かを叩くような男が聞こえてきた。ゴブリン達が一斉に身を引き、次々に身をひるがえして引き上げていく。その数はすでに百体を割り込んでいた。

「あきらめてくれたのか……?」

 アレンがつぶやいた。魔族の軍勢を相手に、レベル以上の活躍をしてきたが、さすがに心身共にかなり疲れていた。戦場となった場所には、二百近い数のゴブリンの死体が転がっている。そのうち百四十近くが炎の壁の魔法による焼死体である。ゴブリンも味方にこれほどの大損害が出たのだから、全滅もあり得ると考えて後退してもおかしくはない。そんな希望的な観測をしていた。

「いや、待て。様子がおかしい」

 ガイストが全員に言った。ゴブリンの陣営に変化があったのだ。

 ゴブリンは体長一メートル半にも満たない個体がほとんどだ。しかし、遠目に見て、明らかにそれよりも一回り大きな個体が三体現れていた。それに加え、その大きな個体よりもさらに大きな個体が一体。周囲の小さなゴブリン達が、歓声のような声を上げてその大きな個体を称えるような動作をしている。まるで英雄を迎えた兵士達のような行動だった。

「何か仕掛けてくるぞ。全員、異常ないな」

 ガイストが確認を行う。異常なしの返答を受けて言葉を続ける。

「一休みするなら今のうちだな。あの大きいのが来たら、休む暇はなくなりそうだ。全員、水筒を出して水を飲んでおくんだ」

 ガイストの言葉で全員が一斉に水筒を取り出した。それを口にして、ダラスやザストが悪態をついた。

「やっと水が飲めたのはいいが、ゴブリンの血の味がするぜ」

「お前、ゴブリンの血を舐めたことあるのかよ」

 レベルの高い彼らも、まだ戦いが続くことにかなり苛立っていた。それでも悪態をついて悪感情を流し、次の戦いのために気合を入れているのだ。さすがに一級の冒険者達であった。

 アレンやクレアにはそんな余裕はない。言われるまま水分を取り、とにかく少しでも休もうと座り込み、息を整えるのが精々だった。

 しばらくの間、ゴブリン軍の間では何か喜びに沸き立つような様子が見られた。やがてそれが収まると、大型の個体四体を先頭に、ゴブリン達が再進撃してきた。

「休憩中止、迎撃用意!」

 ガイストの指示が飛び、全員が武器を手にしてゴブリンの接近を待つ。

 そして、その大型の個体の正体が明らかになった。

「あれはゴブリンジェネラルとゴブリンキングってヤツだな。俺も初めて見るが、ダンジョンの魔物より強いかもしれんな」

 ゴブリンジェネラルは体長二メートル半近く、人間達より大きい。力もその分強そうである。ゴブリンキングに至っては体長が三メートルを超え、魔物のジャイアントと同じくらいの大きさがあった。

「俺がハントの援護を受けてキングの相手をする。ジェネラルは、アレン達パーティが一体、カシム達三人で一体、ダラスとザストで一体迎え撃て。途中で雑魚共が割り込んでくるかも知れないから十分注意しろ」

 ガイストが指示を出し、十一人が四つの小隊に分かれる。

 大きな棍棒を片手に、四体の大型ゴブリンが部下を引き連れて迫る。凄まじい圧迫感をアレンは感じていた。それは他の冒険者達も同じであった。

 ゴブリン達が一度一斉に立ち止まる。そして、四体だけが前進し、他は後方で待機していた。見物なのか応援なのか、盛んに声を上げていた。

 ゴブリン達との決戦は次のステージを迎えていた。

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