EP73
雅也さんはその端正なお顔を真っ赤にされ、『あ、ありがとうございます』と俯いてしまった。
ありゃりゃ。恥ずかしがり屋さんなのかな?
『もし良かったら、その……今度、一緒にお食事でもどうでしょうか?』
あ。そゆこと?
私は、手話で答えようとした。
が。
そこで、今までずっと黙りこくっていた井桁秘書が、ずいぃぃっと入ってきて、名刺を雅也さんにずいぃぃっと差し出す。
「アポイントメントは私を通していただきますよう」
ぽかんとした表情の雅也さん。私は慌てて、井桁さんの言葉を手話で通訳。
すると、雅也さん、名刺を素直に受け取ると、『わかりました』と名刺入れに仕舞う。
なぜかそこで、睨み合いが始まった。
『お食事にお誘いするのも、一応あなたを通しますが、私は臆することなく千夏さんをお誘いしますからね』
???
「そうですか。必要な会食かどうかは、私が判断して、社長……千夏さんに通します」
え???
ち、千夏さ……
すると雅也さんが、くるっとこちらを向いて、『千夏さん、個人的な連絡先を教えていただけないでしょうか?』
ずいっと一歩近づいてくる。
その距離、なんと1メートル。ちょ、まあまあ近いよね?
と、その間にずいっと入り込む井桁氏。近い近い近い!!




