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バースデイ  作者: セキド ワク
46/63

四六話  練習日和



 十月の終わり、季節は秋色に染まる。

 体育祭で派手に暴れる不良達や体育会系男子を一網打尽にした縁は、涼しい顔で日々を過ごしている。学校は相変わらず格付け中。


 君鏡の失くした筆箱が日野の机から見つかったのはもう随分と前で、その日からお互いにギクシャクして、殆ど話をしていない。


 日野は完全にハメられ、君鏡を苦しめる為に利用されるだけ利用されたのだ。

 いいように言い寄られ、そして言葉巧みに操られて捨てられた。


 君鏡は状況を深く分かっている訳ではないが、日野を半分信じて半分疑ったことでダメージを軽減させることに成功した。もちろん、仲良しな友達が居なくなってしまったことには変わりないし、それなりに傷もついた。

 ただ、これが普通なのだ。


 だからこそ女子は言う「男の子の友情って羨ましいよね」って。


 ――男の友情も似たり寄ったりで、さほど女子と変わらない。が、男は女子より単純で馬鹿正直に相手を信じるだけ……。だから騙されると異常に発狂する。


 現実主義の賢い女子と違い、幻想や人道を重んじている。




「てめぇ裏画、待てこの野郎」

「お、怒るなってば。冗談だよ」

「冗談? ふざけんな、なおせよバカ」

 廊下を追いかけまわす濱野。とそこに室巣が通りかかった。


「どうしたんスか先輩。廊下中に響いてますよ」

 室巣はその声に反応して教室から飛び出してきたわけだ。つまり出たがり。

「おお、室巣君。実は裏画のヤツがさ、ちょっとこれ見てよ」

 そういうと濱野は脇に抱えたノートパソコンを起動させた。そして――。


「あはは。これは酷いっすね。でも大丈夫っすよ、これ、プログラムをアンインストールすればすぐ直りますよ」

「ホント? 室巣君出来る?」

 頷く室巣が、廊下でパソコンをいじる。


 廊下を行き交う生徒達が、また剣道部が騒いでると眺めていく。

 裏画はこれがチャンスとどこかへ逃げ去ってしまった。


 室巣がキーボードを押すたびに、ロボットの声でアルファベットが連呼される。裏画が仕込んだコンピューターウイルスに感染したのだ。


 濱野の対処法は音を消音にするしかなかったが、音楽も聴くし動画だって見る、他にも用途がいっぱいで消音対策は現実的じゃない。

 けれど、ムカつくロボットが、抑揚もなく単調に、押された文字をいう。これがちゃんとした日本語になっているならまだ分かるが、押したアルファベットとなると、ただの雑音でしかない。



「濱野先輩、これ見て下さい。多分、このファイルの中にあると思うんですけど、ちょっと厄介ですね」

 ファイルの中に無数のファイル。殆どが空のハズレファイルだが、どこかに何かが隠れているのは確か。だが、とてつもなくいっぱい詰まった空ファイルにゾッとする室巣。


「このファイル自体を消去して無くなるならいいんですけど……、ちゃんと見つけてアンインストールするのがいいかと。裏画先輩のことだし、ここまで拘っている時点で、罠だとは思うんスけど、どうします先輩」

「ど、どおって、探すよ。何かあると困るし。面倒クセェなコレ」

 逃げ去った裏画を恨みながら、濱野は仕方なく教室へと戻る。


「あ、そういえば部長は今日来てますか?」遠ざかる濱野の背に問う室巣。

「いや、来てるけど寧結ちゃんの運動会見に行ってるよ」



 未蕾小学校の運動会は既に二回も雨で延期になっていた。最初は体育の日で次の週の日曜日も朝からの土砂降り。

 本来は中止なのだが、一部の親達の強い希望で、十月最後のそれも平日にどうにかこうにか開催することとなった。


 平日ということもあって誰もが来られる訳ではないが、ここで来れる状況の者と言えば、専業主婦かそれに近い者、そしてお金持ちだったり有給が自由に使える者などだ。



「寧結、お前真面目にやれよ。朝から何やってんだよ」

「だって、もう帰りたいぃ。早くお家帰って、萌生ちゃんとマイマイと~行くんだもん」

「はぁ? 運動会だろうが。なに愚図(ぐず)ってんだ」

「行きたいのぅ。兄ぃだってイイって言ったよね?」

 縁はまたも寧結の駄々に苦悶する。更に萌生と深内まで駄々をこねている。


 三人が行きたがっているは、ハロウィンの仮装行列とパーティーにだ。

 前々から楽しみにしていた。

 まさか運動会が二度も雨に流れて、平日のこんな日になるとは、予想だにしていなかった。


 寧結はハロウィンが大好きということもあるが、それよりもこの遊びにもならない運動会が大っ嫌いなのだ。

 正確には、運動会が嫌いなのではなく、お手手繋いで仲良くゴールみたいな誰が決めたか分からない不条理なルールに嫌気がさしている。

 体育の度につまらない練習が続き、完全に飽き飽きしていた。


 この未蕾小学校は保護者やピーティーエーなどの声が大きく、そういう時代遅れな制度が未だにまかり通っていた。少し前にあった学芸会もそうだ。


 主役が四人、ヒロインが四人。ストーリーも変更しまくり。

 どの学年もそんな感じで、つまらな過ぎて欠伸も出ない。縁に付き添い見に来た剣道部も、退屈で居眠り。


 だが、一年生の演技が始まり、寧結の演じる柳の木が助演賞なみの目立ち方をしたことで、主役の親達が大激怒したのは記憶に新しい。


 ちょっと考えれば分かりそうなことだが、バカ親はそれが分からないのだ。

 主役が目立つのはそういう演出だからだ。

 自らそこに異議を唱えキャストもシナリオもいじって、結果、脇役の寧結が笑いも派手さも全部かっさらっていった。


 ただでさえ一年生の演じる話は分かりづらい。シンプルに目立つ寧結に勝てるわけがない。




「だって今帰ったら迷惑かかるだろ」

「平気だよ、どうせ全部決まってるんだもん。つまんないよ」

 寧結の言わんとすることも分かる。大人が口を出し、さもそれがあっているかのように関連づけて、自らの思惑を貫く大人達。


 学芸会も運動会も……他の事も。

 一部のお子様が目立てる仕組みになっている。表向きは主役が数人となっているが、裏を返せば発言力ある目立ちたがり屋を、より多くすくい取っているだけ。

 つまり裏工作で仕組まれた権力。



「床並君、平気だよ、私がちゃんと責任取るからさ……ダメ?」

「兄ぃ、わっきょもそう言ってるし、ちゃんと兄ぃが部活してる時に、帰ってくるからぁ」

「ん~。萌生ちゃんはお母さんに怒られないの? 運動会の思い出いらないの?」

「うんいらないよ。うそばっかりだもんこの運動会。寧結ちゃんも私も何回も走る相手代えられたし、出たかった種目もダメって。で、全部変なのばっかり」

 確かに寧結と萌生が出る種目は二人の独壇場になる。


 つまり目立ちたがり屋がひしめく花形種目に寧結と萌生を出すわけにはいかないというわけだ。

 なにせ親達のクレームで劇のキャストとシナリオが変わるシステム……。

 そんなズルを平然と貫く学校と親達を前に、寧結と萌生が大暴れしたらシャレでは済まない。


 寧結と萌生の冷めた気持ちも分かる縁であるが、世の中はどこもかしこも全てがそういった大人が作るモラルや常識で溢れているから、と悩む。仕方がないと。

 だからこそ学校という組織でさえ何かをねじ曲げて変更したのだ。それが世論。

 そして、小さな子供がその親の策に巻き込まれても、誰も異論を唱えないのが、この国の風潮。


 平然と文句言って駄々こねるのは寧結と萌生くらいだ。正直な子供、とはいえ、それを担任の先生やクラスメイトに言ったかと言えば……言えていない。



「まっ、いっか。ただ萌生ちゃんは、きちんとお母さんの許しをもらわないとダメだよ」

 ついに縁が折れた。そして寧結の担任の先生に早退すると告げに行く。

 担任の先生は寧結がつまらないであろうことを痛いほど知っていた。なにせ調整したのは自分。

 寧結が歩いても勝てる相手ばかり……、参加種目も華はないものばかり。


 あっさりと承諾を得ると萌生の結果を待つ。――萌生も許しが貰えた。


 縁にはそれが信じられなかったが、ダンスに目覚めて輝き出した萌生(むすめ)が、学芸会でセリフもないお地蔵さんだったことに不満があったのかも知れない。

 やはり親は、我が子が一番可愛いから。



 楽しそうにハロウィンへと向かう寧結と萌生と深内と若月。その後ろ姿にこれで良かったのかもと思う。

 運動会で盛り上がる声も楽しそうだが……やはり偽りは良くない。これは運動会に限ったことじゃなく、様々なスポーツでも同じだ。

 仕方のないことだと言えばそれまでだが、納得のいくモノが少な過ぎる。


 まともに反論すれば『四の五の言うなら、変なルールで行うのではなく、中止にすればいい』となる。不公平さが異常だ。だがそういった話ではない。

 その論争自体が無意味。なぜなら、何度も言っているが、これは、一部の大人のエゴと策略以外のなにものでもない。

 元から、理由の正論性など建前で、あるのは目的ありきの戯れ言。




 縁は次の時限から授業に戻り勉強をする。

 じきに昼休みとなり、あっという間で放課後になった。そしてパレード終わりの寧結達と一度連絡を取る為に通信室から電話をかけた。

 相当楽しいようで、受話器から聞こえる声はハイテンションだった。


 深内と若月がアイドルということも、寧結と萌生のおてんばぶりも、すごく心配だった。

 だがその心配がいらないほど、周りもすべて仮装状態のハイテンションで、個人うんぬんではなく、皆で楽しくパレードといった賑わい。

 女の子には特に楽しいイベントのようだ。



「ったくよ。裏画のせいで一日潰したよ。ホントむかつく」

「パソコン直ったンですか?」室巣が笑顔で近づく。

 頷きながら着替える濱野。そこへ裏画が「チィース」と入ってきた。


「ちぃーす、じゃねぇよテメェ。ふざけんなマジで。なにウィルス仕込んでンだァテメェよ」

「わりぃわりぃ。アイティージョーク」

「あ? おおそうかい、お前がその気ならいいぜ、こっちもセレブの間で密かに流行ってる、とびきりのジョークをプレゼントしてやるよ。楽しみにしとけ」

 着替え終え言い合いながら道場へ向かう。道場ではすでに女子部員達が準備運動を終えて稽古を始めていた。


 夏の合宿から二ヵ月が経ち、部員達はどんどん成長していた。


 少し遅れて縁と今込が来た。

「部長、今日も何か新しいこと教えて下さい」留理が笑顔で引っ付く。

「あ、うん。そうだね。でも、毎日新しいことして疲れない?」

 縁の問に全員一致で「問題ない」と笑う。色々吸収し覚えることに貪欲になっている。


「わかった。そんじゃ、またいつものようにグループに別れようか」

「ちょっと床並君、それなんだけど、俺さ、確かに新入部員だけど、正直濱野とは同じ練習レベルくらいにはなってると思うんだけど、どうかな? まだ新入部員組ってさ」

「うん。確かにそうですよね。すみません先輩」


「裏画、なに調子乗って床並君に意見してんの。信じられない。弱っちぃくせに、どの口が言ってんの? 俺とタメ? 誰が? お前が? これ何ジョーク?」

「おい、濱野ぅ。分かるぜ、追いつかれて焦る気持ち。こっちは箱入さんにみっちりと教わってるからよ。なにせお前は左手使うこと隠してたもんな」

「あ~またそれかよ。だからそれは隠してたわけじゃねぇよ。それに謝ったろ?」


 合宿で皆が教わった、日々の生活で逆の手を使うという例の練習だ。

 新入部員が入部してから、一週間ほど遅れて君鏡が気づき教えたのだ。合宿組みは既に左右を使いこなしていて、今でも一日おきに交互で使っていた、だが、きちんと誰かがそのことについて教えないと、新入部員が自ら気づくなどない。



 言い合う濱野と裏画。完全に剣道部内の覇権争い。

 どちらが先輩として上か、男として上かを常に争っている。縁が急用で道場を離れる時に、濱野に全てを任せるのが裏画には許せないのだ。


 一年のクラスの時から最下位を譲り合うダメコンビ。


 お互いに口を利いたことはなかったが、相手の虐められたりナメられている姿は嫌というほど見ている。そしてお互いに相手を『ダッセェ奴』と思っていた。

 自分はそこまで駄目じゃないと。


 そんな濱野がこの剣道部で先輩として偉そうにしている。それどころか二年じゃ一番ヤバイ市来にも一目置かれ、文化祭以降は普通に話している。しかも女子からも「濱野君」なんて呼ばれている。裏画にはそれが耐えられない。


 もちろん、ただ(うらや)んでいる訳ではなく、きちんと厳しい練習をこなし、ちゃんと濱野に追いつきそして追い越そうと必死に努力していた。人生初の努力。

 そして裏画的には相当近づいた感触を得ている。


「とりあえず、濱野先輩と裏画先輩は、ククッ……二人で、仲良くっ……」

「ちょっと床並君なに笑ってるのよ。ダメよこの二人を一緒にすると。絶対ろくなことにならないからね」

 吉原先生の言う通りだ。だから縁も笑っている。そして縁の冗談が分かるから皆も笑う。


「んじゃ、やっぱ裏画先輩は登枝さんと小峯さん達に鍛えて貰って下さい。それで濱野先輩は今込君と岡吉先輩と雨越先輩に。それで新入部員達は、箱入さんと葉阪さんにおまかせします。それで残りの――」

 縁の指示で即動く。待ちきれない子供のよう。


 縁は何気なく分けているようにみえるが、君鏡と日野を分けたりと、細かな状況を感覚では把握している。学校内で何が起こっているかなどは全く気づいていないが、波長が合わない者同士を一緒にはしない。



 激しい練習が三十分ほど続く。君鏡の居る新入部員グループは休憩を入れるが、他は体力の差なのか殆ど休憩をとらない。

 そして更に十五分経った頃、縁が休憩を入れた。


 ダンス部も剣道部と同じに休憩を入れる。剣道部が激しい練習をすると、なぜかつられて激しい練習をする。不思議なシンクロだ。


 濱野と裏画がいつものようにジュースの買い出しを奪い合う。

 最近はなぜか室巣もそれに加わろうとする。木垣はそれに混じれず、アタフタとしているのがいつもの光景。


 ジュースを買って戻って来た三人に皆がお金の精算をする。

「くはぁ~。染み込むぅ」皆が気持ちよさそうに喉へと流し込む。


「床並君、横、いい?」留理がくっ付く。

 と、透かさず吉原先生が「ちょっといい加減にしなさい。帳さん、あなた本当に退学になるわよ」

「いいよ~」

 先生もその言葉に呆れる。なにせこのやり取りは飽きるほど繰り返されていた。当初はもっと違う感じだったのだが、留理のあまりの破天荒ぶりにこうなった。


 最初は吉原先生も本気で「停学にするわよ」とか「退学ね」と校則違反を脅しの文句としていたが、留理は「ホントに? 嬉しい。それじゃ放送で停学になったって皆に報告してくる」と嬉しそうに走り出したのだ。

 縁が止めなければ本当に、部活などで居残った者達に向けて「床並君と付き合うことになって、停学になりました」と恋愛報告するつもりだったようだ。

 まして本当に退学になればそれは学校が縁と留理の交際を認めたことになるし、これほど留理にとって好都合はないということ。


 留理が放送で皆に伝えたいという感情が湧いたのは、縁が留理からのネクタイを貰った嬉しさを皆に伝えたいと言ってしまったあれからだ。

 それからの留理は、二人の秘密というワードより、大声で叫びたいという衝動に駆られている。ただでさえ留理は、大きなステージで叫んでいるアーティスト。

 血が騒いで当然だった。


 呆れる先生をよそに、縁と噂になって停学程度なら自分もいいかなと共感している者達が数人いた。



「床並君さ。一つ聞いていいかな。あのさ、俺達が今やってる練習って、床並君的にはどのくらい進んでるのかな? もしかして、もう相当来ちゃってるとか。自分的には、ヤバイくらい強くなってる気がするんだけど」裏画。

 縁はジュースを手にどれくらいか考える。


「基礎はもう終わってるでしょ?」濱野。

 皆も自分達がどれくらいか知りたがる。正直、他のスポーツより遥かに多くのことを覚えているし、こなしている。


「ん~。基礎で言うと、仮にやることを百だとするでしょ、そしたら五かな」

「五? 五なの? 基礎の五%、うっそ~ん。床並君冗談でしょ? それじゃ基礎だけであと九十五もあるの? そんなにやることってある?」

 縁は冗談とかではなく真顔で頷く。それに皆が驚く。

 自分達が五しか出来ていなということではなく、まだやることが、基礎だけで、九十五も残っているのかと。基礎だけで、そんなにやるものが存在するのかと。


 仮にその基礎を全部覚えたら、自分達はどうなってしまうのかと。


「あくまで基礎だよ。本当の練習は、基礎が済んでからだからさ」

 縁はジュースを飲んだ。

「ちょっと信じられないな。例えばさ、例えばあと何がある? 俺も自分なりに色々と考えてみたんだけど、練習することってある?」


「ふふっ。い~っぱいあるよ。まず、空中での技や移動がまだだし、それに基本であるクイックとフェイント、あとフェイクがまだだもの」

「え? クイックとフェイントって、今やってるそれじゃないの?」

「うん。それは普通のスポーツで使う感じでしょ? 本当のは、まったく違うよ。そうだなぁ、例えるならマタドールが闘牛と戦う時に使うそれに似てるかな」

 縁の台詞に全くピンとこない。マタドールと闘牛? 赤いマントのヒラヒラ。

 そして皆が疑問をぶつけていく。


「違うよ。皆はテレビとかで色々な角度から見てるから何となくマタドールが居る場所が分かってるけど、闘牛からすると分からないんだよね。例えるならマジシャンがテーブルマジックして、お客が騙されるのと一緒。つまり、闘牛はあのマントが敵でそれを持つマタドールは敵じゃないの」

 細かな説明をされてもピンとこない。

 それはマジシャンが客に対し、どんなトリックとテクニックをしているのかが、分からないからだ。


「そっか、なんかピンときてない感じだね。それじゃさ、トラやライオンと戦う時にマタドールと同じ原理を使うとどんな感じになるか言うね。それは、長くて目立つ大きな猫じゃらしを使うワケ、したらどうなる? そう、それに獲物が襲い掛かり食らいついたら、仕留める」

「そんなに上手くいく?」

「その答え自体が間違い。上手くいかすためにどんなことでもする。例えば猫じゃらしに匂いを付ける。それが餌でもメスのフェロモンでも強敵の匂いでも。更に、トリッキーな動きや時には獲物のように、時には襲い掛かる獣のように。それでそっちに気が向かないような敵なら、逆にザコだよ。野生で獰猛(どうもう)なケモノほど匂いや動きに反応する。例え敵が数匹の群れでも。そうやって引きつけるテクニックこそフェイク!」


 野獣さえターゲットにするフェイク技? マジシャンのように相手を騙す?


 基礎の中にどんなことが残っているか予想もできない。ただ、これがマタドールの養成所ならば、確かに闘牛に対する技やテクニックを教わらなければならない。


 テレビで見て半端に知っているだけに、そんな騙しのテクニックだとは、思いもしない。

 赤い布が血の色だから興奮するとか、ヒラヒラがと上辺で語るが、要は敵から見てフェイクが危険な敵であり、優先順位がフェイクに向かうようにする。


「ちなみに、フェイクも信じられないほどあるから、これ一個でどうこう思いこんじゃダメだよ。さっきも言ったけど、マジックと一緒だからさ、色んなことで騙してくるよ」


「マジックか。確かにそいつは厄介だよ。床並君も出来るの?」今込。

「もちろん。いっぱい覚えたよ」にっこり笑う縁。

 縁の師匠であるクロエはジャグラーでありマジシャンでもある。他人の目を欺く技を縁が会得しているかは必然として分かる。


「そうだ、まだ先の話だけど空中技も見せたいし、ちょっとイイかな」

 縁はそういうと、今込と濱野と裏画、おまけで室巣を呼び寄せた。

「それじゃさ、全力で襲い掛かって来てね。色々見してあげる」

 楽しそうな縁。ダンス部も見学者達も興味津々だ。


「本当にいいの床並君。確かに床並君は強いけど、俺達も相当腕上がってるよ」

 ウンウンと笑う縁。


 縁はつい最近、学校を金、土、日と二日休んで最終ランクの戦場を体験してきたばかりだ。そこはまさに地獄のようで、ありえないほどのヤバイ敵が巣食う場所であった。縁はそこでボロボロになる。完全なる敗北。


 ランク九では敵なしにまでなった縁がいいように遊ばれて終わる。


 見るモノすべてが狂気に満ちていて、縁をか弱き子羊みたく扱う。どんなに逃げてもどんなに戦っても、縁に勝機はなかった。

 ここから長く険しい旅が始まると感じるほどに。


 そんな領域にいる縁にとっては形霧達でさえ可愛い獲物、剣道部員達では……。



「よし、裏画右、今込君左、室巣君は自由に」濱野の指示で連携を取る。

 縁はいつもと全く違う動きをする。ゆっくりと動いてくれているのか姿は見えている。だがなぜか攻撃をしようとするとワープする。

 そして縁の竹刀が今込の胴に触れる。くすぐったいくらい優しい触れ方。そしてスッと引き抜く。


「どうかな? これが空中技の一つだけど」

「あぁ、分かったぁ。床並君全部空中で動作してる。避けるのも防御も攻撃も」

 留理の言葉に皆が意識する。


「帳さん正解。これが空中技の初歩だよ。そんでこれがその発展系」

 縁はそういうとフィギュアスケート選手のように地を滑り宙を舞う。


 宙へと飛んだ瞬間一気に濱野と裏画が切り裂かれた。優しい触れ方だが、何度も回転切りされて全身がビクビクと驚いている。更に着地と共に、バレエダンサーのように飛び跳ねて室巣も仕留めた。


「まあこんな感じかな。今はまだ分からなくていいけど、近いうちに」

 元の位置に戻り、置いてあるジュースを手に取る。


 縁がこうして手取り足取り教えてくれるのは珍しくないが、新たなレベルを見せられると、いつも驚きがくる。縁が強いことも凄いことも、重々知っているのに、あらためてそう感じてしまう。



「でもさぁ、空中って弱点じゃないの?」裏画。

「あ、そうっすよね。空中は逃げ場ないっすもんね」室巣も意見する。


「そう思う? それは漫画とかアニメの見過ぎかな。全然違うよ。空中軌道は狙うのが最も難しいンだ。でもね、逆に空中移動は敵を狙うのが楽」

 またも首を傾げる部員達。

 理屈が分かっている縁は、必死にどう伝えるべきか悩む。


「ん~。俺は説明が下手みたい。んっとねぇ、そうだなぁ、電車、走ってる電車の窓にボールを投げ込むのと走ってる電車の中から外の人にボールを投げる差かな」

 皆が状況を考える。ピンときた者もいるが状況が把握できない者もいる。


 電車から外を見る感じと、外から、通り過ぎる電車の、更に中の人を見る感じがイメージできないようだ。


「上手く言えないけど、まずはそんな感じなんだけど、問題はそこじゃなくて、なんで空中に飛ぶかってことなんだけど、よくさ、ハンドボールとか最近じゃテニスとかでも飛びながらシュートというか攻撃するでしょ? バレーボールでもバスケットでもいいんだけど、それね、飛んだ本人は、電車内に居るわけね。そこまではイイかな? そんで相手は、飛んだ選手を目で追うンだけど、軌道上のどこからシュートが来るか分からないの。紙に書くと分かるけど信じられないほど攻撃ラインがあるワケ。言うことがいっぱいあり過ぎて、こんがらがってきた。分かりづらいかも知れないけど続けるね。攻撃のラインが沢山あって読めないってこともそうだけど、さっきも言ったけど、ジャンプするということは電車に乗るということ、つまり空中ではストップしている自分がいるワケ、それなのに自分の本体は移動してるの。あ~難しいかなぁこれ。伝わるかなぁ」


 必死に聞く部員達。ダンス部も聞いている。聞いている中で理解できる者とそうでない者に分かれていく。ここからは想像力と理解力と知識。

 ちなみに吉原先生は、完璧に理解していた。


「それと地面に体の一部が付いているのと、宙に飛び上がる大きな差は、制動能力の差。地面で出来る最高の動きと、空中でできる体の動き、回転、ひねり、その全部がどれ程違うかっていうことなんだけど」

「確かに、地面で凄い回転とか、ひねりとかないよね。だって地面に付いてるし、滞空時間うんぬんの前に地面で何ができるかだよね? 体の自由度ってことか」

 濱野が少しずつ理解する。


「さすが先輩。俺より説明が上手いです。空中技を敢えてするのは、今話しただけでも三つ四つあったけど、俺が説明ヘタなだけでもっと深い理由もいくつかあるから、今度じっくり説明できるように考えておきます。ただ、空中は弱点じゃなくて攻撃する方に圧倒的有利だってことは覚えておいて。空中の者に的を絞るではなくて、空中の者が、地上の者を翻弄するが正解。落下地点を推測するとかの先読みは意味が違うんだよね。あっそうだ、皆がいつもやってるボールを虫取り網で取るアレあるでしょ、あれが地上の攻撃で、あのボールが空中で分裂して襲ってくるのが空中技、どう? 分かる?」


 飛んでくる普通のボールが地上からの通常攻撃? 飛んできたボールの、分裂が空中技?


 一生懸命な縁に吉原先生がニコニコと笑う。皆も必死に聞いているがやはり全員が分かるわけではない。仕方がない。そんなに簡単なものでもない。


 なぜスポーツ選手が空中で技を繰り出すのかを、本当の意味で理解している者は少ない。

 スポーツ選手で空中でのそれを言うのは、多くの人に弱点のヒントを与えることにも繋がる。言えるのはあくまで上辺の仕組みだけ。あとは()(みつ)


 体操選手や多くの空中技を味わう競技者達は、地上と空中の圧倒的な違いに気づいているはず。地上と宙では何がどう違い、どういう自由度があるのかを。



「本当にまだまだあるんだね。ちょっとびっくり。他にもある?」裏画。

「あるよ。例えば攻撃と防御で。それじゃ裏画先輩、ちょっと立ってくれます。そこで二刀流で顔の前で大きくクロスして固くガードしてて下さい」

 縁はそういうと裏画の前に立ち、クロスしたそれがどれ程固く固定されているかを確かめていく。


「大丈夫ですね。それじゃそのまま、固めてて下さいね。まずは二連打。そして四連、八連、十六連打。ついで三連、六連、十二連打。次は五連、十連打……」

 まるでドラムのリズムを刻むようにクロスした竹刀を色んな方向から連撃する。そのスピードもリズムも面白いように変化する。


「これは打ち込み方だけど、これにスピードやテンポを変えるとこうなる」

 そう言って縁はとんでもない攻撃を繰り出す。とてもじゃないが縁の攻撃に反応して受けるなど出来ない。


「と、こんな感じかな。これが打てたり受けれたり避けれたりすれば、相当基礎が固まってきたことになるよ」

「できないでしょうこれ」

「いやいや、ちゃんと覚えれば、誰でもできるよ。だってリズムパターンだもん。これはあくまで基礎だよ。応用は、後に見せたテンポを変えたアレだよ。卓球選手とかに直接聞いたら分かると思うけど、ただ早いだけの球は何度も見てれば慣れるけど、球に緩急があることがよりミスを誘うってね。でね――」

 縁は根気よく部員達に教えていく。色々なスポーツに例えたりしながら。



「じゃあさ、フェンシングとかってどうなの?」

「フェンシングはモモ。ももの強さで八割決まるかな。ただ、剣捌きもあるけど、背中とかをムチみたいにして狙うから。それでも、間合いを制するのにももが必要だけど」


「ちょっと床並君、全然連打できないんだけど……」

 濱野や皆が竹刀を振りながらうまくいかないと悩む。

「前にも言ったけど、まずはお尻、お尻を意識してフリフリして。そしたら嫌でも手とか肘が勝手に動くから。体の動きは流れを作る動作が重要だから。空中でもそう。お尻とか、時には腕を伸ばしたり縮めたり振り下ろしたりして、体を回したりひねったり。まぁ、言葉で言うよりは練習で身に付けた方がいいと思う。俺も言葉で説明するの苦手。なんか夢で見た話を説明してるみたいで、上手く伝えられないんだよね。まいっちゃう」


 縁はそういうが、伝わっている者達は、言われたことを理解しながらじっくり練習していく。吉原先生も、縁の必死な説明と論理に感心していた。相当なスポーツ学というか、科学的根拠の元に練習が組まれていると。

 縁の教えに、筋力強化や根性論は一切ない。逆に省いている。


 沢山動いて練習すれば、自ずと必要な筋肉は付く的な。

 ただ、柔軟運動を相当念入りにしていることからいって、それが、相当な意味を持っているのは確か。



 部員達が夢中で練習する。

「これさ、ジャンプしてる最中に攻撃とか防御をする訳でしょ、すごくタイミングが難しいし、すぐに地面に落ちちゃうけど」

「空中技の練習する時は、トランポリンを使うと覚えやすいと思う。宙での感覚とか空気の捉え方とか、体の動かし方や使い方が理解しやすいと思う。自分で飛ぶと滞空時間が短過ぎて分かりづらいかも。最初は感覚を養う為にトランポリンが――」


 縁は近いうちに扱いやすいサイズで、低めのトランポリンを用意すると部員達に約束した。


「通常の弾むリズムは、前にダンス部のステップと同じって説明したでしょ。でも空中(・・)遊舞(ゆうぶ)に必要な感覚は、跳び箱とか人飛び、馬飛び? かな、あれの感覚が近いと思う。勢いのつけ方や足、腰も、手も使うしさ、タイミングでピョンピョン飛ぶから」

「中腰で一列に並ぶやつ?」

「うん。最初はそれでいいけど、できるなら、バラバラというか、周りに散りばめるというかさ。身近な間隔で配置して、で、慣れてきたら、横向きや後ろ向きにも飛び越えたり、連続とか、まぁ色々。飛べるかよりも、リズムや体の使い方、あと慣れかな?」

 縁も自分で言っていて確信がない。


 部員達は、縁が言うことをとにかく片っ端から、遊びのように試していく。


 汗びっしょりになりながら練習する剣道部。そして休憩が来る度に濱野と裏画の口論が始まる。

 少し前までは、吉原先生と折紙先生も言い争っていたが、ここ最近は美術関係のことが忙しいらしく、剣道場へは来られていない。



「だから、濱野が言ってるそれってさ、良いコト言ってますよ的な話だけど、その元ネタがさ、どうせエロ本とかエロサイトに載ってたネタだろ? お前の全部そうじゃん」

「ふざ、ふざけんな裏画。誰がそんな、バカやろう。それは、お前だろ? お前の知識がエロサイト語録だろうが」

 道場内の全員が笑いを堪えている。女子部員達が笑わないから、男子達も必死で堪えている。が、濱野と裏画の口論を笑わずにいるのは至難の業。

 そして、限界を越えてしまった者は、顔を手やタオルなどで覆い隠して、バレないよう笑う。更に伝染する。感染する。


 二人の話は、女子が笑いづらい内容や言葉が混じっていることが多く、非常に変な空気が漂う。親といたリビングのテレビ画面にキスシーンやラブシーンが永遠と流れてしまったような気まずさ。

 笑うわけにも、真面目を演じるわけにもいかない状態。


「ざけんな思春期の燻製(くんせい)が」

「っだそれ? うるせぇ性欲ダヌキが」

「マジでジーザス」

「お前が、オーマイ、ガーだよ、バカたれ」

 二人の争いに必死に割って入ろうとする室巣。室巣を見ていると昔の濱野を見ているようだ。

 昔は、女子部員達が話す合間を縫って、今の室巣のように必死に割り込んでどうにか自分の意見を言おうとしていた濱野。今ではすっかり普通に話しているし笑いもとっている、が、かつては鼻で笑われていた。




 賑やかな雰囲気の中、剣道場のドアが開いた。

「兄ぃ、ただいまぁ」

「お? おかえ……りって寧結、お前その恰好で学校来ちゃダメだろ」


 一礼して入ってきた寧結はナースの格好をしていた。そのすぐ後ろの萌生も同じで、深内はカボチャと魔女をミックスした可愛い服、若月は女海賊だ。


「もしかして今日って、ハロウィン? マジ?」

 濱野と裏画の言い争いが止んだ。そして皆が四人の元へと集まる。


 可愛く仮装する深内と若月をイヤミな目で見る女子部員達。

「あのさ寧結。その血だけど、口とか目とかから流した方が良かったんじゃね?」

「なんでよ。最初は口から垂らしたんだけど、リップがはみ出したみたいに見えるからやめたの」

「だよね、なんかヘタクソだと思われちゃうもんね」萌生も頷く。

 だが縁はどうしても寧結と萌生のメイクに違和感がある。


「でもな、その鼻から血が垂れてるってのは……」

 アホっぽいと言いたかったが、相手は小学一年生だし、せっかく楽しんでいるのだからと言葉を飲みこむ。とはいえ、兄として妹が赤い鼻水を垂らしているように思われるのは忍びない。萌生は右穴から一本、寧結は両穴から垂れている。

 ――どう見てもアホっぽい。


 縁の言葉でその感覚に気づいた吉原先生が笑いを堪える。だが他の部員達はそうは思っていないようだ。黒ずんだアイメイクや、頬に入るシャドウなどをきちんと総合して見ているから、ちゃんとお化けっぽく感じている。


 寧結と萌生と違い、深内と若月は可愛さを前面にだしていて、メイクも仕草も全くお化けではない。それこそ服装だけの仮装。


「兄ぃはまだクラブ終わらないの? 早くしないと呪うよ~。毒の注射を――」

 縁は時計見る。もうすぐ五時になる。最近は部員達の意向で七時までやることが多いのだが、皆の目の前で妹を優先し帰宅するのは部長として言いづらい。


「早くぅ。今日もマイマイがご飯作ってくれるって。わっきょもね――」

「今日も? 寧結ちゃんそれって……」登枝が問う。

「そうだよ。うんとね、この前もね――」

 何も気にせず事実を暴露していく寧結。


「え~えぇ。泊まったの? 嘘でしょ? ずっるぅ。何それ」

 ここひと月の間に深内は二回、留理は一回お泊りしていた。深内に関して言えば、泊まらなくても寧結と遊ぶという名目でよく家を訪れていた。


「もしかして今日も泊まり? ……じゃないよね?」

「へへぇ。今日は萌生ちゃんもイイって。さっき萌生ちゃんのお母さんがイイよって。だからハロウィンパーティーしたらお泊りぃ」

 寧結の台詞に部員達がざわつく。練習どころの騒ぎではない。


「部長、ずるいですぅ。私も行きたい。部長のお家行きたい」登枝。

「私も行きたい~」小峯も見たいとせがむ。

 皆がパーティーに参加したいと言い出した。寧結は萌生とお化けナースを演じながら部活が終わるのを待っている。


 剣道場の中も凄い雰囲気だが、寧結や深内を見つけた一般生徒も、物珍しくて見に来ていた。

 そしてこのパーティー騒ぎ、退屈な高校生には羨ましくてしょうがない話題。



「兄ぃ、皆誘えばいいジャン。それより早くしてよぅ、早くぅ~ぅう~」

「ば、バカいうなよ寧結。こんな大勢……? ええ?」

「ちょっとあなた達、お泊りは駄目よ。何考えてんの? どういうこと? いつの間にそんな……嘘でしょ?」吉原先生が突然の情報に焦る。校則違反と。

 とそこに聞きなれた声が。


「あら面白そうね。床並君、それ私も入れて」

 皆が振り返ると、五時で美術部を終えた折紙先生が様子を見に来ていた。


「ちょっと折紙先生、何言ってるんですか。あなた教師でしょ」

「それじゃ吉原先生は不参加ということで。私は行くわ、何の仮装しようかしら」

 折紙先生の登場で部員達も一気に色めき立つ。


「先生、ちょっと待って下さいよ。まだ、その、決まった訳じゃ」

「大丈夫よ。ただのパーティーでしょ? 日本中で今日がハロウィンって分かってるし、寧結ちゃんも萌生ちゃんもこんなに可愛く仮装してるじゃない」

 縁はそういう単純な理由じゃないと言いたかったが……黙る。


「どうした兄ぃ。ビビってるのか? 大丈夫。本物のお化けじゃないし、心配するようなことはないよ」

「あのな寧結、……ふぅ」言っても無駄だと言葉を飲む。


「平気だってば。でも兄ぃのそういうトコ嫌いじゃないよ。何か私の若い頃にそっくり。まぁ、気にせず遊びな、若いんだからさ」

「アホ。お前はどこでそんな言葉覚えてきたンだ。使い方も変だぞ」

 あまりにも間違いが多過ぎる寧結の台詞にツッ込むことができない。

 皆は、縁と寧結のいつものヘンテコな会話に笑っている。


 そしてこの日、剣道部皆でハロウィンパーティーをして、数人が縁の家に泊まり込んだ。


 仮装したままの買い出しで騒動を起こし、アイドルという存在がバレてまたひと騒動。青春の一ページで済まされない厳しい内容で、人だかる商店街に警察官まで出動する失態。


 結局、眠りにつくその瞬間まで、お化け達の宴は静まることはなかった。





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