↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノーリミットアビリティ  作者: 桐地栄人
第1章 初めての学園生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/70

第15話 シークVS奈落山

「君とこんな早くから戦えるなんて嬉しいなー」

「俺は全然嬉しくない」


 奈落山の弾むような声とは対照的に、シークはげっそりした低い声を出す。


「んー、そんなに私と戦うのが嫌かい?」

「嫌っつーか、最初に当たるのがお前なのがなんか誰かの作為を感じるのが気味悪い」

「そうかい? 私は偶然と必然が重なった結果だと思うよ?」

「偶然は分かるが……必然がどの部分なのか分からないんだが?」


 シークがそう聞いた瞬間、奈落山の表情に内なる自信が溢れてくるような笑顔が現れる。


「偶然は私と君が同じ列車の同じコンパートメントで一夜を過ごしたこと。そして必然は……」


ゆっくりと木刀を腰に刺すように構えながら次の言葉を発する。


「一年生最強のこの私と、君がここで戦うことだよ!」


 傲慢ともとれる奈落山の言葉。だけどそれは、自分の実力対する自信の表れ。


「戦う前に一つ恩を返していただきたい」


 戦闘準備に入りながら奈落山が返礼を求めている。

しかしながらシークには何か恩返しをするような記憶はない。

何のことだか分からないという顔をするシークに、奈落山の顔が少しだけムッとなった。


「昨夜、席を取ってあげたやつだよ。あれ、結構恥ずかしかったんだからね」

「ああ、あれか。そういえばそんな約束してな……。で、何だ? 何をしてもらいたいんだ? まさかお前に限って負けてほしいなんていわないよな?」

「それこそ本当にまさか、だよ。寧ろその逆」

「逆?」


 シークがそう聞き返した瞬間、奈落山を中心に闘気が渦巻く。


「私は先ほどから一度も君が本気を出すと言う言葉を聞いていない。ここで宣言してくれない?本気を出すって」

「敗北志望、なわけないか。なら強者に対する飢えか」


 奈落山の笑顔の裏には、常にシークと戦いたいという戦闘欲求があったのだ。


「いいだろう。お前の頼み、受けてやる」


 シークも、これまで奈落山に見せたことがないほど真剣な表情で木刀を手に構える。

 肌が粟立つ。研ぎ澄まされた闘気を受けて心臓が高鳴っていく。幾ら嫌がっていたとしても、幾ら面倒くさがっていたとしても、超能力者としての血が騒いでくる。

 目の前の強者を倒したいと。


「お前との戦い、本気でやってやるよ」


 シークが戦闘の姿勢になったのを見てフラグマは頷くと、二人の中心で合図のための手を構える。


「二人とも準備が出来たな? では、始め!」

「参る!」


 開始と同時に奈落山が地を蹴り飛び出していた。弾丸のように真っ直ぐに最短最速でシークに迫る。

本来、舞華は例外としても能力の分からない相手とは距離をとってまず腹の探り合いから始まる。しかし、奈落山は飛び出す。

その理由はシークが生命系の能力者だと知っているから。


 生命系。

 傷を癒したり、欠損した部位を治したりする者。

 逆に生き物を腐らせたり死なせたりする者。

 肉体を変化させたり変質させたりする者。

 あらゆる生命(いのち)に干渉する能力だ。

 そしてそのほとんどが遠距離での攻撃を得意とする。

 奈落山が開幕速攻をかけたということは、奈落山が自分には遠距離で戦う術がないと言っているようなものだ。

だがしかし、動かなければどうしようもないのだ。遠距離攻撃がないということは近付かなければ戦えないということなのだから。

攻撃のほとんどが視認することが出来ない生命系能力者に対して「待ち」は、能力によっては致命傷となるのだ。

 それを知識として知っている奈落山は、自分から動かざるをえない。

 そんな状況でもシークは慌てず、自分に向かって走ってくる奈落山に、空いている左手を真っ直ぐに突き出す。


「っ!?」


 それに気付いた次の瞬間、奈落山は突如真横に転がるように避ける。その光景に周りの生徒達は何が起こったのか理解できず、疑問を囁きあっていた。

だが、それも奈落山の頬を流れる血を見て静まり返る。


「なるほど……君はそういう生命能力者か」


 血を指で拭いながら奈落山はそう言った。奈落山の目には見えていたのだ。シークの指から放たれた糸が。


「正解だ。俺は自分の神経を変質させ、硬質の糸を作る。だから当然、こういうことも出来るんだぜ!」


 真っ直ぐに進んでいた糸がその進行方向を変え、奈落山の背中へと迫る。

神経を硬質化させてはいるが、神経としての機能までは失われてはいない。


「……っ!」


 奈落山の背後から迫る脅威。それでも奈落山はそれを無視してシークに向かって真っ直ぐに疾走を始める。


(気付いていない……わけねーよな。罠か? だが……っ!)


 背後から迫る糸を無視して真っ直ぐに走る奈落山を疑問に思うも、構わず奈落山の背中に糸を直進させる。


(当たれ!)


 シークがそう確信した時、奈落山の周りの空間が少しぶれた気がした。次の瞬間、驚くべきことが起こった。それは奈落山を貫く寸前だった糸が横にずれ、地面に突き刺さったのだ。


「何だと?」


 驚愕に目を見開くが、じっくりと考えさせてくれる時間をくれるほど奈落山は甘くなかった。

下方向から迫る木刀を見切り、ぎりぎりのタイミングで受ける。


「んー、やっぱり見えているんだね。しかも私が木刀を抜いてから動いて間に合うなんて……ちょっとショックだよ」


 奈落山がぼそりと呟く。


「空間系か?」

「正解、とだけ言っておこうか」


 奈落山は希種か秘種のどちらかであることは、能力学で言われたことから分かる。希種に属する四つの系統の中で自分の糸をあのような方法でかわせるのは空間系だけだ。


「ちっ」


 生命系は空間系に弱い。今の攻防だけを見てもシークの能力は奈落山の能力と相性が悪いことが分かる。


(どうするか……)


 シークは思考を開始するが、それに気付いた奈落山はその時間を与えない。

 鍔迫り合いの状態からシークを突き飛ばし、そのまま後ろに離れて距離を取ろうとしたシークに連撃を叩き込む。

毎日太陽が昇る前から木刀を振る彼女の実力は本物であり、連撃の一つ一つが正確にシークの急所に打ち込まれている。

 シークはその連撃を人並みはずれた動体視力で見切り、自分の木刀で捌いていく。

だが、正面からの剣術では、剣術の総本山、絶刀流の師範の娘である奈落山に一日の長がある。

十合ほど打ち合ったが、明らかにシークの方が押されていた。

このままではいい加減捌ききれなくなると悟ったシークは、奈落山の次の一撃を身を低くすることでかわす。


「くっ!」


 奈落山は急に木刀をかわされたことに驚いている隙に、糸を体に巻きつけ逆バンジーの要領で空中に逃れる。


「逃がさないよ!」


 空中に逃れようとするシークを返す刀で斬ろうとするが、間一髪、その刃は届くことはなかった。ぎりぎりかわしたシークは、空中で体勢を立て直し、糸を奈落山に向けて伸ばす。

しかし、やはり奈落山を貫くはずの糸は左右にずれ、虚しく地面に突き刺さる。

その隙に、奈落山は地面に突き刺さったままの糸の上を走る。人並みはずれた体幹と、それを自分のものにするための努力を怠らなかったからこそ出来る芸当だった。


「さっきと同じ……」

「……なわけないよな?」


シークは木刀を持った手からも糸を射出する。


「弦曲・鳥籠」


 点で駄目なら線で。左から射出された糸は真っ直ぐではなく、奈落山を包み込むように後方に流れていく。奈落山が踏んでいる糸の先は逆に、自分の方に移動させる。それにより奈落山は十本の糸に包まれてしまう。

その様はまるで、一匹の鳥を包む鳥籠の様であった。奈落山を包んだ糸はその幅を急速に縮めていく。それでもなお疾走する奈落山はその勢いを止めない。

 段々と狭くなっていく糸を突き進み、奈落山を捕らえようとしたその時、弦を弾いたように残像を残しながら歪む。

 そうとしか呼べない現象が目の前で起こっていた。奈落山がその間を通る瞬間、一層その歪みの幅は大きくなり、かすり傷一つ負うことなくシークへと肉薄する。


 横薙ぎの一閃。


 シークは上半身を反らすことによって危うくかわす。

だが、目前で起きた歪んだ空間に驚き、一瞬の硬直をしてしまったシークはその高速の一閃をかわしきれなかったようだ。前髪がほんの少し空中に散る。

だがしかし、シークもやられてばかりではない。

背面の状態から体を捻り、奈落山の横腹に回し蹴りをする。

奈落山はそれを読んでいたかのように片手だけで受け止めようとして、失敗する。

シークが、回し蹴りが奈落山に当たる瞬間、奈落山の足元の糸を緩めたのだ。


「う、ぐっ!」


奈落山は足場の突然の沈下に対応できず、片腕だけではシークの回し蹴りを受け止められない。

地面に叩き落された奈落山は上手く受身を取り、致命傷には至らなかった。

空中でシークの蹴りにも腰が入っていなかったことが大きい。

 それでもシークは奈落山とまた距離をつくれた。


「ったく、面倒くせぇ能力もってんなー」


 地面に着地しながらシークはぼやく。

地面に降りたのは単純に、糸だけでシークの体重を支え続けるのは難しいからだ。不可能ではないが、高速で移動することは出来ないし、集中していないと段々と落ちていってしまう。空中から糸で攻撃をし続けることは得策ではない。落ちるタイミングを狙われるくらいであれば、安全に降りられるタイミングで降りた方がリスクが低いのだ。

 奈落山の能力を間近で見たシークは、その記憶の中から一つだけ当てはまる能力があった。


「空震。それがお前の能力だ」


 空震。空間を地震のように揺らして振動させる能力。

シークの予想通り、それは空間系の能力だ。


「お前はそれで空間を揺らして糸をずらしたんだ」


 シークの言葉に、奈落山は真剣な表情に少しだけ苦笑を浮かべる。


「さすがにあそこまで近くで見られたら気がつくよね」

「まあな」


 しかし、奈落山にとってその程度は予想の範囲内。いままで能力を隠していたのはシークを試すため。この程度も見破られずあっさりと負けるようならお話にならない。


「安心したよ……君がちゃんと強くて」

「それはどうも」


 シークは飄々としている。それはシークの余裕の表れでもある。

 奈落山はシークの態度をそうとった。


「なら……」

そこで一度、奈落山は深呼吸をする。

そして一歩、奈落山は踏み出す。

 そして二歩目を踏み出すために駆け出し、足が地面に着く瞬間、奈落山の姿が一瞬ぶれ、シークとの距離の半分の場所に現れる。脳が認識を拒むほどの速度だった。


「なんだと?」


 事実、神速と謳われる奈落山の剣速さえ見切ったシークの目でさえ追えなかったのだ。

 地面に足をつけた奈落山は更に三歩目を踏み出す。


「来る!」


シークの予想通り、奈落山は二十メートル近かった距離を僅か三歩目で詰め、目前に現れる。およそ0.3秒。瞬きさえさせないほどの僅かな時間でその距離を踏破したのだ。

 だが、攻撃をする姿が見えていれば対処できる。シークは先ほどと同じように下から切り上げるような斬撃をすんでのところで見抜き、軌道上に自分の木刀を置く。

剣速は先ほどと変わっていない。互いの木刀がぶつかり合う派手な打撃音が辺りに木霊する。


 ーーそのはずだった。

 ところが、シークの目の前で奈落山の姿がぶれ、木刀ごと消えてしまう。


「っ!? ぬぐぁ!」


 突然右後ろに感じた気配に、咆えるような声を喉から出しながら反射的に無理やり体を捻りながら木刀を振り回す。振り回した木刀の先には、先ほどまで目前にいた奈落山が木刀を縦にし、防御体勢を作っていた。今度こそ派手な木刀同士の打撃音が校庭に広がる。


「終わりだよ」


 奈落山はそう呟くとまた消え、今度はシークの左後ろに現れる。


(っ、嵌められた!)


 奈落山の移動した気配の場所をすぐさま察知したシークは心の中で叫ぶ。

 シークは奈落山を突然見失い、反射的に動いてしまった。その結果、シークの今の体勢は上半身を大きく右後ろに捻っている。反射で動いてしまったが故、下半身は前を向いたまま。

 奈落山はシークが気配で自分の場所を探り当てるだろうと信頼し、案の定、探り当ててしまったシークは上半身を振り回してしまった。

 避けれない。反射的に力の限り振り回した剣先を戻せるだけの時間はない。奈落山がそれを許すはずがない。


「絶刀流弐の型・天牙!」


 低く構えた状態から放つ神速の抜刀術・天牙。地にしっかりと足をつけた状態から放たれるそれは、今までの剣速とは比べ物にならない速度をほこる。

 決まった。

 奈落山を含め、その場にいる生徒の誰もがそう思った。


「弦曲・鎧堅(よろいがため)」


 ところが辺りに響き渡ったのは肉を裂き骨を砕く鈍く重い音ではなく、硬い物で金属を叩いたような高い音。奈落山の抜刀は間違いなくシークには防御不可能なタイミングだった。


「っ!」


 驚いた奈落山は身体を固くする。

 木刀はシークの脇腹に直撃しているように見えるが、シークはなんの痛みも感じていないかのようにそのまま先ほどとは逆に身体を回転させ、奈落山に木刀を振り下ろす。

「くっ……」

 奈落山は慌てて後ろに跳び上がり、木刀を避ける。

「まさか糸が鎧代わりにもなるなんてね……。まったく……その能力、汎用性が高すぎない?」

 木刀を避ける瞬間、奈落山は見た。奈落山の木刀がほんの少しだけシークの身体には届いていないことを。

いつの間にか木刀とシークの身体の間に、薄い膜のようなものができていたのだ。


「最初から、じゃないね。もしそうならさっきの接近で気付かないわけがない」


 奈落山にはシークの糸が見えていたのだ。最初から張っていたのなら分からないはずがない。


「ああ、たった今使ったからな」

「やっぱりね。……最初から木刀では致命傷を与えられないって知っていたでしょ?」

「ああ。悪いな」

「謝る必要はないよ。……だから君はさっきから余裕の表情なんだね」

「いや、余裕ではないぞ。さっきのは結構驚いた」


 学校側から支給された木刀程度の強度ではシークを傷付けることが出来ない。それを知っているからこそ、シークの顔にはこの戦いが始まってから余裕があった。それでも先ほどの意表をついた攻撃は、シークを驚かせるには充分だった。

 しかし、奈落山はその言葉だけでは満足しなかったらしい。


「せめて……その顔を必死の表情に変えないと私の気が済まない」


 そう呟いて、一歩目を踏み出す。そして二歩目で残像を残し、脳が認識を拒絶するほどの速度でシークに近付いた奈落山は、構えた姿勢から切り上げを行う。

 それは一見、何の変哲もないただの斬り上げ。

 シークは先ほどの移動に注意しながら、念のため奈落山の木刀に十字になるように自分の木刀を持っていく。今度は先ほどとは違い、木刀同士がぶつかり合う。


 しかしながら、聞こえてきたのはチェーンソーで木を削るような音だった。

 手の平の痛みと共に自分の木刀が削られていることに気付くのと、反射的に奈落山の木刀を上に流すのは同時だった。高らかに上がった木刀から落ちてくる粉を見て、シークは奈落山が高速で移動できていた理由を知る。


 超振動。

 それが今の攻撃と奈落山の移動の正体だ。人間は走る時、一瞬だけ身体が宙に浮く。そのタイミングを見計らって自分の身体を前後に震わせ超速の移動を可能にしたのだ。

普通の人間がそんなことをしたら、急速な移動による重力と圧力に脳と身体が耐えられず動けなくなってしまう。それどころか、最悪死に至る危険すらある。

 それを可能にするのが超能力者に備わっている特殊な器官だ。超能力者には遺伝子レベルで肉体が各自の能力に順応していく。

例えば、シークが神経を自由自在にコントロール出来るように。

それでもなお、僅か十二歳で超振動に耐え得る肉体を手に入れられる奈落山絶がしてきた努力は想像を絶するものだったであろう。

 離れれば近付き、近付けば神速の抜刀術が待っている。まさしく八方塞りの状況だった。


奈落山は今が好機と果敢にシークを追撃する手を緩めない。

 斬って斬って斬りまくる。

奈落山の超振動の刀がまともに当たれば、シークの糸の鎧は容易く透過し骨を砕く。シークは今、奈落山の木刀に対して裸の状態であることと変わらない。

 だが、この誰もが動揺しあるいは敗北を認めるだろう状況においても、シークは冷静だった。

相手が斬りまくるのであれば、シークは避け続ける。奈落山の木刀を正確にかわし、避けられないときは糸を纏わせた腕で、奈落山の木刀の軌道を変えるように弾く。


 一方で、シークを近接という絶好の距離で攻め続けている奈落山の表情には必死さの中に焦りが見えていた。木刀も刀身の半分まで削られているのに近接で攻め続けられ、このままでは敗北必須という状態にも関わらず、シークが冷静な表情を崩さないからだ。

 避けられ、弾かれ、逸らされる。

 まともに当たればそこで終わりのはずなのにそれができない。目前の勝利を掴めないことが奈落山の焦りを更に増長させる。

 それでも奈落山は力強く正確にシークを攻め続ける。一歩、また一歩とシークに後退を迫る。自分の剣術への自信が奈落山を前に衝き動かしているのだ。


 そしてついにそのときが来た。

 シークがデコボコだった地面の出っ張りに足を捕られ、バランスを崩したのだ。先ほど、シャーリーや他の生徒達がデコボコにした地面はそのままだった。

シークはそれでも奈落山から少しも目を離さないが、その足は反射的に次の着地地点を探して宙を彷徨っている。

ほんのゼロコンマ数秒のミス。

 今しかない。

 奈落山は心の中で叫び、シークの足が着地する瞬間を狙って、地面を空震で揺らす。

 普通であればなんて事はない揺れ。

だが、バランスを崩していたシークには致命的な一撃。

そのままシークは踏ん張りがきかず、後ろに倒れる。そこに迫る奈落山の刃。偶然と必然から湧き起こったチャンス。奈落山の目は、その一瞬を逃さない。

 大上段からの斬り落とし。全身全霊を込めた後先考えぬ大振りの一撃。

その刃がシークに振り下ろされる瞬間……。


「……っ!?」


奈落山が見たのはシークの笑っている顔だった。

それは諦めや賞賛の笑顔ではない。獲物が罠に掛かった時のある種の獰猛な笑み。

しかし、振り下ろした木刀は止まらない。

奈落山の強烈な振り下ろしにより、砂煙が舞い上がり二人の様子を隠した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。