139話 コバル
本年もよろしくお願いします。
前話の鯉の色と種族、変更しました。
ゴブリンはこの世界でも最弱モンスターの一角なのだが、その分成長しやすい。
アキラから預かっていたメスゴブリンはすぐに進化できるようになってしまった。
これはもしかするとアキラのとこでもレベルが高いゴブリンを貸してくれてたのかもしれないな。
「むう。ゴブリナ、か」
だが進化したのはうちのタマと同じ系統の【ゴブリニャ】ではなく【ゴブリナ】であった。
ゴブリンだった時とは違いやはり可愛らしいのだが、耳はネコミミではなく普通の位置にやや長く毛の生えたものが生えている。
尻尾はない。
「タマの時と同じくちゃんとネコミミを着けさせていたのになんでなのにゃ?」
「だとするとタマが元々はゴブリンスナイパーだったからか?」
「マスターが猫っぽい名前で呼んでいたせいもあるかもしれないね」
いや、タマの名付けはコルノだったはずだが。
ゴブリナに進化したメスゴブはアキラに返すので名前はそのままだったんだけど、そのせいというのも……よくわからん。
「わからんが、わかることはある。これで奴らがますます騒ぐということだ」
「この子、アスカちゃんとタマといっしょに特訓してたからみんな知ってるんだっけ?」
「ああ。ポポポのとこのもうまくいってればいいが、あっちのは種族ランクが上のクイーン。しかもあいつまだダンジョンレベルが10にもなってないから、自分のダンジョンの近所でしか戦闘させてなくて育ってないみたいなんだよなあ」
まずDPを稼ぐのが先なので自分自身のレベル上げを行って、他の邪神ダンジョンで稼ぐって張り切っていたけどどうなっているか……。
「我も強くなったぞ。やつらからハイパの情報も集まった。いろいろと残念な話ばかりだが……」
アスカはおっさんと同じく種族レベルの上がりは悪いが、その分以上にスキルレベルの上がりがいい。
GRに相応しい能力を身につけ始めている。
「なら冥府へ行くのも近いか」
「い、いや、まだ心の準備ができておらん。それよりも我が古巣をなんとかするのが先だろう。テリーの仲間も救いたい」
「頼むのだ!」
ふむ。たしかにうちと繋がっている邪神のダンジョンなんていつまでもほってはおけない。
攻めてこないならDPが定期的に入って不労所得ウマー、と油断してるわけにはいかない。
けれど藪をつついて、猛反撃が来るのは今はマズイ。せめてレヴィアがもうちょい回復してからじゃないと。
◇ ◇ ◇
テストのために借りていたゴブリナを返すためにアキラのダンジョンへ再び赴く。
メールではよくやり取りするのだが、直接会うのは1ヶ月ぶりぐらいだろうか。
「よおフーマ、ちょーどいーとこにきたな」
「ちょうどいい? ……ああ、風呂あがりか」
髪も以前より艶やかになったアキラ。肌も吸血鬼のイメージに合わないくらいに血色がいい。これが温泉効果だ、たぶん。
その美少女度が増した吸血姫が浴衣姿で出迎えてくれた。
もちろんこの浴衣はハルコちゃん作のものだ。
おっさんが来ることはなかったがハルコちゃんはアキラと、ついでにその眷属と仲良くなってその服を作りによく遊びにきている。
ちゃんとおっさんに許可を取っているので問題はないだろう。
で、その眷属なんだが。
「どさ」
「ゆさ」
「へばの」
ハルコちゃんと見事にコミュニケーションを取って、アキラに一礼してから部屋を出て行った。
頭の上の大きな耳の間に手拭いをのせて。
「なあフーマ?」
「どうしたアキラ?」
「今のわかっか?」
「なんとなくな。風呂に行くって言ったんだろ」
前世でたまに東北弁の例題として出てきたあの会話を生で聞くことになるとは思わなかった。
「ゴブリンどもが進化して喋れるようになったと思ったら、なんか訛ってるし、オレもだんだんそれがわかるようになってきちまって……」
「ああ、女性がオレって自分のことを言うのはノームにもいたな」
「オレは訛ってなんかいねえ!」
「ハルコちゃんの影響ってでかいんだな。でもあんな進化をしたのはアキラの影響だろ」
アキラのとこのゴブリンも進化していた。
それもゴブリニャともゴブリナとも違う種族に。
「ハルコがあんな耳つけっから、あーなっちまったんだよ」
「だけどイヌミミはアキラに近づきたいからって、アキラの眷属からの申し出だったみたいだぞ」
「オレのはオオカミだっつの!」
「そんなこと言われてもおっさんは耳や尻尾で犬と狼の区別なんてつかん」
アキラの眷属の方は小さいから狼って感じは全くしないで豆柴とかそんな風な小型犬のイメージの獣人のような種族に進化してしまった。
種族名は【コボルデア】。コボルトやコボルドではない。あっちは頭は犬なんだけど、コボルデアはイヌミミの生えた女の子だ。
うん。ゴブリニャの小犬バージョン。
尻尾はフサフサで大きい。モフりたい誘惑に耐えるのが大変だ。
イヌミミカチューシャを装備させてるって聞いた時に冗談半分で「進化したらゴブリワンだ」とかアキラも笑っていた。本当にそうなるとは……。
ミコちゃんの話によると前世の方のゴブリンとコボルドは元々同じ存在だったそうで、ゴブリンがコボルド系に進化しても不思議じゃないらしい。
「ったく。犬っぽくなったせいか匂いにも敏感になって臭くなくなったのは助かる。フーマの温泉のおかげだぜ。オレもあんなに臭かったんじゃないかってちょっと不安になっけどな」
そう。おっさんの温泉のおかげだ。
綺麗にして臭くなくなったことも。
そして……ゴブがコボルデアに進化したことも。
「まさか特殊進化の条件がフーマの温泉だとはねえ」
「おっさんも驚いている」
ここの温泉を湧かす時に張り切りすぎて、妖精の街の大浴場では出さないようにしている妖精の粉を長持ちさせる成分を入れたままにしていたせいかもしれない。
おっさんは妖精神らしいのでそっちの講習も早く受けておけばよかったのだろうかね。
忘れがちだがゴブリンも妖精。
おっさんの温泉の影響を受けるのもある意味当然なんだろう。
「まっ、オレにとってもあの温泉はありがてえからな。ちょっとした効果がついているぐらいは問題ねえよ」
「そりゃよかった。……鯉のぼりが緋鯉になったのもまさか温泉のせいか?」
「どーだろな? 飛んでりゃいいのに無理してオレといっしょに温泉入るから茹だって赤くなったのかもな」
吸血姫の眷属だから【鮮血鯉】なんてそれっぽい種族に進化したんだろ、きっと。たぶんそう。おっさんの温泉のせいではないと思いたい。
けどアキラと一緒に入るってメスなのか?
温泉にいいダシが出てそうなのも気になるな。しかしアキラやコボルデアたちも入った湯を味見したいなんていったら変態扱いを受けてしまうので言いはしない。
「おっとそうだ。それで思い出した。さっきちょうどいーつったのは渡したいのがあんだ。フーマには貰ってばかりだからな」
アキラがアイテムボックスから出したのは大きな亀。アイテムボックスに入っていたんだから死んでいるんだろう。
「スッポン?」
「ああ。最近行ってるダンジョンが沼地のフィールドでな。こいつがけっこう出てくんだぜ」
「へえ。そんなダンジョンもあるんだ」
「面倒なのはこいつよりも電気ウナギや電気ナマズだぜ。コボルデアはちょっと連れていけねえ」
コボルデアは、ってことは鯉は連れてってんのね。進化したみたいだしけっこう強いのか?
まあ、飛べるなら水中の電気も関係ないか。
「こいつを持ってってくれ。ちいと生臭いけど、いい血してんぜ」
「さすが吸血姫。ストレートって。たしか普通はワインか日本酒で割って飲むんだよ」
「そうなのか? けどワインなんてねーし」
そう。鯉の血も同じだったはず。
どっちも前世で飲んだことないけどね。
ああ、だからアキラはスッポンのことを思い出したんだろうか?
「そうだ、アキラが血液以外のも口にできるんならこれで試してみてくれ。うちで造ったワインだ」
「いいのか。なんか要求したみたいになってワリィな。けどありがたく貰っておくぜ」
「おっさんだってスッポンは嬉しいからな。こんな見事なのをありがとう」
元々土産に持ってきて、出すのを忘れていたワインだし。
それにしても巨大なスッポンだ。これでレヴィアに滋養をつけてもらおう。〈複製〉しまくって……おっさんも精をつけておくかな。
効きすぎちゃったらどうしよう?
読んでいただきありがとうございます
たいへん励みになりますので面白かったら
ブックマークや評価、感想をよろしくお願いします
新連載始めています。
そちらもよろしくお願いします。
異世界先生コズミっく 虐げられた出来損ないは最強のロボに変形する!(仮)
https://ncode.syosetu.com/n4201ff/
タイトル迷走中。
おっさんが異世界で変身ヒロイン(巨大ロボ)の教師になる話です。




