120話 神様ですか?
2巻発売中です。
よろしくお願いします。
嫁さんたちがこれ以上暴走しないうちに話題を変えたい。
でもその前に自分のステータスを確認しておくか。
おっさんさ、変な称号が増えてるのを見るのが嫌で、自分のステータスはHP、MP、CP以外はあんまり見ないようにしてたんだよね。スキルのレベルアップは別で表示されるようにしてたし。
「あ、マジで『種族ランク:GR』ってなってる」
「アナタは気づいているものだとばっかり思っていたわ」
そうか。レヴィアは知ってたのか。同じランクだし〈鑑定〉のレベルも高いからちゃんと見えていたんだな。
「だからおっさんでも結婚しようとしていたのか」
「アナタを好きになったのはGRだけではないのよ」
おっさんに抱きしめられたままそう言うレヴィアの目は潤んでいた。ランク目当てに自分を選んでっておっさんが嫌うとでも思っているんだろうか?
「知ってる」
種族ランクなんか関係なくリヴァイアサンは結婚したくてしょうがなかったんだからさ。もちろん言わないけどね。
「それにしてもスクナヒコナが種族ですか。日本神族ではないのですか?」
「GRとかの超上位種族はこの世界ではたった一人しか存在しない種族になるみたいだ」
たしかUR、LR、GRの三つだったかな。
「ボクの種族ランクのLRもそうだよ」
コルノの【小人血赤珊瑚】もこの世界には一人しかいない種族。
おっさんが〈ガラテア〉で本物にした、この世界にはいなかった種族だから当然ではあるのだが。
LRは伝説級。やはり無茶苦茶強いらしい。コルノも小さいのに強いもんな。
GR、LRはダンジョンマスターたちには都市伝説とされている種族ランク。ダンマスの多くはURが最上位と考えているみたい。
他にもGRやLRがいるだろうけど、きっと偽装して正体を隠してるんじゃないのかな?
それ以前に〈鑑定〉スキルのレベルがかなり高くないと、この種族ランクは鑑定できないしさ。
んで、URは究極級。ダンジョンマスターの中にもいることが知られている種族ランクだ。アキラの【ヴァンパイアエンプレス】もこれ。
最近会ってないけどアキラも強くなってるだろうな。
「そういうのを種族と言っていいんですか?」
「さあ。決めてるのはおっさんじゃなくて神様だから」
「だからあなたも神でしょう?」
「とんでもねえ、おっさんは神様だよ」
はっ!
しまった、つい……。
でもさ、おっさん世代としてはこのネタは絶対に外せないよね。
何気にちょっと嬉しかったりするのも確かだ!
「種族名等の鑑定内容はそれを決めている専門の機関があるわ。以前はアテナもその一人だったのだけれど」
アテナは十二柱としてダンマスと戦って敗れたんだっけ。
「ボク、アテナは嫌い」
コルノの母親であるメデューサはアテナに呪われて醜い姿にされちゃったんだもんな。さらにそれだけでは飽き足らずその命を奪う手助けや、その首を盾にくっつけるというあまりにも惨い仕打ち。美人だったメデューサに嫉妬したとしか思えないね。
「アテナがアラクネと織物勝負をした時のやり口はとても公正とは言えない。彼女が鑑定内容を決めていたら身贔屓が酷いと思う」
ミコちゃんもですか。
アラクネとの織物勝負って、出来ではアラクネのに負けてて題材にイチャモンつけて呪ったってやつだっけ。
うん。アテナ駄目だな。たぶんどっかのダンマスが眷属にしてるんだろうけど、おっさんならいらない。
「アテナなんてどうでもいいわ。ミコ、フーマのスクナヒコナとはどんな神なのかしら?」
「スクナヒコナはカミムスビの子である小さな神様。オオクニヌシの義兄弟として彼の国造りを手伝い、多くの山や丘を創り命名。人間に粟や稲をもたらし、禁厭や医療など知識にも優れていました。医薬にも詳しくその一環でしょうか酒の神でもあります。オオクニヌシが病に倒れた時は温泉で治したことから温泉の神もやってます。さらには石の神ともされていますね」
「……おっさんのスキルに当てはまるな」
酒と温泉の神様だったのか。
けど妖精神ってのはどっからきた?
「スクナヒコナは常世の国へ渡ってしまい、その後のオオクニヌシはオオモノヌシという神の助けを得たとも、一柱でがんばったともいわれます。結局オオクニヌシは高天原の神に脅されて国譲りすることになります。この時スクナヒコナがいたらどうしたかは興味深いところです」
「常世の国? ティル・ナ・ノーグは常若の国だったよね」
「常世の国は海の彼方にある理想郷です。スクナヒコナは粟に弾かれて飛んで渡ったという話もありますから、きっと別の惑星です。スクナヒコナが乗っていたというアメノカガミノフネは宇宙船とみて間違いないでしょう!」
どうしてもそっちに持っていきたいわけね。まったくもう。
けど理想郷か。なんかいいな。
「ありがとう。宇宙人かはともかく、どんな神なのかはだいたいわかった気がする。オオクニヌシのことはスサノオの娘婿で結婚するのに苦労した、ってのしか知らなかったんだよ」
「それでも日本人ですか」
「すまん」
国譲りしたってのは、がんばって形になってきた仕事を別のやつが引き継ぐことになってオイシイとこだけ持ってかれるって感じがして親近感がわくけどさ。
「スクナヒコナがどの星の宇宙人かはっきりさせるチャンスなのに」
宇宙人なのは決定ですか。そうですか。
……【エイリアン】なんて種族、いないだろうな?
けど寄生するモンスターとは何度も遭遇してるから似たようなのがいるかもしれん。対策を考えた方がいいか。
「あれ? 『GP』なんてのが増えてるな」
ステータスを見ていたらそんな数値が増えていた。
グランプリ?
二文字能力値なのに最大値がない。HPやMPみたいな能力値と違って、DPのようなポイントなんだろうか?
「それはゴッドポイント。信者の感謝の祈りが数値になったものよ」
「GPですか。私のはゼロです」
「この世界に生まれたばかりの神に信者はいないでしょう」
「なるほど。それもそうですね」
おっさんのGPは四桁貯まってる。これが妖精たちの感謝なんだろうか?
多いのか少ないのかわからんな。
「GPってなにかに使えるのか?」
「DPのように消費することで値に応じた神の奇跡が起こせるわ」
「神の奇跡……」
それを奇跡と言っていいのだろうか。
ある意味天命なんだろうけど。
「ダンジョンマスターのDPのシステムはGPを元に創られたといわれているの」
「ふーん。……ねえ、その奇跡でレヴィアちゃんの結婚相手を探すことはできなかったの?」
「それは無理だったわ。私は恋愛神ではないのだから」
奇跡も万能じゃないのね。
なにができるかリストがほしいとこだ。
恋愛神か。ツクシちゃんはエロスの勇者だったけど。
ん? どうしたロディ、またメールか?
「猫?」
「こいつはロディ。おっさんのメールペットの付喪神だよ」
突如出現した黒い猫に驚くミコちゃん。
ロディのことを解説しながらメールのタイトルを見る。レヴィアを抱きしめたままなので受け取ることができないのだ。
「なんだ、また〔重要〕か。ロディ、これはゴミ箱に入れておいて……駄目? ちゃんと見ろって……そうか」
ゴミ箱行きの指示に首を横にふって拒否するロディ。見なきゃいけないかと確認すると頷いた。本当に大事な案件のようだ。
どれどれ。〔初神者講習のお知らせ〕……そんなのあるのか。あとでよく読んでおくか。
GPの交換リストとかもらえるといいな。
「かわいい付喪神ですね。モフりたい」
「猫なら眷属にもいるからあとで紹介するよ」
「本当ですか!」
今にもロディに飛び掛りそうなミコちゃん。オカルトだけじゃなくて大の猫好きだった。なのに大黒天の使いはネズミだから嘆いていたなあ。
「……んっ、恋愛成就はワリとポピュラーな権能だと思いますが、たしかにリヴァイアサンには相応しくなさそうですね」
「ふん。そのおかげでフーマと結婚できたのよ。問題ないわ」
「ねーっ」
コルノもおっさんたちに密着してレヴィアをなでている。
「あの、コルノさんはどういう方なのですか? 物凄い強力な呪いの力を感じるのですけど……」
「血赤珊瑚って言ったよね。ボクはメデューサの娘なんだよ」
「クリュサオルとペガサスの妹なんだ」
「もしかしてメデューサの血から生まれたのですか? そのような方がいたとは……たいへん興味深いですね!!」
眼鏡をキラーンとさせるだけでなく、ふんすと鼻息も荒いミコちゃん。
自分の知らないオカルトな存在に興奮しているようだ。
「ミコちゃん、コルノの呪いって解けそう?」
フォーチュンブラックの浄化なら呪いだけを上手く解除できるかもしれない。
アニメでもとり憑かれた人を無傷で元に戻していたし。打ち出の小槌でぴこっ、ならぬ、ドゴォッと殴り飛ばす浄化技でさ。
「かなり強い呪いですので、難しいかもしれません」
「そうか」
「フーマ、ボクの呪いを解きたかったの? 眼帯があれば制御できるし、石化も便利だよ」
「コルノの素顔も見たいんだ。何度かチャレンジしたじゃないか。〈石化耐性〉のレベルを上げるために挑戦しているわけじゃないぞ」
眼帯なしの顔も見たいと思うのは当然だ。フィギュアの時でさえあんなに良かったのだから本物でみたい。
今までは失敗してばかりでコルノを泣かすことになってるけどさ。
「呪いの原因をなんとかする方が確実ではないかと」
「……アテナがどこにいるか知らない」
「アテナだったら、ボクの呪いよりもお母さんの首を取り戻したいよ」
メデューサの首はアイギスにくっ付けられているんだっけ。かなり強力そうなアイテムだから、もしこっちにもあったとしてもアテナの敗戦時にダンマスに奪われてるな、きっと。
「あ、伯母さんたちの呪いを解けるんならアテナを探すのもいいかも?」
「伯母……ゴルゴーン三姉妹のステンノーとエウリュアレーですね!」
メデューサの姉二人か。この世界にもいるんだろうか。
もしいたとして、嫁さんの親戚に会うことになるのはめっちゃ緊張するんですが。
姪っ子との結婚は認めない、って言われたらどうしよう?
〔重要〕メール、感想でのツッコミが多かったのでこんな感じに。




