121話 やきもち
2巻発売中です。
よろしくお願いします。
5/28 モチネタを補足
ミコちゃんを眷属のみんなに紹介するのはコルノにまかせて、俺のGRのことを詳しく知るためにメールを書いた。
相手はヘスティアだ。メールを寄越せとよく要求してくるので構わないだろう。当然、ロディに運んでもらう。じゃないとあの女神文句言うし。
「囲炉裏に火をつけておかないとな」
リビングのこの囲炉裏はおっさんの趣味で創ったもの。
魚の塩焼きとか串に刺したやつができるかなって思ったけど、小人サイズに相応しい小さい魚がまだ捕まえられていない。レヴィアに頼んでもいいんだけど、どうせなら自分で獲った魚でやってみたいんだよね。
「まだこんな時間なのにヘスティアを呼ぶの?」
「仕事中で忙しかったらメールで返事をくれると思うよ」
そんなことを言ってる間に囲炉裏の炎が激しく燃え上がっておっぱいが、いやヘスティアが現れた。囲炉裏が小人用なのでヘスティアも小人サイズである。
「呼ばれて飛び出てお姉さん参上ですー」
それは神じゃなくて大魔王だろ。
「ずいぶんと早いけど仕事、暇だったのか?」
「休憩中ですよー」
「サボりね」
レヴィアがすぐにそう判断した。おっさんもそんな気がするけど、もちろん口には出さない。
「なに言ってるんですか。ここに来たのもダンジョンマスターをサポートする業務の一環じゃないですか。あ、これお土産です。さっそく焼きましょー」
「これは……餅?」
「串で焼くのも美味しいんですよー。ベーコンを巻くのがおススメですー」
ヘスティアは人間サイズの大きな切り餅を何個かくれた。餅か。餅米もあるのかな。やっぱり冥府産なのかね。
はあ、とため息をつきながらも餅を小さく切って串にさしていく付き合いのいいレヴィア。
これはどう考えても仕事や休憩のレベルじゃない気がするんですが。
「うちでも炉端焼きやりたいんですけどねー」
「ここは居酒屋ではないのだけど」
そう言いながらも串を囲炉裏の炭に刺していく嫁。
ベーコンは巻いてくれないのか。まあ、それやったらビールほしくなりそうだもんなあ。
「居酒屋の炉端焼きは網焼きじゃないかな?」
「楽しそうですよねー。それで、やっと御自分のランクに気づかれたそうですけどー」
「ああ。おっさんGRなんて気づかなかったよ。〔初神者講習のお知らせ〕なんてもらったけど出た方がいいのか?」
「それは信者を獲得した方に向けた講習ですねー。出た方がいいですよー」
「おっさんさ、本当に神になっちゃったの? なにをすればいいんだ?」
これがわからない。妖精たちには神様って呼ばれているけど、それだけじゃまずいよな?
「それは講習会に出ればわかるとは思いますがー。そうですね。好きにすればいいんですよー」
「好きに?」
「ええ。主神や他の神たちの気に食わないことをすれば揉め事になりますが、そうでなければ好き勝手しちゃってください。神なんですからー」
そんなんでいいんだろうか。
「お役目とかはいいのか?」
「力が高まってくればお姉さんやレヴィアさんのように大きな仕事を任されることもありますが、初神者のうちはないですよー」
「私はそろそろ寿退職すると申請しているのだけど」
不機嫌そうに言いながらレヴィアは餅を刺した串を回し、焼けた面を裏返す。
もう、いい匂いがしてきた。これ、コルノの分も残しておかないと怒るだろうなあ。
「引継ぎの手続き、どの部署も面倒がってやりたがらないんですよー。レヴィアさん怖いから。あ、味付けは醤油がいいですねー」
「よく言うわね。どこが怖がっているのよ」
「私とレヴィアさんは神友ですのでー」
また再びのため息の後、やれやれと醤油を出すレヴィア。口元がニヤついているので友達発言が嬉しかったみたいだね。
「あのさ、おっさんのスクナの能力のことも聞きたかったんだけど……」
「なんですか?」
串餅に視線を向けたままのヘスティア。
「スクナってDP消費が少ないよね。あれって強すぎる特性じゃない?」
「GR種族ならそれぐらいあってもおかしくないですよー。もっとも100分の1なんて破格なのはスクナだけですけど。長ーい間忘れられていた種族だったのでバランス調整がされなかったんでしょうねー」
「そう、だったんだ」
……え、なに?
DP100分の1ってのはバグじゃなかったの?
今まで隠そうとしていたのは全くの無駄だったのか……。
それならもうリヴァイアサンも眷属にしちゃおうかな。でもそうするとレベル10超えは確実なんだよなあ。
「ヘスティアはアテナの居場所を知ってるかしら?」
「知ってますけど教えられませんよー。ダンジョンマスターのプライバシーに関しては秘密ですから」
「やっぱり眷属にされてるのか。やっかいだな」
アテナの契約者が話のわかる相手だったらいいんだけど。
それが誰だか判明させるのが先か。
ダンジョンマスターの情報収集のためにも、邪神のダンジョンに銭湯を創るしかないか。ダンジョンレベル10を超えるのも仕方なさそうだ。
「そろそろいい焼き加減ですよー」
「まったく。ホント、なにしにきたのかしらね?」
「神友との憩いの時間に決まってるじゃないですかー」
マイペースな女神様だ。
うちにくる時はいつもなにか食ってる気がする。
レヴィアから焼けた串に醤油をつけてもらって受け取るヘスティア。
「うん。美味しいです。あの子にも食べさせたいですねー」
「こないだも言ってたけど、あの子ってアルテミス?」
「そうですよ。てっきりもう起こしていると思ったのに」
もぐもぐと餅を頬張りながら抗議してきた。
ただし。
「あーっ! フーマさんのには海苔を巻いてるじゃないですか! ずるいですー!!」
餅のトッピングに対する抗議の方が大きかったが。
うん。この女神、異世界だしそもそもコルノはゲームキャラなんだけど、彼女と親戚ってのが妙に納得できてしまう。
「アルテミスもこうなのかな?」
「あの子はもっと豪快ですよー」
狩猟の女神だもんなあ。丸焼きとか好きそう。
リヴァイアサンを眷属にして、その時に入ったDPで一気にダンジョンを強化改造して、ディアナも復活させちゃうか。
「復活したらその時はお祝いにいいお肉とお酒持ってきますねー」
「飲む口実が欲しいだけじゃない」
「そうとも言いますねー」
「言うんかい」
ううむ。いいお肉ってなんの肉なんだろ?
お酒もどんなのか気になる。神の飲むお酒かー。
……って俺、酒の神でもあるんだよね。もしかしたらメチャクチャ美味いお酒を造れたりするんだろうか?
好き勝手やっていいみたいだし、バグじゃないってお墨付きももらっちゃったから自重するのはちょっと止めよっかな。
「はいアナタ」
「ありがと」
猫舌の俺のためにフウフウと冷ました串をくれるレヴィアがちょっと照れくさい。
「うん、美味いな」
醤油と海苔の香りが食欲をそそる。焼き加減も最高だ。嫉妬のリヴァイアサンだけに焼き餅が得意と。モチろん言わないよ。
「ふふ。まさかレヴィアさんに惚気られる日がこようとは。今日はもう飲んじゃいますよー」
「いやあんた仕事中でしょ!?」
巨大な一升瓶を取り出したヘスティアに思わずツッコむ。
だが。
「当然、私たちにも振舞うのよね、そのお酒。それなら運営に通報するのはやめておくわ」
うちの奥さんもお酒好きなの忘れていたぜ。
これはもう、眷属たちも呼んでパーッとやるしかないか。
ここはあのロボ生命体のナレーションっぽく言うことにしよう。
さあ、宴会だ!




