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97話 GO! GO! GO!

すみません、遅れてしまいました。


書籍版、発売中です。

こちらともども、よろしくお願いします。

 ロボゴーレムの完成の翌日。

 第2層で眷属フェアリーの訓練も兼ねたパートナーゴーレムのお披露目が行われていた。


「ゴーオーマル、セット、アーップ!」


 ショタフェアリーであるカルコのパートナーゴーレムが彼の指示によってジャンプして空中で華麗に一回転しながら着地。

 見事だけどリングとは違ってコーナーもロープもないただの畑である。そんな掛け声で移動させないでほしい。

 それと名前。愛着がわくように名前はそれぞれ担当のフェアリーにつけてもらった。俺が考えるのも面倒だったってのもあったし。

 たしかにパートナーゴーレムは量産型のプチホワイトストーンゴーレムのカスタムタイプで白いし、大きさも同じぐらいのはずだけどさ、思いっきりまんまじゃないか。


「ゴーディ」


 チェトはショタフェアリーの中では落ち着いてる方なせいか、パートナーゴーレムも地味に畑に移動する。

 眷属フェアリーたちがどのゴーレムを使うか話し合った結果、少年フェアリーが使うことになったパートナーゴーレムに性能差はないが、たったの一日で癖がついてきたというのだろうか、使い手によって動きが結構違ってきている気がするのが面白い。


 リニアの「始め!」との合図でフェアリーから指示を受けた二体のゴーレムが芋掘りを始める。

 その動きに大きな歓声が上がった。見学の一般妖精たちである。「カッコイイ」「スゴイ」「自分もほしい」等の声がここまで聞こえてくる。

 こんなに人気なら、もう少しゴーレムたちの動きがよくなったら録画してダンチューブにアップしてもいいかもしれない。巨大芋を掘るリモコンゴーレムが受けるかはわからないけど。

 視聴数稼ごうとしたら、それこそプロレスでもさせた方がいいのかな?

 ゴーレム操作の訓練になるかもしれないからリング作って試してみるのもいいかもしれない。コーナーロープに向いた糸をリオとテリーに作ってもらうか。



「なんであんな名前にしたのかね?」


「ゴータローの印象が強いんじゃないかな?」


 残るショタフェアリー、ルカンのパートナーゴーレムの名はゴーキンだ。

 みんなゴーで始まっている。


「レッドが拗ねないか?」


「ダイジョーブだよ。ほら、乗用ゴーレムが色関係の名前だから」


 ロボゴーレムの名前は悩んだ。

 まず人間として偽装する設定を考えて、その名前を桃幻卿とした。色は別として装飾が凄いので偉そうなネーミングでと考えた結果である。もちろん桃源郷にもかけた名前だ。

 なのでゴーレムの名前はトーゲンである。桃が入っているから色関係の名前と言えないこともないか。


「あいつもこれぐらい動ければいいんだけどな」


「レベルアップすればきっとなんとかなるよ」


 トーゲンは大きく、鎧も厚みのある頑丈なゴーレムなのだが大きな欠点がすぐに判明した。

 遅いのだ。鎧として使っている金属が多すぎて重いせいで動きが遅すぎる。

 種族ランクは(レア)で量産型ゴーレムよりも上なのに、それより圧倒的に遅い。ステータスを確認したら素早さ(AGI)がたったの4だったという事実。1レベルの成人の半分以下のスピードである。

 遅いだけなら欠点にはなるがゴーレムのイメージにも合うので我慢できないこともないが、それだけではなくSTRも低い。力もないのだ。たぶん、重い身体を動かすので精一杯なのだろう。

 これではいくらなんでも人里にはいけない。早く潜入作戦を行いたいのだが。


 ロボゴーレムの骨格であるエアーゴーレム部分の気圧をもっと高めにすれば動きはよくなりそうなんだけど、それでは操縦席の衝撃緩和が犠牲になってしまうのでどうしたもんかと頭を痛めている。

 コルノの言うようにレベルアップが一番の解決策なんだろうが、あの遅さではそのための経験値を稼ぐのも大変そうだ。


「ゴーレムはアイテムボックスに入るから、未熟者のダンジョンにも運べるのがせめてもの救いか」


「変だよね。ゴータローとレッドはアイテムボックスに入れられないのに。眷属にしたからなのかな?」


「意思を持つ物はアイテムボックスには入れづらいと聞いたことがあるわ」


「なるほど。そうなるとゴーレムはもしかしたらアイテム扱いになるのか?」


 アイテムボックスにはゴータローとレッド、それにショタフェアリーで試したが他の眷属も入れられなかった。

 ゴーレムは入れられる。初めてリニアを見た時に、量産型の壊れた脚をアイテムボックスに入れて運んだけどその時に気づくべきだった。未熟者のダンジョンでゴーレムを鍛えることができたかも知れないのに。


 ……量産型ゴーレムだけじゃゴブリンと戦うのはキツイかな?

 ロボゴーレムなら動きが遅くて力も弱いけど、防御力だけはやたらにあるからゴブリンの一、二匹なら殴られてても問題なく鍛えることができそうだ。

 レベルアップの前に反復横跳びをさせまくって<反復横跳び>スキルを上げて、<機敏>スキルを手に入れさせた方がよさそうだな。

 問題は種族ランクが低いから、スキルの入手やスキルレベルのアップが遅いってことか。ゴブリンを倒すこと自体は俺が削って動けなくしたゴブのトドメをさせばなんとかなる……はず。



 ◇



 観客から再び歓声が沸き上がる。

 今度はゴーレムたちによって芋が姿を現したのだ。


「でかいな」


「そうだねー」


 まるでスイカのようなジャガイモだ。まあ、小さな俺たちから見ればで、実際には少し大きなジャガイモなんだけどさ。

 ジャガイモは俺が前世から持ちこんだメークイン以外にも、妖精たちが二度芋と呼んでいるこの島の芋も育ててみた。前世から持ち込んだ細長いメークインと比べると丸っこいので、どちらかはすぐにわかる。植える前に試食もしてみたが味も男爵よりだった。


「葉が大きいほど……出来がよくなるですじゃ」


「栄養が地下にも行きわたるってことだな」


 バイカンの解説に頷く。ジャガイモの地上部分はどれも大きく育ち、葉もまた大きく生い茂っているので、芋も大きく数も多く育っているようだ。


「ほれ、まだ埋まっておる。ちゃんと掘らんか!」


「は、はい」


 茎を持って引っ張ったらそのまま全ての芋がくっついて収穫できるなんてことはなく、それどころか大きく育ったためにほとんどが埋まったままだ。大きな芋を畑から掘り出すのは意外と重労働でその数も多いので大変である。


 なお、指導しているのは【ポレヴィーク】。畑の妖精という専門職(プロ)で、トレントたちとともにこの第2層の農業を監督している。

 ポレヴィークは草の生えた泥が人型になったようなまさに畑の擬人化といった外見で、身体の大きさを自由に変えられるために本来の大きさは忘れてしまったらしい。

 畑の妖精というのどかなイメージとは裏腹に、畑仕事をサボるやつは手に持った鎌で切りつけたりする攻撃的な妖精でもある。田んぼを返せって言うだけの泥田坊よりも怖いな。


「みんなも始めてくれ」


 わあっと声を上げながら妖精たちも畑に入って芋掘りを始めた。

 あっという間にみんな泥だらけである。こりゃ今日はバーンニクも忙しいだろうな。


「楽しそうだねー」


「ほとんどが途中で飽きてポレヴィークに怒られそうだけどな」


 妖精たちの多くは飽きっぽい。真面目なノームは日光が駄目なので今はいないし。残った分は夜に自分たちも芋掘りするって言ってたけど。

 たくさん取れたらアキラとエージンにもお裾分けしよう。……吸血鬼って芋食うのかな?



「女の子たちのゴーレムのお披露目はどうしようか?」


 眷属フェアリーのうち、フェアリー少女たちのパートナーゴーレムは結局、人型ではなく動物型となった。犬型、猫型、蛇型である。

 猫はアシュラやニャンシーの動きをサンプルにできたが、犬と蛇の動きはコルノがチェックしている。

 犬派を自称するだけあってコルノのチェックは厳しいようだ。


「レースでもさせてみるか?」


「それも面白そうだね。騎乗を条件にすれば、リニアちゃんのゴーレムもいっしょにお披露目できそう!」


 リニアの義手義足だったゴーレム、改装してたけどいったいどんな仕上がりになったかな?

 コルノが完成するまで秘密って見せてくれないんで知らないんだよ。

 おっさんとしては黒い巨大馬ゴーレムを想像して期待してるんだけどさ。



ジャガイモはメークインと男爵のどっちと感想にあったのでこんな形に。



ショタフェアリーの名前は悩んだあげく、虫からとってみました。

チェトはコガネムシのイタリア語チェトーニャ。

ルカンはクワガタのスペイン語ルカニド。

カルコはミノムシのスペイン語カルコーマからです。


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