96話 ロボゴーレム
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こちらともども、よろしくお願いします。
乗用人間サイズゴーレム、長いから名前考えないと。とりあえずロボゴーレムでいいか。
ロボゴーレムの装甲、つまり鎧に擬態した部分は鉄製である。コルノの〈ゴーレム〉スキルのレベルが上がったため、今までのストーンゴーレムよりも上級のゴーレムが造れるようになったのだ。
材料は“未熟者のダンジョン”の第5層の階層ボスである【ゴブリンジェネラル】と第7層階層ボスの【ゴブリン・キング】が装備していた鎧だ。どちらもゴブリン族としては大型でなかなかに強い。今のおっさんなら楽勝だけどさ。
鎧を加工したのはノームではない。ノームは鉱石フェチというか、コレクターというか……とにかく、鉱物を渡しても加工してくれないので別の妖精に頼むことになった。
〈ガラテア〉のクーリングタイムが済んでいればフィギュアのドワーフを本物にして任せられるのにね。まあ、次回は別のフィギュアの予定だからその次かな。
今回、鎧を加工してくれた妖精は【コレド】だ。毛むくじゃらの妖精で、しわだらけの黒い顔らしいのだが、ブラウニーと同じく顔まで毛深いので確認したことはない。赤い「ですぞ」の黒くて小さいやつみたいな外見である。
第2層のフィールドダンジョンの住人になったコレドたちは、踊りが大好きで毎晩の様に踊っていたのだが、ある日俺にこのダンジョンで使う貨幣を造りたいと言ってきた。
それまでは知らなかったが、コレドは妖精たちの使う貨幣を造ることもあるぐらい鍛冶を得意としているそうだ。
妖精島では金属が不足気味なので貝殻やモンスター素材で貨幣を造っていたみたいだが、俺が金属を入手できると知って金属の貨幣を造りたくなったらしい。
そういえば妖精島に金属があまりないのは、よく考えたらレッドに使ったあのモグラモンスターのせいかもしれない。あの爪とドリルは金属色だったし、未だ欠けることもない程に硬度も高い。
元々妖精島に生息していたナマモゲラが鉱石を体内に取り込むために妖精島の鉱脈を食い尽くしてしまったんじゃないだろうか?
素人考えなので当たっているかはわからないけど。
あのドリルと爪はまだまだ欲しいのでまた出てきてほしい。
「コレドもなかなか技術あるよねー。こんなに派手な色をつけてくれたもん」
「派手すぎだろ……」
どうやって着色したかは知らないがロボゴーレムの鉄製の装甲が蛍光色ばりの鮮やか過ぎるピンクの頭と手足と、まるで血のような黒ずんだ赤の胴体に塗装されている。
「色の変更はできないかな?」
「え? おなかまでピンクにするの?」
「いや、ボディがピンクなのはトゥースって言うやつだけでいいから!」
全身ピンクだと別のになるか……。
どうやらコルノはピンクから変える気はないらしい。血赤珊瑚だからって桃色珊瑚に憧れているとかあるんだろうか?
「装飾も綺麗だよねー。フーマが最初言ってたみたいにおなかにライオンもよかったかもね」
ロボゴーレムに乗り込み、中から指示を出すとして一番の問題はどうやって外部の状況を知るか、である。外が見えないことには的確な指示も出せない。
そこで操縦席を設置する胴体部にライオンヘッドの意匠をつけ、その目を覗き穴にしようというアイディアを俺が出したのだ。まあ、いろいろテストした結果、穴からおっさんの顔も見えそう、ということで没となった案である。
「でもやっぱり呪われてる感を出すためにドクロにしてよかったよね! 雰囲気出てる!」
ロボゴーレムの胸にはドクロの浮き彫り。血色の胸部に浮かぶ純白のドクロ。
たしかに呪いのアイテムっぽい。
装飾もコレドたちによるものだ。鎧の出来次第で貨幣製造の許可と、金属を渡す量を決めると伝えたせいか、かなりの力作となっている模様。
「操縦席はどうなった?」
「ふふ。けっこうスゴイよぉ!」
ドヤ顔のコルノ。彼女の指示によってロボゴーレムの胴体部がスライドして搭乗口が開く。やっぱりドクロの口からなのか。
屈んだロボゴーレムの手の上に乗って、立って入るには少し狭い搭乗口へと移動する。なぜかコルノとレヴィアも一緒なので、ロボゴーレムの大きな掌の上とはいえ少し狭く二人とも俺に密着している。
……嫁さん二人の感触と香りに誘惑されそうになるが我慢だ。今は仕事中と耐えるしかない。
「……なんで座席が三つもあるんだ?」
操縦席となるロボゴーレムの胴体内はそこそこ大きいが、三つの座席が横に並んで設置されていた。
おかしい。おっさんが開発に参加していた時は座席は一つだけだったはずなのに。
「ボクとレヴィアちゃんの席に決まってるじゃない」
「当然でしょう」
「アッハイ」
ドクロの奥の操縦席に三人か。
いや、あれとは男女の数が逆だけどさ。そのうち椅子がソファにされそうな……。
俺が真ん中で左右にコルノとレヴィアという形で座席につく。三人も座るとさすがに狭い。
「スタンバイ」
コルノの指示で搭乗口の扉が閉まると、操縦席は真っ暗になった。外からの光は完全に入ってこない。密閉性はかなり高いようだ。
暗くなったのはほんの数秒で、前面の壁が光を放つ。外の様子を知るための手段として俺が協力したもの、前世のタブレット。
7インチサイズのこのタブレットにはカメラとマイク、イヤホンが接続されており、カメラとマイクはロボゴーレムの頭部に、イヤホンはタブレットと同じく操縦席にセットされている。
「うん。ちゃんと外の様子が見えるな」
「みんな乗っちゃったから確かめられないけど、音も聞こえるんだよ」
このシステムの開発には俺も携わっているから知ってるって。ロボゴーレムの体内はゆるめのエアーウォールで満たされており、操縦席の衝撃を緩和するようになっている。緩衝材を何重にも巻いたような感じだ。外の音も入りにくくなってしまっているので、このようにする必要があったのだ。
眷属フェアリーたちはゴーレム操作の訓練をしに他の部屋に行っちゃってるけど、ちょっと待ってもらうんだったなあ。
「ホームシアターみたいね」
おっさんもそう思ったのでレヴィアの意見に頷きそうになってしまった。
7インチのタブレットとはいえ、俺たちからすれば六倍で42インチサイズの大型ディスプレイだ。映画でも見ればそれなりに迫力は出るだろう。椅子の肘掛けにドリンクホルダーをセットしてもらいたくなるね。
もう少し小さいサイズの画面のほうがよかったかもしれない。
でも、前世のおっさんはスマホは持ってなかったんだよ。引きこもり気味だったからね、外に持ち歩くそんなデバイスはいらなかった。ガラケーとタブレットがあればそれで十分だったんだよ。
「ゴーレム、右向いて。……うん。次は左」
ロボゴーレムの頭部、ピンクの兜の奥に設置したWEBカメラによって視界は確保されたようだ。音の方もあとで試そう。
これのために配線やアプリの調整をしてたら〈電子工作〉のスキルも入手していた。なんとなく心躍るスキルである。
「みんなベルトしたね? それじゃゆっくり立ち上がって」
屈んだままだったロボゴーレムが立つのに合わせて操縦席にも動きが伝わる。思ったほど揺れないな。エアーウォールがいい仕事をしてるのかもしれない。
エアーウォールは実はロボゴーレムの身体を構成する一部である。ロボゴーレムの正体はエアーゴーレムが鎧を着込んだ状態だったりする。
ロボゴーレムはその大きさもあるが、こんな構造なのでMPの消耗が多い。タブレット周りも電気ではなくMPで動いているみたいだし。
開発中にそのことがわかってから、前世のおっさんが持っていたノートパソコンやゲーム機等がゴーレム化している。
MPを譲渡しなければいけないが電源不要になったし、なによりもゴーレム化したことで壊れても直るようになったのが嬉しい。そろそろあの都市伝説のタイマーが働くんじゃないかって心配だったゲーム機もあったからね。
「ボクたちを固定するベルトいらなかったかな?」
「いや、激しい動きをしたら必要だろう。歩いてみてくれ」
ゆっくりと歩き出すロボゴーレム。今度はそれなりに揺れるな。
それと鎧がガシャガシャ鳴ってる音が直接ではなく、スピーカー代わりに設置したイヤホンから聞こえてきた。走ったらけっこう煩くなるかもしれない。
「どう? この揺れに耐えられそう?」
「これぐらいなら余裕だよ。アキラに乗った時の方がしんどかったし」
「アキラ?」
「アシュラじゃなくて?」
うわ、左右からなんか強い視線を感じるんですが。男の名前っぽいのにアキラが女の子ってのがばれた?
「ダンマス仲間だよ。アキラは普通のサイズだから頭の上に乗せてもらったことがある。その時は大変だった」
「ふーん」
「いきなり駆け出すしさ、すごい揺れておっさんヘロヘロになっちゃったよ」
「そうなの?」
アキラ元気かな。たまにメールやチャットで連絡した時は邪神のダンジョン攻めまくってるみたいだけど。
おっさんさ、ハーレムなんて乗り気じゃないみたいなことを言っちゃったから、アキラにはまだ結婚したことを黙っているんだよね。そろそろ教えた方がいいんだろうか? 結婚式を本当にやるんだったら呼んでもいいかもしれないし。
現在のスキルレベル
〈電子工作LV2〉
コレドはこぶとりじいさんみたいな話がある妖精




