48、紅茶の偉大さ
「魔物に襲われて!?」
お茶を淹れて貰って全員が席に着いたら俺がレーナに出会った経緯を話した。
シスターはまさしく愕然、と言うのが一番正しいような表情を浮かべる。
「それは、危ないところを助けて頂きありがとうございました」
「いや、こっちも偶然居合わせただけだ。気にしなくても良い」
「ありがとうございます。・・・・・・それよりもレーナ! どうして町の外に出ていたのですか!」
シスターから激しい叱咤が飛んだ瞬間、話が始まったと同時に必死に潜伏していたレーナが飛び上がる。
その目は泳ぎまくっていて時折こちらに助けを求めるような視線を向ける。
だが、今回に関してはどんな理由が有ろうと怒られるのは当たり前だ。
ちゃんと怒られてこい。
・・・・・・あ、この紅茶っぽいの美味しい。
「しかも魔物が凶暴化しているときに!」
「あの、その」
「町の外が危ないのは前から何回も言っていたでしょう!」
「うっ、だって、えぐっ」
ついには泣き出してしまった。
まあ、そろそろ助け船を出してやるか。
「まあまあ、それくらいにして」
「すみません、ですがこれに関してははっきりとさせて下さい」
ごめん、レーナ、助け船が一瞬で轟沈した。
「うぅ、シスターにこれをひぐっ、あげたぐて」
「この花は、この辺りには咲いていないはず。・・・・・・まさかこれを摘みに?」
「いつもお世話になってるから、何かお礼がしたかったそうだ」
「・・・・・・まったく、貴女という子は」
そう言ってレーナを抱きしめ、くしゃくしゃの泣き顔の頬を撫でた。
そうして優しくレーナに語り掛ける。
「シス、ター?」
「お礼なんて要りませんよ。私はあなた達が大好きだから、元気で居てくれることが私にとっては一番嬉しいことなんですから」
「!」
「ですが、この花も私はとっても嬉しいですよ。ですが、もう二度とこんな危ない真似をしないでくださいね」
「ごめん、なさい! ごめんなざいシズダー!」
泣きじゃくるレーナをシスターは抱きしめた。
優しく、それでいて強く。
「・・・・・・なあ、俺達空気だな」
「あんまりそういうことは口にするものじゃありません」
「ごめんなさい、お客様の目の前で」
レーナが泣き疲れて眠ったのを確認したシスターは改めて俺達の前に座った。
だがその目は未だに少し赤い。
「いえ、構いませんよ」
「そしてアラタさん、改めてあの子を助けて貰って頂きありがとうございました」
「いや、本当に偶々通りかかっただけの事だからな」
「助けて頂いた事には変わりありませんよ。・・・・・・そう言えば、何故あんな場所に居られたのですか? 町から離れると火山しか有りませんのに」
「依頼でな」
「依頼、と言うことはお二人は冒険者を?」
「はい。とは言っても私達はまだまだ駆け出しですが」
「そうなのですか・・・・・・失礼ですがアラタさんは少し疲れてるような、大丈夫でしょうか?」
「ええ、まあ・・・・・・少し色々有りましてね」
そう、色々だ。
出来れば記憶の彼方に埋めて走り去りたい位の。
「もしかして魔力切れでしょうか?」
「・・・・・・何分俺は魔力が少なくてな」
うん、そうだ。そう言うことにしよう。
ほらだって一応魔法使ったし?
この体だと魔力が少なくなるし?
「それならば、ちょうど良いものが有るのですよ!」
そう言ってキッチンへと走り去り、戻ってきたときにはその手にクッキーの様なものが入った皿を持ち帰ってきた。
「それは?」
「これは魔力切れに良く効く薬草をふんだんに使った物です。良かったら召し上がってください」
「へえ、なら頂こうかな。カコは」
「私は良いよ!」
「お、おう、そうか?」
クッキーを一つ手に取ってみる。
どこからどう見ても普通のクッキーだ。
「じゃあ、いただきます」
っ! こ、これは!?
口にしたとたんに猛烈な勢いで広がっていく独特の苦味!
しかもそれだけには収まらず、いざ口の中を制覇せんと暴れまわる。
つまり、
めちゃくちゃ苦ぇ!
何これ!? この世のものとは思えないほど苦いんだけど!
「・・・・・・魔力が回復する薬草は大抵がとても苦いの」
カコがそれとなく教えてくれた、だから返事があんなに食いぎみだったのかよ。
ていうかもうちょっと早く教えてくれ。
それにしても苦すぎる。
シスターには悪いんだかこれ以上は無理だ。
「あー、悪いん」
「どうですか? 少し苦いですがお口に合いましたでしょうか?」
やめてくれ、そんなキラキラした目で俺を見ないでくれ。
いや、もう本当に冗談抜きで。
「もう少しいかがですか?」
・・・・・・ああ、もう!
「ああ、頂こう」
ここで引いたら男じゃねえ!
全部食ってやるよ!
紅茶って凄いよな。
美味しい上に液体だから体が拒否しても流し込めるんだもん。




