45、至って健全です
「ありがとうございます、私はレーナと言います」
どうやら落ち着いたらしい、少女は自分の事について語り始めた。
名前はレーナと言うらしい。
「ところで、いったい何故こんなところに居たんだ?」
そう、そこが疑問なのだ。
少女は獣人だ、ならばブリフィアの住人でこの辺りの魔物の凶暴化は知っているはず。
なのにこんなところに一人、どうぞ襲ってくださいとでも言ってるようなものだ。
「あの、えっと・・・・・・その」
「大丈夫だ、怒ったりしないから」
それでもレーナはしばらく迷っていたようだったが、ようやくポツリポツリと理由を話し始めた。
レーナはまだ赤ん坊だったころに両親を盗賊に殺され、天涯孤独となった身を孤児院に預けられ、以来ずっとそこで暮らしているらしい。
だからいつもお世話になっているシスターに何か恩返しがしたいと思い、この辺りにしか咲かない珍しい花を摘み、それをプレゼントしようと思ったらしい。
だが、最近は魔物のせいで町の外に出してもらえない。
だからばれないようにこっそりと抜け出してきた、との事だ。
確かにその気持ちはわかる。
だがな、レーナ。
「バカ野郎」
「きゃうっ!?」
頭に軽く拳骨を落とす。
ほとんど力は入れてなかったがそれでもレーナにとってはそうではなかったらしい。
涙目で頭を押さえながらこちらを見上げる。
・・・・・・何だろう、すごくイケナイ事をしている気分になる。
「確かにその思いは大切だ。忘れないようにしろよ」
「だけどな、考えてみろ。それでお前が怪我をしたら一番悲しむのは誰だ?」
「っ!」
「しかもまさにお前は怪我をする寸前、いやもしかしたら死んじまってたかもしれないんだぞ」
「・・・・・・」
「分かったらなら二度とこんなことするなよ、良いな?」
「・・・・・・はい」
・・・・・・ちょっと強く言いすぎたか?
仕方がない
「ほら、分かったなら早く帰って花を渡して喜ばせようぜ」
「! はいっ!」
そう言って先程の沈んだ表情から一転。
尻尾を上に真っ直ぐ伸ばしニコニコと上機嫌に笑っている。
やれやれ、子供の相手は苦手なんだけどな。
まあ、とりあえずは機嫌を直してくれたようで良かった。
次はこの子を安全に町まで送り届けてやらないとな。
「それじゃあ行くぞ、歩けるか?」
「はいっ、大丈夫です!」
それから俺達はブリフィアまでの道のりを話しながら歩いた。
子供の話だから少しはっきりしない部分が有ったが様々なことを聞けた。
美味しい屋台の店や秘密の抜け穴。
そして一番の収穫はあの黒ローブ達の事だろう。
何でもあいつらは数ヵ月前から町に突然現れては町中を特に何をする事もなく歩き回ってはいつの間にか何処かに行っているらしい。
特に害は無いがなんせ不気味で住人には知らない人は居ないほど様々な噂がたっているらしい。
曰く、お忍びの貴族だ。
曰く、この町の何処かに盗賊のアジトが有る。
曰く、侵略をしようとしている他国の手の者だ。
これはあいつらの目的がますます分からなくなったな。
ただ町を観光して見て回っているだけ、なんてないよな。
まあ、今は情報が少なすぎる。
とりあえずはいつでも対処出来るように警戒しておくのが得策だろう。




