ある青年の決意
お久しぶりです。
結局、ぼくはあの時に助けた少女を旅に連れていくことにした。
驚くべき事に少女には名前が無かったらしい。やはりあいつらは消して正解だった。
今までずっと虐げられていた少女には幸せに、もっと愛されてほしい。
そんなことを思うと不意に頭に浮かんだ◼◼◼と少女を呼ぶことにした。
一瞬、少し残念そうな顔をした気が気に入ってもらえたのかな?
この世界に来てから……この世界?
まあ、いいや。とにかくぼくは魔法が使えるのだと言うことを初めて誰かに話した。そして記憶が無いことも。
幸か不幸か少女はよく理解出来なかった様だった。
今度は少女に事を聞こうとすると少女はまだあどけない口調で語り始めた。
この世界はどうやら火、水、風、雷、氷、土、木、闇、光と9人、そしてこの9人を纏めているのが時の神という合計10人の神が居る神話が信じられているらしい。
まあ、神と呼ぶこともあればそれ以外の呼び方で呼ぶことも有るらしいがそれはそこまで重要なことではないな。
その中でも◼◼◼は水の神の生け贄にされようとしていたようだ。
そして今度は自分の事について語り出した。
何時生まれたかは覚えていない。
一番最初に覚えたことは自分に親はいないこと、そして自分が忌み子で有ること。
覚えている限りはずっと続く暴力と罵倒の日々。
次第に何も感じなくなった。死にたいとすら……
そこまで聞いてぼくは◼◼◼を抱き締めた。
考えての行動ではない、とっさにやった事だ。
「もう大丈夫だから、僕は君を殴りも怒鳴ったりもしない。だから安心して」
優しく、囁くように。出来るだけ安心させられるように続ける。
「これからはぼくが君をどんなことからでも守るから」
初めは何が起こったかわからないという顔をしていた◼◼◼。
ようやく理解できたのだろう。どんどん目に涙が溜まっていき、ついには溢れ落ちた。
それと同時に年相応な、子どもらしく大声で泣き始めた。
今までずっと表情が変わらなかった◼◼◼の初めての表情、それを見て僕は強く決意した。
今後どんなことがあっても◼◼◼を守ると、そして今まで叶わなかった幸せを。
いや、それ以上の幸せを◼◼◼に与えていくと。
◼◼◼の泣き声は疲れて眠ってしまうまで続いた。
目を腫らして、だが安心したような顔で眠る◼◼◼の頭を撫でながらぼくも次第に睡魔に包まれてきた。
これからの旅はどうなるか、大丈夫だろうか。
うつらうつらとそんなことを考えながらぼくは眠りに落ちていった。




