18、俺は悪くねぇ!
カウンターに向かうと俺が思った通りの光景が広がっていた。
ガラの悪い冒険者がカコに罵声を浴びせている。
……大きいギルドならよっぽどバカじゃない限り騒ぎを起こさないんじゃなかったか?
よっぽどのバカなのだろう。
「俺に逆らうのか!」
男は顔を真っ赤にさせながら怒鳴り散らしている。
……その年でそんなに喚くなんて恥ずかしくないのか?
{どうしたんだ、カコ。}
{あ、リヒト。実はね……}
カコから聞いた事の顛末は実にあきれるものだった。
カコがさっきのクエストを受理しようと並んでいる際にあの男が話しかけてきたらしい。
何でも俺のパーティーに入れてやるとかなんとか。
Dランクのフリーの魔術師というのはそこそこ貴重でそれなりに人気があるらしい、おそらく男もカコが欲しいと思ったんだろうだと。
だがただの誘いならまだ良かったんだが男はえらく上から言ってきたらしい。
当然カコは誘いを断ったんたがそれが男の逆鱗に触れ今に至るらしい。
しかし面倒なことになったな。
もしやと思いこいつを鑑定してみたらやっぱり貴族だった。
それならばこの態度も納得できる。
「いいから俺のパーティーに入れと言っている!」
「ですから、先ほど言った通りお断りします。」
あ、頬がピクピクしてる。
「……良いかこれが最後の警告だ、パーティーに入れ。」
そう言うと男は腰に差していた剣を抜いた、周りの野次馬から小さな悲鳴が上がる。
さすがに剣を抜くのは不味いだろ!
……だが俺もバカじゃない。
こんな時の為の対策は用意してある。出でよ!
「あ?」
カコの周りに無数の光の球体が漂い始める。
これこそが昨日思い付いた守護魔法名付けて「リヒト球」(そこ、ダサいとか言わない!)だ!
「ふん、なんだただの霊か。その程度の使い魔で俺を止められると思っているのか!」
そう言って男は斬りつけてきた。甘いな! この魔法は対象に攻撃しようとすると自動的に反撃して撃退する優れものだ。
ほら、光の球が反撃を……あれ、思ったより強、
キュボッ!
「……。」
「……。」
光の球から出た光線は一瞬で男の剣を蒸発させ、更に石でできた床に大きな穴を開けた。穴の縁が真っ赤になっており光線の威力を物語っている。誰もがその光景に絶句し動かずまるでこの場だけ時が止まったようだ。
あっっっるぇぇぇぇ!? 思ってたより強いぞぉぉぉ!?
「ひぃ!」
男が持っていた剣の柄を落としその場に腰を抜かす。
それを皮切りに呆気にとられていた野次馬も悲鳴を上げて逃げ出し始めた。
{リヒト……。}
いやいやいや! 俺もここまでやるつもりはなかったんだよ!
俺がイメージしてたのは精々ちょっと火傷する程度のやつで。
て、あれ? またリヒト球が光始めてる? あっ、さっきの柄がちょうどカコの足元にある。
おそらくカコに向かって投擲したと認識されたんだろう。
「うわぁぁぁ! 殺されるぅぅぅぅ!」
先ほどとは打って変わって真っ青な顔で逃げ出す男、そしてそれを無数のリヒト球が光線を撃ちながら追いかけていった。
「……。」
取り残されたカコと気まずい沈黙が流れる。
「……。」
「……。」
「……クエスト受けよっか。」
「……そうだな。」
こんな事があった後でもあのエルフのお姉さんは何事も無かったかのような対応をしてくれた。
そして今日の教訓、慣れないことはするもんじゃないな。




