17、やはりこうなる
前のペースに戻れてきました。
冒険者、大抵の人の中では魔法や剣を駆使して魔物と戦い栄光を手にする、といったイメージだがこの世界では実際にはそうではない。
そのような成功を収めるのはほんの一握りのごくごく一部であり、大半の者が弱い魔物の駆逐から馬車の護衛、薬草の採取、はたまた犬の散歩等。基本何でも屋として宵越しの金を稼ぐために日々を過ごしている。
つまり何が言いたいかというと……
「探し物、草むしり、掃除……俺の思っていた冒険者と違う。」
俺は掲示板の前でげんなりした様子で依頼を眺めていた。
掲示板は木でできておりそこには様々な依頼が書かれた羊皮紙が大量に貼ってある。
ここまでは良い、むしろ雰囲気が出てかなり良い。だが問題は依頼の内容だ。
ゴブリンの駆除、薬草の採取。ここまではまだわかる。
だが、探し物、草むしり、ましてや肩たたき等冒険者じゃなくても良くね? と思うような依頼が大半を占めている。
おまけに冒険者っぽいことを探そう、と思ってもたった今判明した翻訳機能先輩の致命的な欠点がそれを邪魔してくる。
どうやら先輩は俺が見聞きしようと意識した文字や音にしか発動しないらしく一個一個内容を読んでいかないといけない。
やっぱりあいつが用意したものだからな。絶妙に使いづらい。
「……なぁ、カコ。冒険者っていうのはこんな事ばかりするのか?」
「初めはね、そもそもこの掲示板はF、Eを対象とした物だからあまり危ないものは入っていないの。」
なるほどな、確かに駆け出し冒険者にいきなり魔物を倒せって言っても無理な話か。
だからこの掲示板にはお手伝いの依頼が大半……ん?
「あれ? カコっていきなりDになったんだよな。だったら何でここで依頼を探してるんだ?」
「ギルドマスターの指示で周りの反発を避けるためにも何回かはここの依頼を受けろ、といわれたの。」
なるほどな、まあ新人がいきなり自分より上に行ったら反発も起こるよな。
どの道反発は出るだろうが、多少はましになるのか。
「これなんか良いんじゃない?」
そういってカコが持ってきた羊皮紙の内容はこんな感じだ。
クエスト名:ゴブリンの駆逐
目標:ゴブリン5体の討伐
報酬:銅貨3枚
まあ初めてのクエストならこんなものか。
ゴブリンは学園で読んだ本に載ってたな。確か最も弱くメジャーな魔物でどこにでも生息していている、だっけな。
それに草むしりやらなんやらよりはやる気が出るな。
「良いんじゃないか。」
「わかった、じゃあこれにしてくるね。」
そう言ってカコは羊皮紙を持ってカウンターに駆けていった。
‥‥‥とうとう冒険者としての活動か。
やっとファンタジーらしくなったな。
今まで学園で勉強したり草原で地面に頭を突っ込んだりしただけだからな。
そう考えると例え弱くてもワクワクしてきた。
このまま何も起こらずにクエストに行って終われたら良いな。
「何だと!」
カウンターから怒鳴り声が聞こえてきた。
‥‥‥はぁ。