三章十四話目
最近暑いせいか、あまり筆が進まないです。
ちょっと遅くなりました。
他の方たちはどうやって暑さを乗り切り、書き続けているのでしょうか?
皆様も体調にはくれぐれもお気をつけ下さい。
答えられないでいるベアトリクスの代わりにアンリが答える。
「それはね~、レイン君の顔が教会にあるアグラダの像にあまりにそっくりだったから、生真面目すぎるベアトリクスがつい、様をつけてしまっただけなんだよ~。ベアトリクスは熱心なラスティエ教徒でね。朝夕と毎日祭壇へのお祈りを欠かさないんだよ~」
レインは青い目を何度もまばたきする。
アンリとベアトリクスとを見比べる。
「そうなんですか?」
ベアトリクスは勢い込んで何度もうなずく。
「そ、そうなんですよ。あなたの顔があまりに教皇様の像にそっくりでしたので、私ったらつい勘違いしてしまいまして」
レインに向かって深々と頭を下げる。
それにはレインの方が恐縮してしまう。
「いや、それは気にしないけれど」
レインは多少心に引っ掛かりを覚えつつ、一応は納得する。
――そうか。どこかの教会のアグラダの像が、そんなに僕にそっくりなのか。そんなにそっくりなら、いつか見てみたいな。
心の中でひっそりとそう考える。
「そういえばレイン君に紹介がまだだったね。彼女はベアトリクス・ブーベ。俺の仕事上の相棒なんだ。こう見えて、俺と同じ二人の子持ちなんだ」
「変な紹介しないで下さい、アンリ。迷惑です」
にこにこと笑うアンリを、ベアトリクスが鋭い目でにらむ。
ベアトリクスはレインに向き直り、にっこりと笑う。
「初めまして、ベアトリクス・ブーベと申します。アンリが変なことに巻き込んでしまって申し訳ありません」
「俺が巻き込んだんじゃないよ。近くの列車からレイン君が空を飛んでやってきたんだよ」
「うるさい。あなたは黙っていて下さい、アンリ」
ベアトリクスはアンリをひと睨みで黙らせ、レインににこやかな顔を向ける。
「こんな変なおっさんに連れまわされて、さぞかし迷惑したことでしょうね。もう大丈夫ですよ。私が責任もって、あなたを元の場所へ連れて行きますから」
「ひどいな。それじゃあ俺がレイン君を誘拐したみたいじゃないか」
「実際、彼を連れまわしていたのは事実でしょう? 仕事をさぼってこんなところにいるなんて」
アンリの言い分に、ベアトリクスはぶつぶつと文句を言っている。
レインは二人のやり取りを、苦笑いを浮かべて眺めていた。
「そ、それなんですけど」
レインは言いにくそうにベアトリクスに話しかける。
「アンリさんの仕事の邪魔をしたのは、実は僕なんです」
そこのところはどうしてもはっきりさせておきたかった。
アンリが変な誤解でベアトリクスに責められるのは、レインとしては見ていて罪悪感が生まれる。
「僕がアンリさんの邪魔をしなければ、アンリさんを助けようとしなければ。そもそもは僕の責任なんですけど、それだってリシェンに、彼女に頼まれたからであって」
レインはしどろもどろになりながら、ベアトリクスに説明する。
ベアトリクスは神妙な顔をしてユキエばあさんの店を指さした。
「詳しい話は中で聞きましょう」
店の中に入ると、テーブルの上には残り四種類のチョナフの皿が並べられていた。
じゃがいものチョナフ、羊肉のチョナフ、ナスのチョナフ、トマトのチョナフ、それにレインが食べている途中だったハチミツのチョナフとラズベリージュースもまだ置いたままだった。
アンリがテーブルに座り、レインがその向かいに座る。
「ベアトリクスはこっち」
アンリは木の長椅子の隣をぽんぽんと叩く。
ベアトリクスは黙ってそこへ座る。
厨房にいるユキエばあさんを振り返る。
「ジンジャーエール一つ下さい」
ユキエばあさんは笑顔で応える。
「あら、あの人たちとの話し合いは済んだの?」
すぐにジンジャーエールの入ったガラスのコップを持ってやってくる。
「彼らも悪い人ではないので、よく話せばわかってくれました」
アンリが平気な顔で答える。
隣に座るベアトリクスが鋭い目でアンリをにらむ。
「アンリ、あなたまた空賊たちに喧嘩を売ったのですか?」
アンリは肩をすくめる。
「売ったわけじゃないよ。売られたんだよ」
「同じようなものじゃないですか」
「同じじゃないよ。大違いだよ」
「ふうん。とりあえずはそういうことにしておきましょうか。空賊たちをからかうのもほどほどにしておいてくださいね。仕事がやりにくくなりますから」
「わかってるよ」
二人のやり取りを、レインは青い目を丸くして眺めている。
ジンジャーエールを受け取ったベアトリクスが、レインに向き直る。
「それで、ええと、レインさ、ん。先ほどの話ですが」




