はじまり。
照りつける日差しとツターっと流れ落ちる汗はこの季節には当たり前だ。
そんな季節に
重たい旅行バッグを片手に持ち大きなキャリーバッグを持ち上げながら駅の階段を登り
ドンッと荷物を置いて一息つく私は恐らく令和のこの時代に物珍しく映っているんだということは
どこからともなく承知している。
こんな大荷物を抱えてる挙句、着ている服はOLさんが着ているようなカジュアルな服装ではない。
シンプルザ・ベストと言われている世の中にも珍しい
上下ともに赤ジャージに白のスニーカー、白いキャップだ。
この駅に着くまでにこれでもかって程にチラチラと見られている。
電車を待っている今でさえも。こんなド田舎によくもまぁこれだけの視線を浴びれるもんだな…
田舎とはいえ都会の流行を纏っていない人間は珍種なのかもしれない。
でも…私だってこんな格好で外は歩きたくないよ。人並みの姿で歩きたい。
だけどこうなったのにも理由がある。
こうなったのはあの親父のせいだ…
思い出すだけでも頭に血が上り制御できないほどに腸が煮えくり返っている
あんな親父の娘だと思いたくもない。
今の私の姿を見ている人達よ、好きでこんな格好でこんなに大荷物で来たわけではないということは分かって欲しい。
カタンコトン…
電車が近づく合図が聞こえ、少し経つと私の目の前に電車のドアが開いた。
私は置いた旅行バッグを肩にかけ、キャリーバッグの取っ手を下げて空いてる方の手で持ち上げる
電車に乗る。
田舎の電車は少ない。人も少ない。だからこそ目立ってしまう私の姿
本当に辱めに耐えられる勇気がないと乗れないや。
幸いにも私は最寄り駅まで着けばいい。
そう心に言い聞かせ
席について荷物を両手で抑えながら全てにさよならを告げた。
あの親父とも。
私がこんな格好で電車に乗ってるのは親父が作った借金だ。
私の知らない所であらゆる所や人からお金を借りて
とうとう面が喰らったらしく私と母はそんなことつゆ知らず
父親は真っ当に離れた地で過ごしていると思っていた。
そんな父親は私の貯金やアクセサリーやら服やら何から何まで売りさばき
ましてや家まで売り払った。
そして
私が働いていた職場はどうやら父の借金に関与しているらしく
私はクビを告げられ、母の行方は分からないまま
どこかで安全に過ごしてくれていたらいいんだけど。
残ったのはこの荷物と財布に残された現金3000円だけ
今となっては母方の伯母さんの家に送っていた荷物だけでもあった事が唯一の救い
債権者の人には『今すぐ逃げたほうがいい。じゃないと今度は君と母親を追わないといけなくなる』と
家から出るのは促された。
この時点でクソ親父と縁を切るようにとも言われた。
全く、あんのどタレタコ親父!
どこかで見つけた暁には火にくめてやる…
逃げろと言われたがあのタコ親父だけは逃さないからな。
ひしひしと蘇る父親の行いに腸が煮えくり返り私の周りにいた人達が何かを察したかのように
腫れ物を避けていく勢いで私には近づかない席へ移動している
そんなことはお構いなしに怒りに震え上がる私は握りこぶしで席を叩く。
余所から見たら確かに近寄りたくないわな。
そんな怒りが浮かび切ったあとにはこれからどうするかという事も頭に浮かぶ。
細かいことは今はまだ考えていないけど
とりあえずは親戚のお姉さんが『そういうことなら家においで』と言ってくれたから
住む場所には当面は困らない。
働くしても正社員では働けないだろうし
まぁまぁ名を馳せた職場をクビになったんだ…
しばらくはアルバイトでもして生活の足しにしようかな…。
ほんと、残ったのがこの荷物だけの私をおいてくれるなんて
優しいお姉さんには感謝しなきゃ。
どうやらシェアハウス的になるらしいけど、詳しい事はお家に着いたら教えてくれるみたいだし
それに最寄り駅に着いたらお姉さんが迎えにきてくれると言ってくれた。
本当に大大大大 大っ感謝だなぁ…。




