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第37話 古代の守衛

アーデルを出発した五人は、グランデル山脈へ向かっていた。


「この先は、昔よく歩いてた場所なんだよ」


先頭を歩くロディオが言った。


「そうなの?」


ルシエラが尋ねる。


「うん。まあ、こんな奥まで来たことはあまりないけどね」


「昨日会った人も、ロディオは昔から一人で山に入ってたって言ってたよね」


メルディアが笑った。


「それはもういいだろ」


「危ないこともしてたんじゃないですか?」


クラウスが尋ねる。


「いや、ちゃんと気をつけてたって」


「本当かな」


エイルが笑うと、ロディオは肩をすくめた。


「だから、こういう場所では俺の言うことを聞いてくれよ」


山へ近づくにつれて道は険しくなり、木々の間には岩が目立ち、足元にも小石が増えていった。


やがてロディオが足を止めた。


「そろそろだな」


ロディオは知人から受け取った道順図を広げた。大きな岩が二つ並ぶ場所と、その先に続く崩れた斜面が描かれている。


「あれだ」


ロディオが指さした。


「ここから先は、ちゃんとした道じゃない。少し回り込もう」


五人は崩れた斜面を避け、岩場の裏側へ回り込んだ。途中、エイルが大型盾を背負い直す。


「こういう場所だと、こいつはちょっと邪魔だな」


「持ってこない方がよかった?」


ルシエラが尋ねた。


「いや。何が出るか分からないからな」


「確かに、盾が必要になるようなものがいたら困りますね」


クラウスが言った。


「でも、ここまで来て何もなかったら、それはそれで残念だな」


メルディアが呟く。


「残念って、魔物がいてほしいわけじゃないでしょ?」


ロディオが振り返る。


「違うよ。遺跡がなかったらって話」


そんな会話をしながら進んでいた時だった。


「あった!」


ロディオが声を上げた。岩の陰に、周囲とは明らかに違う形の石が並んでいた。


◇


「これが石壁……」


メルディアが近づくと、山肌から大きな石材を積み重ねたような構造が露出しているのが分かった。表面は風化しているが、石と石の境目は不自然なほど整っていた。


「確かに、自然にできたものじゃなさそうだな」


エイルが言った。


「うん。人が加工した石だと思う」


メルディアは壁の表面に触れた。


「それに、かなり大きな石を使ってる」


ルシエラも周囲を見回す。


「こんな山の中に、どうやって運んだんでしょう?」


「魔法を使ったのかもしれないね」


メルディアが答えた。


「でも、いつの時代のものかは分からないな」


石の表面には、細かな刻みが残っていた。知人が話していた、文字か模様か分からないというものだろう。


「読めそう?」


エイルが尋ねる。


「全然。文字なのかも分からない」


メルディアは少し残念そうだった。その間に、ロディオは壁の周囲を調べ始めていた。


「おーい、こっち来て!」


四人が向かうと、ロディオは大きな岩の隙間を指さした。


「ここ、奥に空間があるみたい」


「本当?」


「風が流れてるんだよ」


近づいてみると、確かに隙間から冷たい空気が流れていた。奥は暗く、どこまで続いているのか分からない。


「中に入れそうか?」


エイルが尋ねた。


「このままだと狭いけど、横から回れそうな場所がある」


ロディオは慎重に周囲を調べた。崩れた石材を無理に動かすのは危険だったが、少し離れたところに人が通れそうな隙間が見つかった。


「どうする?」


エイルが皆を見た。


「私は入ってみたい」


メルディアが即答する。


「まずは入口付近を確かめるくらいにしましょう」


クラウスが言った。


「奥まで続いているなら、今日の準備だけでは足りないかもしれません」


「そうだな」


エイルも頷いた。五人は照明を用意し、一人ずつ岩の隙間へ入った。


◇


岩の向こうには、石造りの通路が続いていた。


「……本当に建物だったんだ」


エイルが呟いた。左右の壁は平らに加工され、床には大きな石板が敷かれている。天井の一部は崩れていたが、通路そのものは奥まで続いていた。


「すごい……」


メルディアが壁を照らした。


「外の石壁と同じ造りだね」


「思ったより大きいですね」


クラウスが言った。ロディオは床を調べながら進んだ。


「最近、誰かが通った感じはしないな」


砂や小石が溜まっているものの、新しい足跡は見当たらない。


「魔物とかはいないのかな?」


ルシエラが尋ねる。


「普通の魔物なら、出入りした跡がありそうだけど」


ロディオが周囲を見る。


「今のところ、そういうのはないな」


通路の先には緩やかに下る石段があった。五人は足元を確かめながら進む。やがて石段の先が開け、広い部屋へ出た。


「うわ……」


メルディアが声を漏らした。部屋の左右には、何本もの石柱が並んでいた。床には幾何学的な線が刻まれ、奥にはさらに別の通路が続いている。天井も高く、持ってきた照明では上までよく見えなかった。


「こんなものが山の中にあったんだ……」


ルシエラも驚いていた。


「これは、かなり大きな建物だったみたいだね」


メルディアは床の模様を眺めていた。


「何のための場所だったんだろう」


そんな中、ロディオが足を止めた。


「……あそこに何かある」


石柱の奥。


壁際に、人の形をしたものが立っていた。


◇


五人は距離を取ったまま、それを観察した。全身が分厚い金属で覆われている。背丈は大柄な人間ほど。兜のような頭部に、幅の広い胴体。両腕も金属でできており、関節には複雑な部品が組み込まれていた。


「鎧……?」


ルシエラが言った。


「でも、中に人が入ってる感じじゃないな」


ロディオが答える。メルディアは興味深そうに目を凝らした。


「これ、魔導具なのかな」


「こんな大きなものが?」


エイルが尋ねる。


「分からない。でも、普通の鎧とは造りが違うと思う」


メルディアは少し近づいて観察しようとした。


その時だった。


カチリ。


小さな音が響いた。


「……止まって」


ロディオが言った。五人が動きを止める。金属の人影の胸元に、青白い光が灯った。


「え?」


ルシエラが声を漏らす。


ギギギ……。


金属の頭部が動いた。続いて、右腕がゆっくりと持ち上がる。


「動いた!?」


エイルが剣に手をかけた。胸元の光が強くなった。


「エイル、下がって!」


ロディオが叫ぶ。次の瞬間、金属の腕から青白い光弾が放たれた。


◇


「危ない!」


エイルが大型盾を構えた。光弾は盾の縁をかすめ、すぐ横の石床へ激突した。


ドガァンッ!


砕けた石片が飛び散った。盾にも衝撃が伝わり、エイルは思わず身を引いた。


「うわっ!」


「エイル、大丈夫!?」


ルシエラが声を上げる。


「ああ! でも、まともに受けるのはまずい!」


盾の縁が焦げ、補強された金属部分がわずかに変形していた。金属の人影が、こちらへ向かって歩き始める。


ゴンッ。


ゴンッ。


重い足音が広間に響いた。


「こいつ、かなり強そうだぞ!」


ロディオが叫ぶ。


「ルシエラ、頼む!」


エイルの声に、ルシエラが杖を掲げた。


「はい!」


《光と闇の祝福》!


五人は戦闘態勢を整えた。金属兵が左腕を振り上げる。先ほどのゆっくりとした起動動作とは違い、実際の攻撃は鋭かった。重い金属腕がエイルへ向かって振り下ろされる。


「おっと!」


エイルは横へ踏み出し、盾で腕の軌道を逸らした。金属の拳が床を叩く。


ガァンッ!


石板に亀裂が走った。


「すごい力だな!」


エイルが声を上げる。


「でも、今なら動きは見える!」


ロディオが一気に側面へ回り込んだ。金属兵の頭部がロディオを追う。しかし、身体が向きを変える頃には、ロディオはすでに背後へ移動していた。


「こいつ、全身が金属だ!」


「弱いところはないのか?」


エイルが尋ねる。


「ちょっと待って!」


ロディオは敵の関節部分を観察した。全身を覆う装甲は分厚い。だが、肩や膝には部品同士の隙間がある。


「膝のところなら!」


ロディオは背後から踏み込み、短剣を振るった。


ギィンッ!


硬い音が響いた。


「……っ!」


刃が金属に弾かれた。ロディオはすぐに距離を取った。


「硬っ!」


短剣を確認すると、刃先の一部が欠けていた。


「うわ、これでも駄目か!」


リューベルのダンジョンで手に入れた、希少な軽量短剣だった。これまで何度も使ってきたが、こんなふうに刃が傷んだのは初めてだった。


「ロディオ、大丈夫か!?」


エイルが尋ねる。


「俺は平気! でも、こいつはかなり硬い!」


金属兵が身体を回した。右腕の先に、青白い魔力が集まり始める。


「また撃つぞ!」


エイルが叫ぶ。五人は射線を避けるように動いた。光弾が石柱の一つに命中する。轟音とともに、柱の表面が砕けた。


「うわ、危なっ!」


ロディオが振り返る。


「こんなの何発も撃たれたら、遺跡が壊れるぞ!」


「分かってる!」


エイルは金属兵の側面へ踏み込んだ。


「メルディア! 肩を狙えるか!」


「狙える!」


メルディアが杖を構えた。


「《フレイムランス》!」


炎の槍が一直線に飛ぶ。


ゴォンッ!


金属兵の右肩に命中した。凄まじい熱と衝撃で、肩の装甲が大きく歪む。内部の部品が砕け、金属の腕が不自然な角度へ曲がった。


「やった!」


ルシエラが声を上げる。金属兵は右腕を動かそうとした。だが、途中で止まる。


ギギギ……。


壊れた関節が、嫌な音を立てていた。


「右腕が使えなくなってる!」


ロディオが叫ぶ。


「なら、もう少しだ!」


エイルが前へ出た。金属兵の左腕による攻撃を避け、蒼鋼剣を構える。狙うのは膝の関節。剣を振り抜く。


ガキィンッ!


装甲の隙間に刃が入り、内部の部品が砕けた。強い手応えを感じ、エイルは無理に押し込まず剣を引いた。金属兵の片膝が大きく折れ曲がる。


ゴンッ!


重い身体が床へ傾いた。


「今だ!」


ロディオが叫んだ。金属兵の胸元には、青白く光る部分があった。金属板の隙間から、その奥に埋め込まれた石のようなものが見えている。


「メルディア! 胸の光ってるところ!」


「見えてる!」


メルディアが杖を向けた。


「《フレイムランス》!」


二発目の炎の槍が、胸元の隙間へ飛び込んだ。


バキンッ!


何かが割れる音がした。青白い光が激しく明滅する。金属兵の左腕が途中で止まった。


ギギ……。


そして、胸元の光が消えた。重い金属の身体が床へ崩れ落ちる。


ガシャァンッ!


大きな音が部屋に響いた。その後、金属兵は動かなくなった。


◇


「……倒したのかな?」


ルシエラが慎重に尋ねた。エイルは少し離れた位置から様子を確認した。


「今のところ、動く気配はないな」


ロディオも周囲を警戒しながら近づいた。


「完全に止まったみたい」


「中はどうなってるんだ?」


エイルが尋ねる。ロディオは破損した胸元を覗き込んだ。内部には複雑な金属の部品が組み込まれていた。その中心には、砕けた青い石のようなものがある。


「これが動力だったのかな」


メルディアが近づいてきた。


「魔力を使って動いてたなら、そうかもしれない」


「魔導兵ってやつ?」


「たぶん。でも、こんな造りのものは見たことない」


メルディアは興味深そうに内部を眺めた。


「それにしても、すごい技術だね」


「敵としては勘弁してほしいけどな」


エイルが答えた。クラウスは皆の様子を確認していた。


「怪我をした人はいませんか?」


「私は大丈夫です」


ルシエラが答える。


「俺も平気」


エイルは盾の縁を確認した。最初の魔力弾によって変形した部分がある。


「盾は少し傷んだな」


「帰ったら確認してもらった方がよさそうですね」


「そうするよ」


ロディオも短剣を眺めていた。


「こっちも修理できるかなあ……」


刃先が欠けている。


「かなり硬い相手だったもんね」


ルシエラが言った。


「うん。普通の魔物なら、こんなことにはならないんだけど」


ロディオは短剣を鞘へ戻した。


「まあ、仕方ないか」


メルディアが倒れた魔導兵を見下ろす。


「でも、意外と動きについていけたよね」


「最初は結構速かったけど、祝福をもらってからは避けやすかったな」


エイルが答える。


「古い機械だから、動きが単純なのかな」


「かもしれないね」


ロディオは金属兵の脚を軽く叩いた。


「でも、あの力と硬さは普通じゃなかったよ」


五人はしばらく魔導兵を調べていたが、内部の仕組みまでは分からなかった。


◇


戦闘が終わると、五人は広間の奥を調べ始めた。石柱の向こうには、複数の通路が続いている。そのうちの一つには、下へ向かう階段があった。


「まだ奥があるのか……」


エイルが呟く。


「思ったよりずっと広いみたい」


メルディアが照明を掲げる。ロディオは広間の壁沿いを歩いていた。


「……ん?」


一つの扉の前で足を止める。


「こっちにも部屋があるみたいだ」


扉は厚い金属でできていた。表面には、先ほどの魔導兵の身体にもあったような模様が刻まれている。


「開くかな?」


ルシエラが尋ねた。ロディオが扉を調べる。金具は錆びついているものの、扉そのものはそれほど傷んでいなかった。


「鍵はかかってないみたいだな」


取っ手を引く。


ギギギ……。


鈍い音を立てて、扉が開いた。その奥には、小さな部屋があった。


「……何これ」


メルディアが声を漏らした。壁に沿って、金属製の棚が並んでいた。棚には剣や槍、短剣のような武器が置かれている。いくつかは錆び、床に崩れ落ちていたが、形を保っているものもあった。


「武器庫?」


エイルが呟く。


「そうみたいだね」


メルディアは目を輝かせた。


「これ、全部古い武器なのかな」


ロディオが棚の一つに近づいた。


「……ちょっと待って」


そこには、鞘に収められた短剣が一本残っていた。ほかの武器とは違い、金属製の箱の中に収められていた。箱の蓋は半分開いていたが、短剣そのものはきれいな状態を保っている。


「これ、まだ使えそうだぞ」


ロディオが手に取った。刃渡りは、現在使っている短剣と大きく変わらない。しかし、刃の表面には細かな線が走り、光を当てると不思議な色合いを見せた。


「へえ……」


ロディオは慎重に鞘から刃を抜いた。


「軽いな」


何度か手の中で持ち替えてみる。重心も悪くない。


「今の短剣より、少し扱いやすいかも」


「そんなに違うの?」


ルシエラが尋ねた。


「うん。持った感じはかなりいい」


メルディアも近づいてきた。


「見せて」


ロディオが短剣を渡す。


「……これも、さっきの魔導兵と同じような加工がされてる」


「魔法の武器なのかな?」


「分からない。でも、普通の金属とは違うみたい」


メルディアは刃の表面を観察した。


「錆びてもいないし、保存状態がいいね」


「使えるなら、俺が持っててもいい?」


ロディオが尋ねる。


「もちろん」


エイルが答えた。


「ただ、どんな武器か分からないから、いきなり無理はするなよ」


「分かってるって」


ロディオは短剣を受け取った。刃を鞘へ戻し、腰に差してみる。


「いい感じだな」


嬉しそうに笑った。


◇


部屋の中をさらに調べると、ほかにも武器が残っていた。大きな剣。長い槍。厚い金属製の盾。ただし、その多くは長い年月の間に傷み、すぐに使える状態ではなかった。


「こんなに武器があるなんて……」


ルシエラが驚いていた。


「ここ、兵士のための施設だったのかな」


メルディアが言った。


「さっきの金属兵もいたしな」


エイルが答える。


「でも、こんな山の中に?」


「それが分からないんだよね」


メルディアは周囲を見回した。


「どこの国のものなのかも分からないし」


ロディオは棚の奥を覗き込んだ。


「まだ奥に何かありそうだな」


「奥?」


「この部屋だけじゃないみたい」


棚の向こう側には、別の扉があった。しかし、その扉の前には崩れた石材が積み重なっており、簡単には近づけそうになかった。


「ここも通路になってるのかな」


エイルが言った。


「分からない。でも、武器を保管する場所がここだけとは限らないね」


メルディアは期待を込めた目で扉を見つめた。


「もしかして、もっとすごいものがあるかも……」


「それなら、なおさら準備してからだな」


クラウスが言った。


「これほど大きな施設なら、さっきの魔導兵も一体だけとは限りません」


その時だった。


カタン……。


広間の奥から小さな音が聞こえた。続いて、何かが擦れるような音。


ギギギ……。


五人は顔を見合わせた。


「……今の、聞こえた?」


ルシエラが尋ねる。


「ああ」


ロディオが頷く。


「奥にも何かあるな」


メルディアは扉の向こうを見つめた。


「ほかにも魔導兵がいるのかな」


「いると思っておいた方がいいだろうな」


エイルが言った。


「今日はここまでにしよう」


「えっ、もう?」


メルディアが振り返る。


「まだ奥を見てないのに」


「だから、次に来た時に見よう」


エイルは広間の奥を見た。


「何体いるかも分からないし、ここは道も複雑そうだ」


クラウスも頷く。


「照明や食料も、本格的に地下を探索するには足りません」


「……そうだね」


メルディアは少し残念そうだったが、すぐに表情を戻した。


「じゃあ、次はもっと準備して来よう」


「その前に地図を作っておきたいな」


ロディオが紙を取り出した。五人は通った場所と、確認した通路の位置を簡単に書き留めた。メルディアは魔導兵の壊れた部品を一つ選び、布で包んだ。ロディオは新しく見つけた短剣を腰に差す。


こうして五人は、来た道を引き返すことにした。


◇


五人がアーデルへ戻ったのは、日が傾き始めた頃だった。宿に着くと、さっそく持ち帰ったものを広げる。机の上には、魔導兵の部品。


そして、ロディオが見つけた古代の短剣が置かれていた。


「改めて見ると、すごいものを拾ったな」


エイルが言った。


「だろ?」


ロディオは嬉しそうだった。


「今の短剣も気に入ってたけど、これはかなり良さそうなんだよね」


「まだ性能は分からないよ」


メルディアが言った。


「分かってるって。でも、持った感じが全然違うんだ」


ロディオは短剣を手に取り、軽く握り直した。


「刃もかなり丈夫そうだし」


「それは実際に試してみないと分かりませんね」


クラウスが言う。


「そうだな」


ロディオが頷く。メルディアは魔導兵の部品を眺めていた。


「こっちも気になるんだよね」


「それ、何か分かったの?」


ルシエラが尋ねた。


「全然」


メルディアは即答した。


「でも、魔力で動いてたのは間違いなさそう」


「じゃあ、昔の魔導技術ってこと?」


「たぶんね。あんな大きな機械を動かせるなんて、相当すごい技術だと思う」


メルディアは部品を持ち上げた。


「もしこれが神魔大戦の時代のものだったら……」


「まだ分からないんだろ?」


エイルが笑った。


「分かってる。でも、気になるじゃない」


「それはそうだな」


エイルも頷いた。


◇


その後、五人は次の探索について相談した。ロディオが広げた地図には、入口から石段、広間、武器庫までが描かれていた。


「今日入ったのは、たぶんほんの一部分だと思う」


ロディオが言った。


「広間の先にも通路があったしね」


「しかも、まだ武器が残っていた」


メルディアが付け加える。


「奥にもっと大きな保管場所があるかもしれない」


「それなら、装備も探してみたいな」


エイルが言った。


「今日の金属兵を見ただろ? 今の武器じゃ厳しい相手もいるかもしれない」


ロディオも頷く。


「俺の短剣も欠けちゃったしね」


「エイルの盾も傷んでいますし、探索前に確認した方がいいですね」


クラウスが言った。


「それに、今度は長く潜ることになるかもしれません」


「食料と水も多めに必要ですね」


ルシエラが答えた。


「ロープや照明も追加しよう」


エイルが言う。


「準備には何日かかかりそうだな」


「その間に、この短剣も調べてみるよ」


ロディオが笑った。


「俺はこっちの部品を調べたい」


メルディアが言った。


「本当に楽しそうだな、二人とも」


エイルが呆れたように笑う。


「だって、こんなもの初めて見たんだよ」


メルディアは机の上の部品を指さした。


「まだ何があるか分からないんだから、気になるに決まってるでしょ」


話が一段落したところで、エイルが思い出したように言った。


「そういえば、今日の魔導兵、結構強かったよな。レベルも上がってるんじゃないか?」


「そうかも!」


メルディアが自分のステータスを確認する。


「あ、上がってる!」


「本当?」


「肉体Lv44になってるよ」


「俺も確認してみるか」


エイルもステータスを開いた。


「お、俺も44だ」


「俺も44になってる」


ロディオが答える。クラウスとルシエラも、それぞれ自分のステータスを確認した。


「僕も肉体Lv44ですね」


「私もです!」


五人全員の肉体Lvが一つ上がっていた。


「やっぱり、あの魔導兵はかなり強かったんだな」


エイルが感心したように言う。


「そうだね。それより……」


メルディアがもう一度ステータスを見た。


「あれ、職業Lvが21になってる」


「えっ?」


エイルも確認する。


「本当だ。俺も21だぞ」


「俺もだな」


ロディオが言った。


「僕も上級職Lv21になっていますね」


クラウスも少し驚いていた。


「すごいな。転職したばかりなのに、もうこんなに上がったのか」


エイルが言うと、メルディアが頷いた。


「転職して職業Lvが1に戻ったから、最初のうちは上がりやすいんだろうね」


「そういえば、基本職の後半はなかなか上がらなかったもんな」


「うん。あの頃とは全然違うね」


ロディオが笑う。


「またLv40まで上げるのは大変そうだと思ってたけど、意外と早いかもな」


「でも、ずっとこの調子とは限らないですよ」


クラウスが言った。


「それもそうか」


エイルが頷く。


「ルシエラはどうだった?」


「私は職業Lvも44になっていました」


ルシエラが答えた。


「そっか。ルシエラは転職してないんだったな」


「はい。でも、皆さんの職業Lvがもう21になっているのはすごいですね」


「まあ、元のLvに追いつくまでは、まだまだだけどね」


メルディアが言った。


「でも、上級職のLvが上がると、どれくらい変わるんだろう」


「次の探索で確かめてみたいな」


ロディオが答える。


「まずは安全なところで試してからにしよう」


エイルが言うと、クラウスも頷いた。


「そうですね。遺跡の中で初めて試すのは危険ですから」


こうして五人は、上級職になってからの成長の速さに驚きながらも、次の探索へ向けて準備を進めることにした。


◇


一方、その頃。


魔王城を出発したディモスとロザリアも、グランデル山脈方面へ向かっていた。二人は人間側に正体を知られないよう、目立たない外套を身につけていた。


「しかし、山脈といっても広いな」


ディモスが言った。


「場所が分からない以上、情報を集めるしかありませんね」


ロザリアが答える。


「アーデル方面から噂が広まったそうですから、まずはそこを目指しましょう」


「分かった」


ディモスは頷いた。しばらく進んでから、ふと思い出したように口を開く。


「そういや、剣聖レイヴァンだったか」


「またその話ですか?」


ロザリアが少し呆れたように言った。


「ワイバーンの後ろの森まで斬ったんだろ?」


ディモスは楽しそうに笑った。


「大した腕だな。一度見てみたいもんだ」


「会いに行くつもりではないでしょうね?」


「そんな暇はないさ。遺跡の調査が先だ」


「本当にお願いしますよ」


「分かっている」


ディモスは短く答えた。


「向こうから襲ってこない限り、余計な戦いはしない」


ロザリアは小さく息をついた。


「まずは遺跡を見つけることですね」


「ああ。何があるか、実物を見ないとな」


二人は移動を続けた。まだ遺跡の正確な場所は分からない。だが、グランデル山脈へ向けた調査は、すでに始まっていた。


◇


アーデルでは、五人が翌日から探索の準備を進めていた。必要な道具を揃え、傷んだ装備を確認し、内部で通った場所を地図に書き直す。メルディアは持ち帰った魔導兵の部品を調べ続けたが、その仕組みまでは分からなかった。


ロディオも新しい短剣を確かめていた。刃は鋭く、軽量で扱いやすい。ただ、どこまで丈夫なのか、実際の戦闘でどう使えるのかはまだ分からない。


「これなら、今の短剣より役に立ちそうだな」


ロディオは満足そうに呟いた。一方、メルディアの頭からは、あの武器庫の光景が離れなかった。古い武器が並んだ棚。その奥にあった、まだ開いていない扉。


そして、広間からさらに奥へ続く通路。あの遺跡には、まだ何が眠っているのだろう。


「次は、もっと奥まで行きたいな」


メルディアが呟く。


「もちろん、そのつもりだよ」


エイルが答えた。五人は数日かけて準備を整え、再び山へ入る計画を立てた。次は入口を確認するだけでは終わらない。石柱の並ぶ広間の、そのさらに奥へ。本格的な遺跡探索が、いよいよ始まろうとしていた。


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