惚れた女には腹が立たない!
「惚れて結婚した相手に腹を立てることあるの?」
取材を受け、インタビュアーの夫婦の悩み事を聞いて、なぜパートナーに腹を立てるのか、わからずサラッと答える颯人。
「結婚してたら、少しくらいイラッとすることありませんか?」
「ないね。たぶん、他のヤツだったら腹立つようなことでも、カミさんだと可愛いって思えるんだよね。」
「たとえば、どんな時ですか?」
「うるさい!黙れって言われても、他のヤツならブチキレるけど、カミさんなら、オレにこんなこと言ってるって笑っちゃうんだよね。」
颯人は、大学生の時に起業し、ワンマンで知られる経営者だ。
ワンマンであるが、興味を持ったモノを形にし、数々のビジネスを成功させて来た。
そのカリスマ性に、人間性はともかく憧れられる者は多い。
颯人に憧れ入社を希望するものは多いが、颯人の求める仕事ができず、颯人についていけず、退職する者も多い。
会社に残るのは、大学時代からのブレーンの理人と私だけだ。
三年もつ社員はいない。
颯人は、自分の思いを汲み取れない者、クオリティの高い仕事が出来ない者へキレることが多く、穏やかさとはかけ離れている。
常人ではない颯人にモノを申せるものはいない。
颯人の前では皆緊張し、イエスと言う状況しかない。
長い付き合いの私でも、雑談をしたことがない。
カミさんと子供のこと以外では。
つまらないことを言って、颯人に落胆させるのが怖いから雑談もできない状況であるが、颯人はカミさんと結婚して以来、カミさんと子供のことでだけは雑談をするようになった。
カミさんの話は、理解に苦しむ他ない。
しかし、颯人はカミさんのことを話したくてたまらない。
周りの誰もが、なぜカミさんとの結婚を颯人選んだのか理解できずにいた。
それほど、ムチャクチャな女なのだ。




