第13話 セシリーには内緒の家族協定 ~マリーシア視点~
「あの子が私に『子を、マリーお姉さまを愛しているのなら、お願いです。王妃さまに取り合ってください』って。真面目な顔でね。『権力者』という存在が消せないのなら、せめて上手く利用しないと勿体ないとも言っていたかしら」
「そんな事が……」
驚いたなんていうものじゃない。
『権力者を利用する』?
それを四歳の子どもが考えた?
まさか私よりお勉強をしていないセシリーが、そんな難しい事を考えていたなんて。
元々セシリーは、四歳にしては聡い子ではあった。
色々な事に興味を持ち、無垢な瞳で聞いてくる。
人の話を聞くのが好きで、あらゆる事を幼いながらに吸収している。
そんなふうに思ったから、私も『頼れるお姉様でなければ』と力が入っていた。
でも、今回のはその『聡い』の域を、少し超えているように思う。
私の件に気が付き、行動し、結果を出した。
セシリーは「お姉さまが行動したからこその結果ですよ?」などと言っていたけど、この上裏で策略を巡らせてもいたなんて知ったからには、もうすごい事は紛れもない事実だろう。
完敗だ。
「セシリーは……私の妹は、すごいですね。『ダンスをパターン化してすべて暗記に落とし込む』という方法を思いついたのもですし、お母様のダンスを見て、一度ですべて覚えてしまったのもですし」
私も暗記力――記憶力には自信がある方だと今までは自分で思っていたけど、セシリーのソレは規格外だ。
それが今回の凄いところのすべてではないけれど、間違いなくその才能があってこその、今回の結果だ。
あの子は、神に愛された――。
「たしかに素晴らしい能力である事には変わりないけど、当たり前と言えば当たり前よね、それは」
「え?」
「だって、セシリアには生まれた時から『記憶の精霊・メキエ』がついているんだもの」
――記憶の精霊・メキエ。
それがどんな精霊なのかはよく知らないけれど、精霊という存在が何なのかは、この前ちょうど習った。
精霊は、肉体を持たない。
精神体だから、お母様の精霊のように姿を自在に変える事ができる。
知能と人格を持つ高位生命体で、性格は個体によって違う。
ただ精霊には種類があって、それにより得意とする事も違う。
セシリアの異常なまでの物覚えのよさは、その精霊のお陰という事なのだろう。
「でも、お母様。精霊との契約は社交界デビューの直前だと聞きました」
「えぇそうね。キリルも今ちょうど、その準備をしているところだわ」
「では何故、セシリーには既に精霊が?」
「それが、分からないの」
「分からない?」
「気づいたら、精霊がついていた。私も旦那様も、とても驚いた」
お母様でも分からない事がある。
その事実に、驚いた。
「実は今回の事、家族にしか話していないのよ」
「王妃様には?」
「話す気はありません」
そうなの?
セシリーはすごいのに、自慢しないの?
首を傾げた私の内心を察してか、お母様はゆるりと笑った。
「セシリアは確かにすごいわね。四歳でできる事じゃない。でも、だからこそ秘密にしなければね」
「秘密に?」
「そうよ。私は、セシリアにはなるべく多くの時間を、子どもらしく過ごしてほしい。でも、セシリアの凄さを知った周りは、きっとセシリアを取り込もうとしてくるわ。例えば、そうね……早くから婚約者になりたがる者が出てくる。地位の高い者が婚約者になれば、権力闘争に巻き込まれる。相応の立ち居振る舞いが求められる。そのどれもが、窮屈なものよ。だから」
お母様がティーカップを置いた。
その手を私の方に差し出す。
「私と旦那様は、セシリアの事を可能な限り隠すと決めました。今回の件も、王妃様には私の人脈とマリーシア、貴女の才能で成した事だと話しています。そのせいで、貴女は少し周りから、余分に注目を浴びる事になる。それでも――私たちと一緒に、セシリアを守ってくれるつもりはあるかしら」
セシリー、私の可愛い妹。
どんなにすごい子だとしても、私の妹には変わりない。
助けてくれた恩もある。
あの太陽のような笑顔を守りたい。
私にできる事が、あるのなら。
「お母様。私だって、セシリーのお姉様だもの。できる事はやってあげたいわ」
私はそう言い、お母様の手を取った。
ここに、家族協定が結ばれた。
――セシリーには、まだ内緒で。
お読みいただき、ありがとうございます!
一旦切りのいいところで完結設定にさせていただきました。
先行公開中のカクヨムでは、引き続き第三章を投稿中です。
こちらにもまた遅れて投稿しますので、続きをお読みいただける方はブックマークをこのままでお願いします。
もし
・まだ【★】やレビューを投稿していない
・「面白かった」「続きが読みたい」「ざまぁでスッキリした!」
などと思っていただけましたら、是非ページ下部の【★】から評価・応援をいただけますと、執筆の大きな励みになります!
伯爵家の最適化は、まだまだこれから。
次回から始まる第三章も、どうぞよろしくお願いいたします!




