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東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした  作者: 埴輪庭


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第66話 小競り合い

 ◆


 三崎の警告が響いた途端、霧の奥から牙をむいた獣型モンスターが一斉に飛び出してきた。


 ──うわ


 三崎は内心強い生理的嫌悪感を覚える。


 その姿は犬と呼ぶにはあまりに禍々しかった。


 頭部全体が巨大な口になっており、上下左右に幾重もの牙がのぞいているのだ。


 ──『レア度2/裂孔のスクリュー・ドッグ/レベル1』


 三崎は思わず息を呑む。


 レア度2とはいえ油断はできない。


「数は……四匹か……!」


 周囲を見回すと、自衛隊員たちも銃を構え始める。


「落ち着け。狙える者は距離を保って射撃! 覚醒者は応戦! 石田 英子さんと三崎 麗奈さんはバリケード除去に注力! 役割分担を忘れるな!」


 吉村が指示を出す。


 ブレイカー・ロックにせよアーマード・ベアにせよ、襲撃モンスターに対する強力な戦力であることは間違いないが、出番は今ではない。


「ヘイト・ドール、行け!」


 城田が叫ぶ。


 小柄な人形は短い脚で走り出し、地を這うようにしてスクリュー・ドッグの真横へ回り込む。


 小さいながらもカミソリのような刃物を持っており、それでもってスクリュー・ドッグの後脚を斬りつけた。


 キキキキという嫌な笑い声をあげながら、ヘイト・ドールはスクリュー・ドッグの脚を苛んでいる。


 まるで呪いの人形だな、などと思いながら三崎は思念でゴブリン・キャスターへ“火花”を使う様に指示をした。


 ゴブリン・キャスターが杖を振ると、前方に黒い粉が前方に広がり──


 爆竹を鳴らしたような音がしてモンスターたちを傷つけた。


 一撃でしとめるような威力はないが、ひるませるには十分だ。


 しかしすでに周囲では新手の怪物が現れつつあった。


 見ると、剣と盾を携えた人型の獣人が何体も姿を見せている。


 ──『レア度3/錆鉄の卑剣士コボルド・ソルジャー/レベル1』


 その名は、三崎の視界に浮かぶステータスウィンドウで確認できる。


 全身が錆びついた鎧で覆われ、手にはくすんだ鉄の剣と小さな盾。


 ざらざらと軋む音を立てながら、隊列を組んでこちらへ迫ってくるが──


 銃撃が鳴り響く。


「撃て、撃てーッ!」


 自衛隊員の一人が叫び、弾丸がコボルドたちの鎧へ雨のように降り注いだ。


 ガンガンと金属を叩く音が続き、そのうち数体のコボルドが動きを鈍らせる。


「よし、効いてる! もう少し狙え!」


 別の隊員が叫ぶ。


 しかし全員が一様に仕留められるわけではなく、鎧の状態や弾丸の当たり所によっては倒しきれない場合もある。


 中には盾を構え、上手く弾を弾く個体もいた。


 そういった個体に対しては自衛隊員らも素早く反応し、一斉射撃で仕留めていく。


 血飛沫ならぬ黒い液体を散らしながら、コボルドたちは光の粒子へ還っていった。


「まだ来るぞ!」


 吉村が叫ぶ。


 バリケードの向こうから、さらに二体のコボルドが武器を構えて走り出す。


 その背後には、まだスクリュー・ドッグが数体いるようだ。


 が。


「みなさん、目を閉じてください!」


 沙理が声を張る。


 ルミナス・ソウルが閃光のように発光した。


 近くにいた三崎は咄嗟に目を覆ったが、コボルドとスクリュー・ドッグたちはそのまま強烈な光をまともに浴びた。


 するとどうだろう、モンスターたちは何もない目の前の空間を攻撃し始めたではないか。


「数秒ももちません! 撃って!」


 沙理の声に、霧の中で構えていた自衛隊が指を引く。


 パン、パン、と連続射撃が空気を震わせ、 まともに防御もできないモンスターたちを弾丸が撃ちぬいていった。


 ・

 ・

 ・


「ふう……」


 城田が肩を落として息をつく。


 周囲にはコボルドたちの残骸や、崩れた赤い蔦のバリケードが散乱している。


 自衛隊員たちも、怪我人がいないか互いに確認を始めていた。


 襲撃はとりあえずは犠牲者無しでしのぎ切れたようだ。


 ◆


 霧の中の脅威を一掃し、南ルートのメンバーは再び前進を再開する。


 コボルドやスクリュー・ドッグの群れを片付け、少し息をついたとはいえ、皆に疲労が溜まっているのは明らかだ。


 自衛隊員たちも弾薬を確認し合い、補給を手短に済ませる。


「先を急ごう。北ルートが無事だと良いが……」


 吉村が呟くように言う。


 今は一刻も早く公園の中心にたどり着き、魔樹を破壊する作戦を遂行するのが最優先だ。


 厳しい道のりが続くが、ここで立ち止まってはいられない。


 荒れ果てた街路の先、赤黒い蔦がうごめく公園の境界線まで、あと少し。


 だがそこにはどんな戦いが待ち受けているか分からない。


「じゃ、あたしらが先に行くからね。後ろは頼んだよ」


 英子とブレイカー・ロックが先頭に立ち、先へと進んでいった。



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ここ数日で書いた短編もいくつかあるので、よかったらそっちもよろです


異世界恋愛。下級令嬢が公爵令嬢の婚約を妨害したらこうなるってこと
毒花、香る

異世界恋愛。タイトル通り。ただ、ざまぁとかではない。ハピエン
血巡る輪廻~テンプレ王太子とお人よし令嬢、二人とも死にました!~

現代恋愛。ハピエン、NTRとあるがテンプレな感じではない。カクコン10短編に出したけど総合33位って凄くない?
NTR・THE・ループ


他に書いてるものをいくつか


戦場の空に描かれた死の円に、青年は過日の思い出を見る。その瞬間、青年の心に火が点った
相死の円、相愛の環(短編恋愛)

過労死寸前の青年はなぜか死なない。ナニカに護られているからだ…
しんどい君(短編ホラー)

夜更かし癖が治らない少年は母親からこんな話を聞いた。それ以来奇妙な夢を見る
おおめだま(短編ホラー)

街灯が少ない田舎町に引っ越してきた少女。夜道で色々なモノに出遭う
おくらいさん(短編ホラー)

彼は彼女を護ると約束した
約束(短編ホラー)

ニコニコ静画・コミックウォーカーなどでコミカライズ連載中。無料なのでぜひ。ダークファンタジー風味のハイファン。術師の青年が大陸を旅する
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鈴木よしお地獄道



まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
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