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東京魔圏~この危険な東京で、僕はゴブリンを頼りに生き残る。最弱魔物かと思っていたけれど、実は最強でした  作者: 埴輪庭


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第20話 普通過ぎる男

 ◆


 ──生きて帰れるのかなぁ


 山本 信二は内心でそんな事を思っていた。


 腕に巻き付いている『痺れ牙のイエロー・パイソン』を眺める。


 既にクールタイムは終わっていた。


 レア度の問題なのだろう、山本をはじめ、レア度が低いモンスターの召喚者たちのクールタイムは既に過ぎている。


 あとは陣内や絵里香といった、レア度が高いモンスターのクールタイム終了を待つだけだった。


 ──なんか弱そうなんだよな、うちの蛇


 そうは思うものの、山本は自身が召喚したこの蛇を案外気に入ってもいる。


 可愛いし、やる時はやるのだ。


 それを自分の目でしっかり確認もした。


 でも、この状況を打開するだけの力があるとは思えない──そう山本は思っている。


 そんな山本の脇腹を、おもむろに戸田 杏子がつついた。


 ちなみに彼女が召喚した『微風のリトル・ピクシー』は、杏子の頭の上で退屈そうに寝そべっている。


 どこか楽観的な杏子にお似合いのモンスターと言えるだろう。


「なんだよ」


 山本が言うと──


「そんな顔しなくても大丈夫だよ、皆いるんだし。ていうか暗すぎ! そんな顔をしてると助かるものも助からなくなるよ? ……いや、でも映画とかだとそういうキャラが最後まで生き残ったりするんだよね~……つまり、作戦ってコト!?」


 杏子がべらべらとそんな事を返す。


「違うけどさぁ……まあいいや、なんか良い意味でどうでもよくなってきた。そういえば──」


 山本は笑顔を浮かべ、杏子と話を続ける。


 一方で、『石砕く小人ウッド・ノッカー』の召喚者である小林 カンナは、鷹野 早紀と話していた。


「貫き喚くランサー・クロウ……ってさ、喚くってついているから結構鳴き声でうるさいイメージあるけど、案外静かだよね」


 カンナはそんな事を言う。


 ランサー・クロウはカラスのような見た目をした鳥型のモンスターだが、ハヤブサ並みの速度で飛び回る上に、その鋭い嘴は鉄筋コンクリートを軽く貫く程で、カラスなどとは比べ物にならないほど剣呑だ。


 しかし、早紀の肩に止まるランサー・クロウはまるで飼い慣らされた様に大人しく、ギラリと光る嘴の鋭さに目を瞑れば可愛いとすら言えるかもしれない。


「そうね」


 早紀の返事はあっさりと淡泊なものだったが、別にカンナに対して含むところはない。


 元々そういう人間なのだ。


 ──早紀と鳥さん、ちょっと似てるかも


 カンナは内心でそんな事を思っていると──


「皆、ちょっといいかな? ここから出ていく段取りを話し合いたいんだけど、時間ある?」


 と、三崎から声をかけられた。


「時間ある? って……」


 カンナと早紀が顔を見合わせる。


「あれ。僕、変な事言った?」


 変な事は言ってない。


 ないが、三崎の様子は今この場にはどうにもそぐわない。


「いや、変じゃないけどさ……」


 カンナが口ごもって早紀を見ると、早紀は「リーダーが狼狽えているよりは全然いいんじゃない?」などと言う。


 そう、三崎は普通過ぎるのだ。


 生きるか死ぬかがかかってる作戦の話し合いだというのに、まるで "明日ちょっと空いてる? 暇ならご飯でもどう? " という風情を見せる三崎はいっそ異質にすら見える。


 ──少し、不気味ね。でも


 だがそういう三崎だからこそ、こんな状況なら逆に頼もしいとも早紀は思っていた。

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ここ数日で書いた短編もいくつかあるので、よかったらそっちもよろです


異世界恋愛。下級令嬢が公爵令嬢の婚約を妨害したらこうなるってこと
毒花、香る

異世界恋愛。タイトル通り。ただ、ざまぁとかではない。ハピエン
血巡る輪廻~テンプレ王太子とお人よし令嬢、二人とも死にました!~

現代恋愛。ハピエン、NTRとあるがテンプレな感じではない。カクコン10短編に出したけど総合33位って凄くない?
NTR・THE・ループ


他に書いてるものをいくつか


戦場の空に描かれた死の円に、青年は過日の思い出を見る。その瞬間、青年の心に火が点った
相死の円、相愛の環(短編恋愛)

過労死寸前の青年はなぜか死なない。ナニカに護られているからだ…
しんどい君(短編ホラー)

夜更かし癖が治らない少年は母親からこんな話を聞いた。それ以来奇妙な夢を見る
おおめだま(短編ホラー)

街灯が少ない田舎町に引っ越してきた少女。夜道で色々なモノに出遭う
おくらいさん(短編ホラー)

彼は彼女を護ると約束した
約束(短編ホラー)

ニコニコ静画・コミックウォーカーなどでコミカライズ連載中。無料なのでぜひ。ダークファンタジー風味のハイファン。術師の青年が大陸を旅する
イマドキのサバサバ冒険者

前世で過労死した青年のハートは完全にブレイクした。100円ライターの様に使い捨てられくたばるのはもうごめんだ。今世では必要とされ、惜しまれながら"死にたい"
Memento Mori~希死念慮冒険者の死に場所探し~

47歳となるおじさんはしょうもないおじさんだ。でもおじさんはしょうもなくないおじさんになりたかった。過日の過ちを認め、社会に再び居場所を作るべく努力する。
しょうもなおじさん、ダンジョンに行く

SF日常系。「君」はろくでなしのクソッタレだ。しかしなぜか憎めない。借金のカタに危険なサイバネ手術を受け、惑星調査で金を稼ぐ
★★ろくでなしSpace Journey★★(連載版)

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継ぐ人

ハイファン、ウィザードリィ風。ダンジョンに「君」の人生がある
ダンジョン仕草

ローファン、バトルホラー。鈴木よしおは霊能者である。怒りこそがよしおの除霊の根源である。そして彼が怒りを忘れる事は決してない。なぜなら彼の元妻は既に浮気相手の子供を出産しているからだ。しかも浮気相手は彼が信頼していた元上司であった。よしおは怒り続ける。「――憎い、憎い、憎い。愛していた元妻が、信頼していた元上司が。そしてなによりも愛と信頼を不変のものだと盲目に信じ込んで、それらを磨き上げる事を怠った自分自身が」
鈴木よしお地獄道



まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
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