表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/39

第三十話 【光明】

密談を終えた左膳(さぜん)と右近は月明かりの中、常盤橋への帰途(きと)に就いた。


夜の江戸市中は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っている。


そんな中、左膳(さぜん)安堵(あんど)の面持ちで右近に話しかける。


「上首尾であった。」


「御意、それにしても林様は俗物(ぞくぶつ)でしたな。」


「左様、しかしそのおかげで事が上手く運んだとも言える。」


実際、今回の事で最も得をしたのは、林忠英(ただふさ)だったと言って良いだろう。


忠英(ただふさ)は大御所の期待に(こた)えてみせると同時に、越前松平家に恩を売るだけでなく、付け届けという実利まで手にしたのだ。


ただ当時の常識からすれば、忠英(ただふさ)のみが特別に俗物だったという訳ではなく、幕閣はこのような手段で、自らの立場を盤石(ばんじゃく)なものにしている事が多かった。


「油断は禁物ですが、これで断然望みが出て参りました。」


「うむ、若年寄を味方に付けたのは大きい。後は大御所様の御心(みこころ)一つだが・・・」


「それについては、心配無用かと存じます。」


何故(なにゆえ)そう思う?」


此度(こたび)の事、林様は大御所様の意を受けて動かれているように思います。当家と林様に特別な(つな)がりが有ったのならともかく、そうでない以上、林様ご自身の判断で動いているとは思えませぬ。」


「なるほどな・・・これから如何(いかが)する?」


「ここは林様を信じて待つしかありますまい。下手に動いて、それが林様の耳に入ろうものなら、自分を信じていないのかという事で、少なからず気分を害されるでしょう。それは得策ではございません。」


「うむ、後は今宵(こよい)の事を松栄院(しょうえいいん)様に何と伝えるかだが・・・」


「今は()()何かがはっきり決まったわけではございませぬ。数日様子を見てから、お伝えするのが良きかと存じます。」


「相分かった。早ければ数日の内に決着が付くかもしれぬ。そうなれば継嗣(けいし)の受け入れ準備を急ぎ進める事になろう。これから忙しくなるぞ。」


「御意。精一杯務めさせて頂きます。」


越前福井藩は、右近の活躍により最大の危機を切り抜けようとしていた。

次回は7月30日(金)20時に公開予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ