蛇足①
魔女狩りのメシア騒動の一か月後。
完治には至らないものの、飛騨の傷も大分癒えた。
左胸の傷と右腕の骨折はギプスと包帯で固定され、未だ動かせないのだが、介助付きでの歩行と、車椅子での移動も少しずつ出来るようになった。
動けるとなったら、長い間ベッド上でじっとしているのに耐えられない性分の飛騨である。
早速リハビリと気分転換も兼ねて、上司や同僚に騒動の迷惑を詫びに挨拶周りをしていた。
「すまんな、お前たちまで付き合わせて」
前方を警護する午雷と、後ろで飛騨の乗る車椅子を押している震田に、飛騨は礼を言う。
他にも陸軍元帥・秋津付きの屈強なボディーガードを二人借り受け同行させていた。
「いーよ。俺たちもずっと病室にこもってるより、こっちの方が気が楽だ」
「……震田、あんまり飛騨の我が儘を聞くなよ。
いつまたあの手のテロリストが現れるかもわからないのに」
ヘラヘラと笑う震田に、午雷は渋い顔をする。
外出する機会が増えれば、その分襲撃のリスクも上がることは飛騨も理解している。
だからと言って、ずっと病室に居る訳にはいかないだろう。
……というのは建前で、本音は制限のある病院生活は暇で仕方ないから。
退屈すぎてストレスで別の病気にかかってしまいそうだ。
「あの魔女の手口は分かっている。
その上できちんと警戒をしているのだから、そう簡単には襲って来やしない。
他のテロリストも同様だ。
一番警護の厚い今、狙って来る者はそうは居ないだろう」
「だからってなあ……」
堂々とした物言いの飛騨に、午雷は肩を落として大きな溜め息をつく。
「何も、わざわざ横須賀まで挨拶周りに来ることはないだろう……」
現在、飛騨たちが居るのは、横須賀海軍本部の来客用駐車場。
東京都世田谷区の病院から車を出して、神奈川県の横須賀市までやって来た。
「挨拶ならビデオ通話で充分だろう」
「午雷、俺がそんなハイカラなものを扱えると思うか」
「……威張りながら言う事かよ」
午雷と飛騨の会話を笑い飛ばしながら、震田が割って入る。
「まあまあ。高速道路使って片道一時間程度だしさー。
ずーーーーっと病室に居ても暇だし、多少はいんじゃね?」
飛騨も震田も、もちろん午雷自身も、四六時中病室に居るのにはうんざりしていた。
ボディーガードの一人が海軍基地の受付で飛騨の来訪を告げると、しばらくして迎えがやってきた。
迎えに来たのは白髪交じりの初老の紳士で、飛騨たちを目に留めると優しそうに微笑んだ。
制服ではなく白衣を着ている。
海軍の医官だろうか、と飛騨たちが考えていると、初老の紳士は一礼してから自ら名乗った。
「初めまして。海軍で医官をしている加賀と申します。
本日は横須賀までご足労ありがとうございます。
海軍赤城元帥より、飛騨中将が海軍基地に滞在している間の体調管理を任された者です」
あらかじめ横須賀海軍基地へ行くことは海軍側に伝えていたので、赤城が気をきかせてくれたのだろう。
「加賀医官ですね。
お忙しい所ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
用件はなるべく短く済ませます」
右腕の動かせない飛騨は会釈し、加賀へ答礼する。
「いやいや、いいんですよ~。
瑞岐くんも飛騨中将に会えるのは嬉しいでしょうしね」
穏やかな物腰で加賀は海軍基地内を案内する。
あまり馴染みの無い潮の匂い。
時折聞こえるカモメの鳴き声と、波の音。
陸軍よりもやや洋式的な建築物の中を、物珍しそうに見物しながら一行は加賀の後を着いて行く。
エレベーターを降りてから五分ほど廊下を歩いた先にある突き当たりの部屋の前で加賀は立ち止まる。
「みず……成瀬大佐、加賀です」
加賀が名乗りながら扉をノックすると、中から返事が聞こえた。
「あ、は……はい!どうぞ。開いてます」
部屋の中から返ってきたのは瑞岐の声のようだが、心なしか上擦っている。
飛騨たちは不思議そうな顔をするが、加賀はその様子に慣れているのか、平然と扉を開ける。
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