白の魔女ミラルダ⑤
わたしの言葉に、ジュードは息を呑んだ。
きりっとジュードを見据える。できるかぎりーー真剣に。
「……言わなくちゃ、だめか」
「うん……ダメだよ。わたしは、知りたい」
しばらく頭を掻いていたジュードは、観念したように口を開いた。
「……俺は貴族の庶子だ。それが嫌になってーーやけになってたんだ」
ジュードは、いつもとは違うぶっきらぼうさで端的に答えた。
「……全然足りないよ」
わたしの言葉に、ジュードは目を伏せる。
「わかってる……姉様、だけど……これは、昔の話なんだ」
「それはわかるけど……」
わたし言って、気づいた。
ジュードは戸惑いーー泣きそうに見えた。
一緒に暮らし初めた頃のように。
なんだか時間が巻き戻ったみたいだった。
多分、彼にとってはそうなのだろう。
触れられたくない過去の話なのだ。
そして、わたしも気がついた。
わたしにも過去がある。魔女になる前、魔女になったあとの。
ジュードにも、そのあたりの話はさほどしたことがない。
彼の父親が生まれるよりも昔のことを話すのは、奇妙な感じがするからだ。
もしその全てを話せと言われれば、わたしも居心地の悪さを感じるだろう。
ジュードも同じなのだ。
問題は、未来。
たしかに、ジュードの言う通りだった。
「……わかった」
わたしは、それ以上問い詰めることなく話を打ち切った。
もう一度、ジュードの瞳を見る。
とめどもなく、愛情が溢れてくる。
テーブル越しにわたしは、ジュードの手を取った。
「……姉様」
「これからも、よろしくねーージュード」