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Karmafloria(カルマフロリア)  作者: 十六夜 優
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第91話 第二研究区



 静まり返った研究室。


 石造りの机の上には、何十枚もの紙が無造作に散らばっていた。


 描かれているのは、幾重にも重なる魔法陣。


 円を重ねたもの。


 四角を基盤にしたもの。


 複雑な線が幾何学模様のように組み合わさったもの。


 だが、そのどれもが途中で赤く線を引かれ、失敗の印が付けられている。


「……やっぱり、あの力がないと駄目か」


 紙を一枚持ち上げ、ミギドは小さくため息をつく。


「すぐに壊れちゃうなぁ……」


 視線を横へ向ける。


 机の隣には、小さな檻が何段にも積み重ねられていた。


 一匹ずつ分けられたネズミ。


 その中には元気よく動き回る個体もいる。


 だが、それ以上に目につくのは動かない個体だった。


 眠るように横たわるもの。


 体の半分以上が崩れ、原型を留めていないもの。


 何かに耐え切れず、内側から壊れたような姿を晒しているもの。


「……」


 ミギドは表情一つ変えない。


 まるで実験結果を眺める研究者のようだった。


「壊れないように作るには、やっぱり……」


 言葉を途中で止める。


 机へ背を向け、一枚の紙を手に取った。


 そこには見慣れない立体的な魔法陣が描かれている。


 箱のようにも見える、不思議な構造。


「力が器を選ぶのか……」


 紙を見つめる。


「器が力を支えるのか……」


 小さく笑う。


「まだ分からないな」


 紙を机へ戻す。


 ゆっくりと扉を開けた。


 部屋を出る。


 静まり返った研究室。


 机には散らばった魔法陣の設計図。


 その中央には、一冊の古びた本だけが静かに置かれていた。


 金色の文字が月明かりに照らされる。


 ――はじまりの神々


 部屋を後にしたミギドは、長い廊下を歩く。


 壁一面には複雑な魔法陣が刻まれ、淡い光が脈打つように流れていた。


 やがて研究所の外へ出る。


 夜風が白衣を揺らす。


「やっぱり、この技術は生物に使うべきじゃないのかなぁ」


 腰に差した一丁の魔法銃を取り出す。


 掌の上で軽く回し、その構造を眺めた。


「器の問題……?」


「それとも、仕組みの問題……?」


 独り言のように呟く。


 しばらく考え込むと、小さく肩をすくめた。


「……まあ、どっちでもいいか」


 魔法銃を腰へ戻す。


 夜空を見上げる。


「やっぱり、あの力が必要だな」


 口元が静かに緩んだ。


「器さえ完成すれば——」


 一拍。


「芽吹いたあとは、僕がどうにでもできる。」


 その笑みだけを残し、ミギドは夜の闇へと姿を消した。

ご一読いただきありがとうございました。

誤字などございましたらコメント等含めて教えていただけると幸いです。

よろしくお願い致します

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