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「万屋!ポーションを寄越せッ!!」
大きな盾を構え敵の攻撃を防いでる大男が、僕に向けて大声で叫ぶ。
僕も、それに負けじと大きな声で叫び返し、鞄からポーションを取り出すと、大男に向けて投げ渡す。
「シール、銀貨三枚だからな!」
「後で払う、ツケとけ!」
そりゃそうだ…戦闘中に、いちいち代金を支払っていたら危ない事この上ない。
しかも、それで怪我をしたり死んだりしたら、目も当てられない。
もちろん、シールもそれは分かっているだろうが、そう言う性格なのか律儀に告げてくる。
「よろず屋さん、マナポの在庫あるかしら?流石に、少し魔力が心もとなくて…。」
「ハイハイ、マナポですね?大銀貨一枚です。」
魔法使いのお姉さん、マリンさんがマナポ…マナポーションの在庫を確認してくる。
流石に前衛と違い、後衛の魔法使いだからか若干余裕があるが、それでも戦闘中に払わせる訳にはいかない。もちろん後払いである。
「クッ!このままじゃ、防ぎきれん…チッ!守銭奴!何かないかッ!?」
いつもならば僕を無視しているリーダーも、状況が状況だけに珍しく僕に問いかけて来た。
「あるにはあるが、下手すると…。」
「うるせー!あるならさっさと使えボケッ!!」
チッ!…と、内心舌打ちをしながら、鞄から筒を一本取り出すと、栓を抜き敵へと放り投げる。
相手が敵とリーダーだけなら何も言うつもりはないが、他のメンバーは嫌いじゃないので話は別だ。
このまま注意をしなければ大変な事になるのは分かり切っているので、僕は大声で叫び注意を促す。
「みんな、急いで目を閉じろッ!!」
僕が投げた筒は、地面に一回、二回と跳ねると目標の元へ…。
他のメンバーはともかく、敵の目の前で今も必死に敵の攻撃を防いでるシールに対して目を閉じろとは、我ながら無茶な指示ではあるが、それでもシールはきっちりと目を閉じてくれた。
次の瞬間、『ドンッ!』と言う衝撃音と共に、周囲は白い光に包まれた。
なお、緊急事態と言う事で、衝撃音の所為でキーンと耳鳴りがするのは我慢して貰おう。
「よし、今です!退却しましょう!」
「おう!」「えぇ!」「ぐぁ、目、目が…。」
僕の合図により全員、退却を始める。
若干一名、閃光を喰らい、まともに動ける状態では無いが、それでもシールがリーダーを抱え上げ、その場を脱出する。
まるで荷物の様に運ばれるリーダーの姿は何とも情けない話だが、下手に怪我をするよりはマシだろう…。
こうして、僕たちは無事?に、ダンジョンから脱出する事ができたのだった…。
†
所変わって、冒険者ギルドに隣接された酒場にて…。
「いや~、さっきは本当に危なかったぜ…万屋のお陰だぜ、まったく!」
シールは上機嫌にそう言うと、僕の背中を『バシバシ』叩く。
「そ、そんな事無いですよ、シールさんが敵の攻撃を防いでくれたから可能だっただけで…って、痛い、マジで痛いってば!!」
「ふふふ、ホント、あんた達、仲良いわね。」
「そうか?同じパーティーなんだから仲が悪いよりは良いだろ?」
確かに、同じパーティーなのだから仲が悪いより良いと思う。
それに、僕みたいなモブを仲間だと認めてくれているのが、何とも嬉しいと思う。
「まぁ、確かにそうなんだけど…ね。」
マリンさんが少々含みのある返事をする。
まぁ、言わずもがな…僕に対するリーダーの態度の事だろうな…。
「それにしても、リーダー遅いですね…?」
「ん?そう言やそうだな…まぁ、受付が混んでるからじゃねーのか?」
「そうね~確かに、この時間って混むから…。」
確かに、この時間帯は混む時間帯だが…それにしても、流石に遅過ぎる気がするのは気の所為か?
「いやー、悪い悪い、遅くなっちまったな!」
あれから暫くしてリーダーが戻ってきた。
しかも、ダンジョン内とは打って変わって、ずいぶんとご機嫌の様だ。
「ん?リーダー、何か良い事あったのか?」
「もしかして、素材が高く売れたとか?」
シールとマリンがリーダーに問いかける。
本当は僕も声を掛けた方が良いのだろうが、今までのリーダーの態度から、声を掛けない方が良いと思うので、黙っておく。
まぁ、マリンの言う様に、確かに素材が高く売れたのなら、分前が増えるのだから嬉しい。
だが、僕はそれよりもリーダーの後ろにいる女の子が気になっていたりする。
「いや?報酬は誰かさんの所為で、少なかったぞ?」
「はぁ~?じゃーなんでリーダーは機嫌がいいんだ?」
「それはな…。」
そう言って、リーダー俺の方を見てニヤニヤする…うん、嫌な予感しかしない。
「喜べ!新しいメンバーが見付かったぞ!しかも、念願のヒーラーだ!」
リーダーはそう言うと後ろにいた女の子を前へと押し出す。
すると、女の子は被っていたフードを脱ぐ。
なるほど、リーダーが好きそうな可愛い女の子だ…それに胸もデカい。
確かに、メンバーに女の子が増えるのは、僕も男だから嬉しいとは思う。
まぁ、実力は知らないが、ヒーラーが仲間に加わるのであれば、僕みたいに道具頼りのヤツより戦力増強は間違いないだろう。
ただし、それだとリーダーがニヤニヤしている理由が分からない…思わず嫌な予感がした。
「あ、あの…新しくパーティーに入るマロンって言います。
これから、よろしくおねがいします!」
少しオドオドしてはいるが、元気な子の様だ。
「おぅ!俺はシールだ!そんでもって、そっちの魔法使いがマリンだ!」
「ちょっと、シール…自己紹介くらい自分で出来るわよ!
マロンちゃんだっけ?これからよろしくね?」
「は、はい!こちらこそよろしくお願いします!」
さて、次は俺の番かな?
「えっと…僕『あぁ、守銭奴、お前は自己紹介しなくていいぞ!』
僕の発言にリーダーが被せ気味に遮った。
「「「「えッ!?」」」」
リーダーを除く、全員が同じ反応をする。
「だーかーらー、お前は、自己紹介する必要がないって言ってんのが分からないのかよ!!
そもそもお前はヒーラーが入るまで繋ぎで、雇ってやってたってだんだ!
それなのに、貴様は、その恩を忘れて俺様に何度も楯突きやがって…なんで俺様がヒーラーが入ってまで雇ってやると思ってんだ?
お前なんか用済みなんだよ!もちろん解雇に決まってんだろうが!
この際だから言うが、ダンジョンの中だからって、大して効果のないポーションやらを高く売り付けやがって、ふざけんな!」
「なッ!?確かに効果は少し低いかもしれないが、その分、通常よりかなり安くしてるだろうが!」
ちょっと高品質のポーションであれば一つ銀貨八枚と十枚とか言うのはザラだ。
それと同じく高品質のマナポーションであれば、大銀貨四、五枚するのがザラだったりする。
それを、同じパーティーと言う事もあり、少しばかり品質が下がるからと…格安で提供しているのだからお礼を言われても、文句を言われる筋合いはない。
もちろん、ダンジョンでシールやマリンに売ったポーションの代金は、大安売りだと言えるだろう。
もっとも、売ったと言っても代金はまだ貰っていないのだが…。
そして、先程、退却するのに使った閃光弾は、何故か、僕の自腹である。
まぁ、僕自身が逃げる為に使ったと考えれば、それは仕方がないと言えなくもないが…。
「ハッ、笑わせてくれるぜ!だがな、お前が何と言おうがクビは決定事項なんだ!
分かったら、さっさと荷物をまとめて出ていきな!」
「あぁ、分かった…だったら、お望み通り出てってやるさ!だから、さっさと今日の報酬よこしやがれ!」
日頃から僕に対して、リーダーがの態度が悪いのは知っていた。
その事もあり、何度も、このパーティーを抜けようか考えた事はある。
その為、解雇を言い渡された時、溜まったいた鬱憤が吹き出したのだ。
「あ?てめぁ、人に攻撃仕掛けときながら報酬よこせだ?
そんな物、ある訳ねーだろうが!迷惑料だ、ボケ!!」
こっちは逃げる為にアイテムを使った。
もちろん、それはあまりに巫山戯た言い分である。
「おい、リーダー、いくらなんでもそれは言い過ぎだ!」
「そうよ、よろず屋さんは悪くないじゃない!それに何よ、攻撃されたって!」
「はぁ?お前ら、こんなヤツの肩を持つのか?
むしろ、俺様的には今までの迷惑料代わりに、そいつの鞄を置いてけって思ってるんだが?」
そう言って、僕の鞄を指差す…正直な話、ありえないとしか言い様がない。
自慢ではないが、僕の鞄は、マジックバッグと言う事になっている。
その為、通常では入りきれない程のポーションなどの小物を多く取り出しても、不思議に思われないのだ。
そんな、通常より多く入る程度のマジックバッグでも金貨数枚…どころか、その上の大金貨が数枚必要だったりするのだ。
参考までに、いつも通りだと考えるなら、僕の今日の稼ぎだと僕の手取りは大銀貨数枚程度にしかならないだろう。
それほど高価な鞄を、この男は自分勝手な言い分で置いていけと言っているので。
「はぁ…全然話にならないな、あばよ!」
あまりに頭にきた俺は、『バンッ』とテーブルを叩くと立ち上がると、リーダーに背を向けると、報酬も受け取らずに歩き出す。
「ちょッ!?おい、待てって万屋!」
「そうよ、よろず屋さん待ちなさいッ!」
シールとマリンが僕を止めようとする…だが、こんなヤツにこれ以上関わりたくないとばかりに、そんなシールとマリンの静止を聞こえないフリをして、僕は足早にその場を去って行くのだった…。
拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。
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