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「ス、『ステータスオープン』!」


 緊張のあまり、声が少し裏返ったが、この際、気にしないでおこう…。

 そんな事より、僕が気になるのは、僕のステータスを見た周囲の反応である。


「な、なんと、まさかこの様な事が…。」


 王様が僕のステータスを見て、(つぶや)く…。

 まぁ、予想通り呟くだけではなく、ガッカリしている姿も見受けられるけど…。


「ハッ!まさか異世界人でありながら、この様なゴミだとはな!

 『巻き込まれし者』だと?しかも、ゴミスキル〖レプリカ(・・・・):F〗とはな!

 よもや、多大なる犠牲を強いてまで召喚した者が、こんなゴミクズだとは…。

 衛兵!(ただ)ちに、この者を捉え処刑しろッ!!」

「「「ハッ!!」」」


 王様の横にいた男が、衛兵に命令する…って、またお前かッ!?

 こいつ、僕に何か恨みでもあるのか?

 まぁ、確かに『勇者』や『聖女』などと比べれば大したステータスでもないし、『巻き込まれし者』なんて称号だから仕方がないと思うけども…。

 だからと言って、勝手に召喚しておきながら処刑される(いわ)れはないはずだ。


 その気持は、流石に僕だけではなく、女の子…河合さんだけではなく、イケメン君も同じだった様である。


「ま、待ってくださいッ!彼はまだ(・・)何も悪い事をしていないじゃないですか!」


 その台詞を聞いた河合さんが直ぐに庇ってくれる。

 とは言え、『まだ』は酷くないか?それではまるで僕がこれから悪いこ事をする様に聞こえるじゃないか…。


「そうそう、この男(コレ)は、あんたらがしでかした召喚とやらの所為(せい)で、俺らと一緒に付いてきてしまっただけだろ?

 第一、俺らに魔王と戦えと言っておきながら、俺らの同胞を処刑って…そんな国を俺らが本気で守ると思ってんのか?

 俺だったら、そんなヤツらは早々に見限って魔王側に付いて、そんな国なんか滅ぼすと思うけど?」


 いや、庇ってくれるのは嬉しいけど、イケメン君、それは言い過ぎだと思うぞ?


「わ、私も、そんな国なんて守りたくありません!」


 イケメン君の台詞に、河合さんも同意する。

 まさか、二人に庇われるとは予想外だ。


「そ、それは…。」


 イケメン君の煽り文句に、(ども)る例の男…それ以外の人達も、イケメン君の言葉に静まり返る。

 そりゃそうだ、ゴミ扱いされた僕を処刑すれば、せっかく召喚した勇者や聖女が敵に回ると言っているのだ。

 とは言え、女の子(河合さん)はともかく、イケメン君まで庇ってくれるのには驚いた。


「なッ!よもや勇者ともあろう者が、こんなゴミを庇うと言うのか!しかも、聖女までもが!!」


 うん、分かっていたけど、ゴミ扱いって…ホント、(モブ)の扱いて酷いよな…。


「ブルタスよ、もう黙らぬかッ!!」

「し、しかし、王様…。」

「勇者殿、それから聖女様、この者が失礼しました。

 ですが、我が国も、それだけ追い込まれているのも事実なのです。」

「なるほど…だけど、流石に処刑はやりすぎじゃね?

 俺が王様だったら、幾ばくかの金と食料持たせて追放すると思うけどね?

 その後、どうこうなったとしても、それはもうあんたらの責任(・・・・・・・)じゃないよね?」


 なんと言うか、庇ってくれたのはありがたいが、内容が交渉どころか、半ば脅しである。


「そ、そうであるな…うむ、ならば誰か、この者に食料と金を与えよ!」

「あ、ついでに武器も与えてやってよ!他の人に、身を守る物も与えないってバレたら、国の尊厳(そんげん)に関わると思うし。」

「はぁ…勇者の言う(その)様にいたせ…。」

「「「ハッ!」」」


 王様の言葉に、何人かの兵士が動く。

 しかし、このイケメン君、僕の事なんてアウトオブ眼中なのに、何故、ここまでしてくるんだ?

 だが、その疑問は、すぐに解ける事となる。


「ほら、お前も手を貸すから、さっさと立ちな!」


 そう言って近付いてきて僕を立ち上がらせるイケメン君。

 だが、起こそうとする力が強すぎて、態勢を崩してイケメン君へと抱き付いてしまう。


「黙ってよく聞け!どうもこの国の様子はおかしい…だが、現状、俺や河合さんが動くには監視の目が厳しいだろう。

 そこで、お前を追放する事で監視対象から外す事にした。

 まぁ、それでも口封じで狙われるかもしれないから、そこは頑張って逃げろ。

 で…だ、俺達が逃げ出した時に隠れるた為の拠点を用意してくれ。

 あと、結局、役立たずだったが元の世界で河合さんを守るとしてくれて、助かった。

 それがなければ、今頃どうなっていた事か…。」


 イケメン君は、他の人に聞こえない様に、小声…しかも早口で一気にまくしたてる。


「そ、それって…。」

「ったく、いつまで抱きついてやがる、この役立たずがッ!!」


 『ドンッ!』と衝撃が来たかと思うと、僕の身体はイケメン君から離れた場所へと吹き飛ばされる。

 なるほど、今までの態度は全てではないにしろ、演技と言う訳か…。


「こ、光輝君!?あの…大丈夫ですか?」


 イケメン君に突き飛ばされた僕に驚いた河合さんが、慌てて駆け寄ってくる。

 とは言え、驚きはしたが僕にダメージはない。

 おそらく、この国の人達を油断させる為の演技だ。

 その証拠に、周囲の人がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。


「だ、大丈夫ですよ…コレはあいつの演技なんで…。」


 と、河合さんにだけ聞こえる様に、小声で答える。

 そうこうしている内に、先程の兵士達が戻ってきた。


「数日は暮らせるだけの金と食料、武器としてナイフを用意した、受け取れ!」


 兵士達はそれらを投げて渡す。

 まぁ、食料に関しては袋に入っているので問題はないが、問題はお金である。

 『チャリチャリーン!』と、兵士が投げたお金が周囲へと跳ねる。


 なるほど、そう言う事(テンプレ)か…。

 何がしたいのか瞬時に理解した僕は、あえて情けない姿を見せるフリ(・・)をする。

 つまりは、必死になってお金を拾うフリだ。

 案の定、その行為は正解だった様で、周囲から声を抑えない笑声が聞こえる。


 そのお陰で、周囲の目は僕に引き寄せられ、逆にイケメン君達からは外れる。

 次の瞬間、イケメン君が河合さんにそっと何かを告げ、河合さんの顔が驚きを見せた。

 もっとも、すぐに元の顔に戻ったので、見間違いだったのかもしれない。

 それから、僕は少し時間を掛けて、なんとかお金を拾い集めると立ち上がる。


「無様よのう…。」


 呆れる様に、王様がボソリと呟く。

 残念ながら、その意見については僕も同意見だ。


「さて、それではお主にはこの国から出て行って貰う。

 よいな、二度とこの国に来るでないぞ!」


 こうして、僕は、お城から追放されたのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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