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35歳、年下御曹司に本気で溺愛されていました  作者: 真夜中さん


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蓮と圭介



「——その手を離せ」

蓮の低い声が、狭い廊下に響いた。


圭介の手が、反射的に強くなる。

痛い。


でも、光莉は声を出さなかった。

出したら、蓮が崩れる気がした。


踊り場に立つ蓮は、息を切らしている。

スーツも乱れていた。


ここまで、走ってきたのが分かる。


なのに、目だけが異様に冷静だった。


圭介が、乾いた笑いを漏らす。


「……はは。こんなやつのために必死だな」


蓮は答えない。

ただ、光莉の腕を掴む手だけを見ている。


その視線に、圭介がわずかに眉をひそめた。


「離してください」


蓮が、もう一度言う。


静かな声。


でも。

逆らうこと自体を、許さない声だった。


「嫌だって言ったら?」


挑発するみたいに、圭介が笑う。

すると蓮が、少しずつ近づいてきた。


ゆっくり、逃がさないみたいに。


その圧に、圭介の力はさらに強くなった。


「光莉さん」


蓮の視線が、ようやく光莉の目へ向く。


その瞬間。

張り詰めていたものが、一気に揺らいだ。


「……蓮さん」


掠れた声。


「行くな」

圭介の低い声。

でも、その響きにはもう、余裕がなかった。


光莉は、震える息を飲み込む。

怖い。

足も、うまく動かない。


でも。

——帰りたい。


その気持ちだけは、はっきりしていた。

蓮が、あと少しのところで止まる。


「光莉さん」


呼ばれる。

優しい声だった。

ここに来て初めて、いつもの蓮の声。


「こっちに来て」

その言葉で、

さらに涙が止まらなかった。


圭介が、苛立ったように言う。

「お前さ、何なんだよ」


蓮は、初めて圭介を見る。


「この人を迎えに来ました」


即答だった。迷いがない。


その言葉に、光莉の胸が熱くなる。

迎えに来てくれたんだ、、

——私を。


圭介が、鼻で笑う。

「は?光莉は俺の——」


「違います」


被せる蓮。


蓮の声が鋭くなった。


圭介が、一瞬黙る。

蓮は、「あなたのものじゃない」と言い放った。

空気が、ぴん、と張る。


圭介の指先から、わずかに力が抜けた。


その瞬間。


「っ……!」


光莉は、腕を振り払った。

圭介の指が、空を掴む。


息が止まりそうになった。

そんなことよりも走った。


数歩だけなのに、やけに遠かった。


「光莉!」


後ろから、圭介の声。


でも次の瞬間。


蓮の腕が、光莉を引き寄せた。

強くじゃない。

壊れ物を扱うみたいに、

そっと。


「……もう大丈夫です」


耳元で、優しい声が聞こえる。

その瞬間。光莉の中で、安堵が芽生えた。

足から、力が抜ける。

蓮が、すぐ支える。


「迷惑かけて、ごめんなさい」

小さく、苦しそうに光莉が呟いた。


「怖い思いさせてすみません」と言ってくる蓮。

光莉は、首を振る。

言葉にならない。

こんなことに巻き込んでしまったのは私なのにと思う光莉。


ただ、蓮のスーツを掴む。

離したくなかった。

その手を、蓮が包み込む。


まるで、


“もう離さない”とでも言うみたいに。




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