第9話 流星雨
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もうすぐシンキョウトに帰り着くという時、私たちはいつもと変わらない日常を過ごしていた。ところがある日、食事中に艦が大きく揺れた。
艦の揺れは断続的に続き、照明も消えたりついたりした。
艦のあちこちから悲鳴が聞こえる。
我々はミサ軍曹のところに向かった。
「班長殿、何があったのですか」
「私にもわからん。いま整備隊長が確認中だ。隊長より命令、第二種戦闘配備とする」
第二種戦闘配備になると、平時は1班5時間勤務が、同時に3班が15時間勤務に就くこととなる。
予備の修理ポットを起動し、我々は戦闘配備についた。
モニターから艦に何かが次々とぶつかり、破損していることが分かった。
我々は壊れたところを修理していったが、それ以上に破損個所が増えている状態だった。
整備隊長が戻ってきた。「現在、本艦は流星雨の中を進んでいる。我々の任務は艦の損傷を直ちに修理し、本艦の運行に支障をきたさぬようにすることである。これより第一種戦闘配備とする」
第一種戦闘配備になることで、5班すべてが任務に就くこととなった。
私は整備隊長に呼び止められた。「ヤタ訓練生、直ちに航宙班に出向するように。これは命令である」
「了解しました。直ちに航宙班に出向します」
おそらくこの前の模擬戦の件で目をつけられたのだろう。まあ、艦が沈んだら恋人や娘たちにも危害が及ぶし、ここは頑張らないとまずいかな。
「ヤタ訓練生、命令により参りました」航宙班につくと、ハチの巣をつついたような騒ぎになっていた。中型の戦闘機がデッキにおいてあり、整備兵たちが必死の形相で群がるように点検、整備を行っていた。彼女たちの指揮を副長の安田大尉が行っていた。
「ヤタ訓練生よく来てくれた。現在外は流星雨の嵐が来ている。中には一発で本艦を破壊するような岩石もある。それを除去し、本艦の安全を守るのが君の任務だ。君にはあの戦闘艇にユウとユアと一緒に乗ってほしい。頼めるか」副長が言った。
「わかりました」私は即座に答えた。
「すまない。本当は戦闘機班の班長が出るべきなのだが、あの訓練以来薬が手放せなくなっていて、操縦桿をにぎれないそうだ。他の訓練生の技量では、戦闘艇で出たとたん戦死だ。訓練生の中で一番と二番目に優秀であるユウとユアも君と乗りたいと言っているしな」少し苦笑いしながらいった。
「「パパ、死ぬときはいっしょだね」」ユウとユアは緊張の面持ちで固い笑顔を浮かべながらいった。
「大丈夫。死なないから」「でも私たち中型艦は初めてだし、外は流星の嵐だよ」ユウが言った。「大丈夫。それでは、砲手はユウ、レーダー及び通信手はユア、パパは操縦とレーザー砲を担当する」「「了解しました」」
我々は流星雨の中に飛び出した。これでも弾幕の嵐の中を生き抜いた兵士だったのだ。この程度の流星雨ぐらい大丈夫、そう自分に言い聞かせて艦を操縦しながら、進路の邪魔になっている小さな岩をレーザー砲で破壊していった。
ユウは母艦に衝突しそうな大きい流星にミサイルを飛ばし、ユアはそれをサポートした。
どのくらい時間がたったのだろう。とにかく操縦に集中していたため、時間がたつのも忘れていた。
気が付いたら流星雨は終わっていた。
我々は急いで母艦に向かった。艦はかなり破損していたが無事だった。
三人は胸をなでおろし、無事を祝った。
その時ユアから「艦より通信です。至急帰投するようにとのことです」とあった。
流星雨は無事に通過したし、どうしたのだろうと思いながら艦に戻った。
「ヤタ訓練生任務ご苦労。申し訳ないが、私と一緒に艦橋に来てくれ」副長から言われ何ごとかと思いつつ、艦橋に向かった。
「ヤタ訓練生、すまない。君が最後の望みだ」艦長からそういわれた。
「現在本艦は位置計測システムを破損しており、また流星雨から逃れるため、航路から大幅に外れている。そのため、現在位置が全く分からない状態となっている」副長が話し始めた。
「遠距離通信システムも流星雨の影響と機器の破損でまったく使用できない状態となっている。近距離通信は修理できたが、まったく応答がない。つまり我々は宇宙の迷子になってしまった。このままやみくもに艦を動かしてもどうにもならないことは明白だ。そこで君のことを思い出した」
「君が乗ってきた船は君を船から救出した時確認したが、位置計測システムを積んでいなかった。君はシステムに頼らなくても船を航行できる技術をもっているのではないか?」
私がいた時代には位置計測システムはあったが、この時代の物と比べるとかなりお粗末なもので、おまけに桜花には位置測定システムは積んでおらず星図と航路だけで進むしかなかったからな。当然正確ではないし、習熟していない者がすると全く計測結果が違ってきてしまう。
「星図は確認できますか?あと最後に計測した位置は」
「それは大丈夫。これが星図で、これが最終確認位置だ」
そこまでわかればそんなに難しくない。私は最終位置と現在見えている星の配置、経過時間や星図から本艦の位置を割り出した。「多分ここだと思われます」
「確かかね」
「ほぼ間違いないかと」
「艦長、信じるしかないです。とりあえずこの位置から一番近い場所を目指しましょう」艦は一番近くの居住惑星に向かって動き出した。
しばらくして近距離通信からの応答があった。
艦橋は歓喜の声に包まれた。「ヤタ訓練生、君は我々の命の恩人だ」艦長は私に向かってそういった。
「ありがとうございます。それでは原隊に戻ります」「うむ、ご苦労、本当にありがとう」
副長はいった。
私は原隊に戻り、ミサ軍曹に報告したのち、ベットに転がった。疲れた。本当に疲れた。
そのまま眠りにつこうとした時、体の上にどすんと何かが乗ってきた。
「ヤタくん~」「ヤタ」「あんた」3人が欲情した目で私を見ていた。どうも初めての戦闘行動で生殖本能が刺激されたらしい。まだしばらく寝れそうもないな、とその時思った。
シンキョウトに着いた我々は、訓練生としての卒業式を迎えた。途中から加わった私もなぜかその中に加わっていた。
「私はここにいていいのだろうか」小声でアイにきいたところ、「問題ないよ~、むしろいないと大変なことになるよ~」アイはニコニコしながら言った。
「今回の訓練航海はいろいろアクシデントがあったが、それだけ君たちにとって重要な経験をしたということだ。この経験は今後の軍務に役立ててほしい」艦長はそういった。
「なお、今回の航海で君たちは訓練生より一等兵士に昇任した。また、航宙班の訓練生は伍長に昇任する。軍人として恥ずかしくないよう今後の任務にあたるように」
「なお、今回の航海で、成績優良、勲功大なものは特別昇任がある。今から順番に読み上げる」成績優良者が何人かの名前が呼ばれた。ミィも成績優良者として上級兵士に特別昇任した。
「ユウ訓練生、ユア訓練生」「「はい」」
「君らは流星雨の中、中型艇に搭乗し、多くの流星を撃破、艦を救った。この功績から特に勲功大として特別に三等軍曹に昇進、首都防衛隊に正規パイロットとして配属する」
どよめきが起きた。かなり特別なことなのだろう。私も娘のことなのでうれしくなった。
「そして最後に」艦長は言った。「ヤタ訓練生」
「はい」えっなに?
「君は途中から訓練参加したにもかかわらず成績優秀にして、流星雨撃破、艦の破損に伴う危機的状況を救うなど、その勲功は大である」
「軍本部も君の功績に着目し、報奨金の授与と少尉へ昇進させることとなった」
いきなり大歓声が上がった。アイ、マイ、ミイ、ユウ、ユアの五人が抱きついてきてももみくしゃになった。艦長は苦笑しながら「興奮するのはわかるが、皆静かにするように」
「なお、これより君たちには3週間の休暇が与えられる。各々静養し、新たに任命された軍務に従事して活躍してほしい。それでは解散」
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