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第18話 クリス共和国との交渉

毎日18時に投稿します。お読みいただければ幸いです。

 クリス軍のサードナイト大尉はデジマの中にある特殊牢に閉じ込めていた。脱走ができないよう工夫を凝らした房でもともと宙族や極悪人用に作られたものだった。服や持ちものはすべて没収した後、ミズホ製の下着と服を支給したが、最初のうちは服を返せ、こんなもの着れるかと暴れていたそうだ。


 食事もとらずひたすら叫ぶか暴れるかだったが、3日を過ぎるぐらいからおとなしくなり、服を着て食事もするようになった。ただ、後ろを向いて話しかけても全く反応しないそうだ。

 没収したクリスの軍服や下着を精密に調べたところ、武器や小道具があちこちに隠されており、とても返却できる状態ではなかった。小物は確認した結果、特に問題のないものだけ返すことにした。


 「それじゃ私が返してくるついでに話をしてみるよ」

 「それは危険です。私が行ってきます」ずっと捕虜の面倒を見てくれていた齋藤伍長がいった。彼、齋藤伍長は神風特別攻撃隊で部下だった齋藤軍曹の子孫らしい。

 「いや、私が行って、何かのきっかけで口を開いてくれればと思ってな。何せこのままここに置いておくわけにもいかないが、さりとて敵対的なものをピトケアンに連れて行くわけにもいかない。クリス軍の動向も気になる」

 「分かりました。それでは私と妻たち数名と同行します。お会いになるとき隠れて様子を見ています。何かありましたら飛び出してお守りします」齋藤伍長が心配そうに言った。

 「すまない。よろしく頼む」


 サードナイトの監獄の前まで行って声をかけた。とりあえず牢の前には私だけだ。あとの部下たちは隠れて私たちを見ている。

 「よう、元気にしているかい」私が呼びかけたが、後ろを向いたまま答えない。

 「君の私物のうち確認が取れたものを返しに来た。この袋に入っている」と袋を牢の中に入れた。その途端、サードナイトは素早い動きで袋をひったくり中の確認を始めた。

 「あった!よかった」サードナイトは嬉しそうにいった。

 「なにをそんなに慌てているのかい」

 「ふん!きさまにも特別に見せてやろう。この写真は私の偉大なご先祖様とその仲間たちが移っているものだ」

 写真には惑星開発公社時代の同僚と自分が写っていた。

 「ああ、ジョン・サードとウイリアム・ミロー、芦川誠じゃないか。なつかしいな」

 「えっ、なんで名前がわかるのだ?おまえどこかでこの写真を見たことがあるのか?」

 「だってこの写真撮った時にここにいたからな」

 「うそをつくな!200年前の写真だぞ。お前がここにいたはずないだろう」

 「嘘じゃない。現にここに私が写っている」

 「えっ、ちょっとよこせ」写真をひったくるとまじまじと私の顔と写真を見比べていた。そしてびっくりした顔で言った。「うそ、そっくりだ。そんなばかな。おいお前、お前は何者だ」

 「九頭一史、元惑星開発公社勤務、その後大和独立戦争にて兵士として参戦、神風特攻隊の桜花搭乗員としてヴィシー作戦に従事したが、作戦中敵の攻撃に会い、宇宙を冷凍睡眠にて放浪中、つい最近救助されたが死刑になりそうなので逃げだした脱走兵だよ」

 「えっえっ九頭一史、ご先祖様の友人だった九頭一史様ですか?なんで脱走兵なんですか?」サードナイトはびっくりして聞いてきた。


 「どうも私は地球共和国に通じて、特攻作戦を台無しした内通者として永久指名手配を受けているんだ」そう言って、「当然裏切るようなことはしていない。でも、覆すだけの証拠もない。だから、サルガッソーに独立国を作って、逃亡生活しているんだ」九頭は言葉を続けた。


 「君はジョン・サードの子孫かい?たしかにジョンとは仲が良かったよ。不死身のジョンと言われてね。危険な場所でもお構いなく宇宙船で盛り込んでいって悠々と帰ってくる男だった。私がいなくなった後、彼はどうしたんだい」

 「そうなんですよ!不死身のジョンと言われていたんですってね。我が家には代々ジョン様の手記が残されていて、そこにそう書いてありました。」

 「ジョン様はヤマトが独立を勝ち取つたと同時に義勇軍を立ち上げて、その創立メンバーの一人となり、クリス独立の大きな力となったのです。その功績もあり、我が家ではナイトの称号をいただきサードナイトを姓とするようになったのです」

 「そうなんだ。ウイリアムはどうなったか知ってるかい?」

 「ウイリアム・ミロー様もともに義勇軍に加わり、その功績によりやはりナイトの称号をもらい、我が家とは友好関係にあります」


 「もしかして、ミローの妹のジュリアとジョンが結婚したのではないかい?」

 「何で知っているのですか?そんな身内の話はクリスでも知っているのはサードナイト家の一部とミローナイト家の一部だというのに。」

 「ジュリアはジョンのことが大好きだったからな。いつも追いかけまわしていたし、彼が危ないことをするとめちゃくちゃ叱っていたからな。」

 「あはは、ジョン様の日記によく怒られていたことが書かれていました」

 「ジョンはよくぼやいていたからな」私はおもわずにやけてしまった。


 「ところで九頭様、私子供の時から九頭様に憧れていました」サードナイトは目をらんらんと輝かしながら言った。

 「ええっと、どうしてかな?」

 「ジョン様の日記に書かれていました。一史は親友だと。自分についてこられる技量を持つものは九頭、ミロー、芦川の3人だけだ。そのうち一番の技量を持つのは九頭一史で、よく一緒に無茶をしたとありました。」

 「その日記を読み、写真を見て、幼いころからずっと憧れていました。これは運命だと思います。私と結婚してください。」熱を持った目でサードナイトは言った。

 「えー申し出はありがたいけど、すでに私には妻がいるのだよ」

 「ああ、クリス人の女ですね。別れてください。」

 「それは無理、それにそのほかにヤマト人の妻が5人いるからね」

 「それでは今6人の奥さんがいるのですか?」

 「一夫多妻はヤマトでは今は一般的だそうだ。いつの間にか増えてしまい、6人になってしまった。でも別れる気はないぞ」

 「クリスでは原則一夫一婦制ですが、最近は出生数の関係で一夫多妻も認められてきています。仕方がありません。本妻ということで手を打ちましょう。」

 こいつは話を聞く気ないのか?それとも思い込みが強いのか?


 「結婚の話は置いておいて、とりあえず君の身をどうするかだ」

 「君なんで言わず、マーガレットと呼んでください。旦那様♡」

 態度が手のひらを反すように急に変わった。頭痛い。

 「とりあえず、敵対意思はないと考えていいですね」これ以上話を進めても意味がなさそうなので、少し強めに行った。

 「はい♡」

 「それではクリス軍と連絡を取りたい。通信機を使用させるので、クリス軍本部と連絡を取ってほしい。お願いできるか」

 「そうですね。結婚するのですから、軍に許可を取らなくちゃいけませんわね。あと実家にも。式はクリスの首都ロンディウムのカーペンター大教会であげましょう。それから…」


 「すまないが、個人的なことは後にしてもらえるとありがたい」だめだこいつ。そういえばジョンも人の話を聞かないところがあったが、これはサード家の遺伝か?

 「まずはわがミズホ国の存在を知らしめることと、マーガレットが捕虜になっていること。国交を結ぶ用意があるかどうかの確認をしたい」

 「そうですね、ミズホは旦那様の国ですから一緒に住むとして、私の実家と行き来できた方がいいですものね」マーガレットは満面のほほえみでいった。


 マーガレットは通信機を使い、この星域のクリス軍本部に連絡を入れた。

 「マーちゃんなにをやっているの!心配したんだから。イムの捕虜になっているの?すぐに助け出すからね」

 いきなり通信機に出たのはマーガレットと同じぐらいの年齢の人形のように整った容姿をしている女の子だった。ただ、髪はぼさぼさで目の下にはクマができていた。服はよれよれになっていてとても疲れている様子だった。

 「ミーちゃん元気だった?あのね私結婚することにしたんだ」

 「結婚!どういうことよ。説明しなさい」

 「子供の時から話をしていたじゃない。私たちのご先祖様が仲良くしていた九頭一史様のこと。昔から憧れていて、大きくなったら結婚するって言っていたじゃない」

 「ええ、二人で一緒に九頭様のお嫁さんになるんだってよくいっていたわね」

 「そうなの。実際200年前の人で戦死してしまったってお父様から聞いて、あきらめていたのだけど、本物が生きていたのよ。夢がかなったの」

 「ちょっとどういうこと?」


 「ええっと、通信を代わってもらっていいかな。初めまして。九頭一史と申します」

 「えっ」女の子は急いでポケットから手帳を取り出し、そこに挟んでいた写真と私を何度も見比べた。

 「そっくりだ。どうして200年前の人が生きているの?戦死したはずじゃないの?」

 私はマーガレットに言ったのと同じことを話した。さらにいくつか質問され、それに答えた。

 「本物ですね。ご先祖様のことをよく知ってらっしゃる。それでマーガレットと結婚するのですね」きらきらした目で私を見ながら言った。

 「いや、その前にいくつか申し伝えたいことがある」私は咳払いをして、まじめな顔で言った。


 「1つ目は我々はミズホ王国という国を興して、私が総統兼軍司令官を務めている。クリス連邦は我が国を独立国として承認し、国交を結んでほしい」

 「2つ目はクリス系ミズホ人についてだが、我が国に遭難により来たものやイムとの捕虜交換、今回の戦闘により捕虜となったものが希望によりわが国民となっている。これらを認めていただきたい」

 「3つ目は、このサルガッソー辺境宙域はミズホ領であることを承認してもらいたい。以上が承認されればマーガレットを帰還させる」

 さて、かなり難しい条件だが、どこまで飲むかな。


 「旦那様と一緒に実家の両親に会いに行かなくちゃいけないの。ミーちゃんお願い」マーガレットは手を合わせて相手の少女にお願いをしていた。

 少女は表情をまじめな顔に戻し、「それは九頭様が指揮する組織をクリスが国として認めろということですね。即答はしかねます。上層部に確認をとり、正式に対応いたします。」といった。

 「九頭様、ある程度はっきりしたお答が出ましたらそちらに伺いますね」

 「あなたが直接来られるのですか?」

 「ええ、マーガレット・サードナイト大尉の様子も知りたいですし、あと自分の夫となる人の顔を直接見たいですので」ちょっと待て、いまなんていった。

 「あっ、申し遅れました。私はミレニア・ミローナイト大尉です。マーガレット・サードナイト大尉とは幼馴染で親友です」満面の笑みで少女は答えた。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。


今回投稿分が終わりましたら、一旦話を切りたいと追います。正直、どれだけ読んでいただけるか、すごく不安なのです。状況を見て、だめだと思ったら、打ち切りにします。読んでくださる方が多かったら、話を続けて行こうと思っています。どうかよろしくお願いいたします。

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