表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

3 (world code : time)

ポータルが無くなった先には小麦色の草原が広がっていた。そしてかゆが周りを見渡すとかなり遠くに小さく家が見えた。


(あの家以外何も無い。とりあえず向かってみるしかないかな。)


かゆは小麦色の草原を家に向かって歩き始めた。


-------------------------------------------------------------------------------------


途中何かがあるわけでもなく家に着いた。再度周りを見渡してみてもこの家以外に建物も人も何も無い。


(なんで、他に何も無いんだろう?空も無い。あるのはこの草原だけ。とにかくこの家に入ってみよう。)


かゆはまず家のチャイムを鳴らし、人が住んでいるか確認をする。


ピンポーン

「こんにちは。誰か居ませんか。」


かゆが少し待っていると玄関が開き、中から女性が出てきた。


「誰…かしら。」

「えっと、私ゆうりんか かゆって言います。人を探しているのですが…」

「かゆさんね。中で少し待っていて。お茶の準備をするから。あまり歩き回ったりはしないでね。」


大人の女性はそう言うと奥の部屋へと入って行った。


(あの人にはああ言われたけど、情報が全く無いっていうのもね。)


かゆは家の探索を始めた。


-------------------------------------------------------------------------------------


幸い、女性に気付かれる事は無かった為問題無く探索は進んだ。それで分かった事はこの家は二階建てであることと、あまり賑やかな生活はしていない事であった。まだ女性も戻って来ない為、探索を続けていると、リビングのカーペットの下から聞こえる音が一部違う事に気が付いた。


(ここだけ、空洞音がする。)


かゆがカーペットを剥がすとそこには下に続くであろう木製の扉があった。


(確かめない訳には…いかないよね。)


かゆはそっと扉を開け、地下へと入って行った。


(意外と暗くないな。)


地下の通路には豆電球で明かりが確保されているようだった。天井にはいくつもの電線が這っている。しばらく進むと小部屋に出た。そしてそこには…


「…なにこれ。」


複数の白骨死体が並べられていた。


(これ、もしかしてあの人が?)

「あまり、歩き回って欲しくはなかったんだけどな。」

「!?」


かゆが振り向くとそこには少し困った顔をした女性が果物ナイフを手に持ち立っていた。かゆは即座に短剣を召喚し戦闘態勢を取った。


「ま、待って待って!別に私はあなたに危害を加えようとは思って無いわ!」


女性は慌ててかゆをなだめた。


「詳しい話は上でしたいのだけど…どうかしら?」

「とりあえず、この死体についてだけ説明してもらってもいいですか。」


かゆは警戒を解かず女性を睨む。女性は少し悲しそうな顔をして話した。


「ここにある死体は全部私の友達だった人達だったの。皆死んじゃった。この世界に囚われて…ね。」

「世界に…囚われる?」

「…詳しい話は上でしましょう。ちょっと…長くなるから…」


女性は来た階段を戻っていく。かゆももう警戒する必要は無いと判断し、部屋から出る前に黙祷を捧げてから女性を追った。


地下から出た二人はリビングのテーブルに向かい合っていた。テーブルの上にはお茶と皮の剥かれたリンゴが置いてある。しばらく沈黙が続いていたが、女性の方から話し始めた。


「私の名前はひょうり かおり。漂うに里、香ばしいでかおりと読むの。昔は地元の学園の生徒でね、ゲーム部の副部長を務めていたの。あそこにあった骨も元々は皆ゲーム部の部員だった。皆気のいい人達だったのに…先に行っちゃった。」

「あの、その学園って狭間学園…だったりしますか?」

「もしかしてあなた、あの世界から?」

「はい。」

「…そう。」


少しの間沈黙が続く。


「あなたは早く元の世界に戻った方がいいわ。この世界に囚われてしまう前に。」

「それは受けた依頼を達成してからですね。」

「依頼?」

「はい。女の子を助けて欲しいと依頼されて私はここにいるんです。」

「そうなの。でも残念ながら私は帰れないわ。依頼主にもそう伝えて。私は戻れたとしてももうあの世界では生きていけないわ。」

「どうしてですか?」

「もう長い事私は生きてきたから。もう生きる事に疲れてしまったの。不老になっても人は死ぬと聞くけれど、今ならその意味がよく分かるわ。」

「そうですか。できる事ならあなたも共にと思いましたが、仕方ないですね。」

「えぇ、それじゃあ依頼主によろしくね。お見送りするわ。」


かおりは席を立ち玄関に向かう。かゆも席を立ち先に歩くかおりに声を掛ける。


「私は依頼をこなしてじゃないと帰りませんよ?」

「え?でも私は帰れないって…」

「あなたが帰る気が無いのは先程のお話でよく分かりました。でも…」


かゆは確信を持って告げる。


「他にも、誰かいますよね?」

「!!」


かおりは驚いた顔をしながらもかゆに聞く。


「どうして…そう思うの?ここには私以外誰もいないよ?あなたもこの家を調べて回ったでしょう?」

「はい。大分調べたと思います。でも…」


かゆはこの世界に来る直前を思い出す。それはゼロと話していた事の内容だった。


『ある世界に囚われてしまった女の子がいるの。その子を助け出して欲しいの。まぁ、あなたに頼むことは簡単ですわ。眠っている子を起こして連れ帰ってくれるだけでいいの。』

『捕まっているとかじゃなく?』

『えぇ。眠っているだけ。』


あの時ゼロは『眠っている子』と言った。この世界に来てから起きている人、死んでいる人は見てきたが、眠っている人は見かけていない。あの賢そうなオーラを放つゼロが勘違いするような事を言うとはかゆには思えなかった。


「眠っている女の子が…いませんか?」

「…ねぇ、その依頼主って誰?」


かおりは複雑な顔をして問いかける。かゆは特に気にせず答えた。


「ゼロに頼まれました。」

「…ゼロ?ゼロ………まさか!?」


女性はかゆに近づきかゆの肩を掴んだ。


「ねぇ!ゲーム部ってまだ残ってるの!?」

「は、はい。ゼロしかいませんでしたけど。」

「ゼロってもしかして白髪のロングだった!?」

「はい。白髪でした。髪は縛っていたけど…すみません。気持ち悪くなるので揺らすのは止めて下さい…。」


かおりはすぐに手を離す。かゆは少し気持ち悪くなりながらも立っていた。かおりはそんなかゆの手を掴み頭を下げてきた。


「ごめんなさい。隠し事してしまって。あなたの言う通りここにはもう一人女の子がいるわ。依頼されていたのは元々あの子の方だったのね。」


かおりはそのまま顔を上げるとかゆの手を引いた。


「ついてきて。あの子の所に案内してあげる。」


-------------------------------------------------------------------------------------


来たのは二階の一番奥にある物置部屋。かおりはかゆを連れて部屋に入ると壁の一部を触りだし、手探りで何かを探始めた。


「この辺のはず…あった!」


少しするとかおりが触っていた壁の一部がへこんだ。すると突然天井の一部が開き、そこから折り畳み式の梯子が降りてきた。


「屋根裏部屋…なるほど。これは気付かなかった。」

「すごいでしょ。昔あなたの他に人が来たとき、あの子を害そうとした人がいたの。だから人目のつかない所に匿ったの。」

「だから私にも隠していたんですね。」

「そうなの。私はどうなってもよかったけどあの子は、あの子だけは守らないといけなかった。あの子は、まだこの世界に囚われていないから。」

「そういえば、その世界に囚われるって、どういう意味ですか?」

「そういえば話してなかったわね。この世界はね、長く滞在すればするほど…自分の時間が歪んでいくの。」

「えっ?それはどういう?」

「あの地下の部屋を思い出して。何かおかしいと思わなかった?」


かゆは地下で見た光景を思い出す。白骨死体がある事に驚いて他の事に意識は向いていなかったが再度思い返してみると不審な点があった。


「骨に外傷は無いのに朽ちていた時間がバラバラだった。それに全部大人のサイズだった。」

「みんな…殺された訳でもなく、病気で死んだ訳でもない。あの死体の死因は全部…時間の経過による衰弱死なのよ。」

「そんな!」

「みんなこの世界に来たときはほぼ同い年、良くて1、2年しか違わないのに…バラバラに歳をとって、バラバラに死んでいった。中にはもう骨が残ってない人もいるわ。」


かおりはとても悲しそうに語っている。かゆはひとつ疑問に思ったことを聞いた。


「かおりさんは大丈夫なんですか?先程の話だとかなり長い間この世界に居るという話になると思うのですが。」

「あぁ、確かに私は長い間この世界にいるわ。だけど今は、私の時間はね、止まっているの。あの子のおかげでね。」


梯子を登り切り、二人の視線の先には、大きな機械が置かれていた。二人が近づき中を覗くと、白髪の女の子が眠っている。


「この子がきっと、そのゼロの言っていた子。ゼロを作った張本人。しらもり れいよ。」

「この子が…」


こうしてみるとかおりに言われた事も偽りでは無いと直ぐに分かる。それほどまでにゼロとそっくりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ