表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/6

6.ネタ切れにつき結婚します

 僕と史佳で動画をあげるようになってから、僕自身の動画投稿はストップした。


 動画を投稿しようにも、史佳との撮影で時間が取れない。というより、史佳との動画撮影自体が僕の生活の一部になった。


 一度だけ、史佳が一人で撮影した動画をアップロードしたことがある。されど、それほど再生数が伸びなかった。


 ある程度工作により、再生はされたものの実際に見てくれた人は少なかったようだ。


「やっぱりみつがいないとダメみたい」


 幼馴染の言葉が僕の胸に刺さった。史佳にとって、僕は必要不可欠な存在になったらしい。


 たとえそれが動画のことだけであっても、僕は史佳と肩を並べることができたような気がして嬉しかった。


 二人三脚での動画投稿は一年以上続いた。あっという間に僕達は大学受験を間近に控える高校三年生になった。


 ここで一つ問題が発生する。


 動画撮影に現を抜かし、勉学が疎かになったのかと普通は思うだろう。


 しかしそうじゃない。


 僕は史佳の家に入り浸るようになったおかげで、校條家の学習環境の恩恵を受けることができた。


 寧ろ以前より僕の成績は良くなっている。史佳も良い成績をキープしたままだ。


 なら何が起こったのか。それは作品を公開する人間が必ずと言っていいほどぶち当たる大きな壁。


 ――ネタ切れだ。


 動画も毎回似たような内容になってしまい、僕達は視聴者に飽きられつつあったのだ。少しずつではあるものの、再生数も落ちてきていた。


「どうしようみつ……。また下がってるわ。それに最近同じ人ばかりで、ご新規さんが見てくれてないみたい」

「うーん、どうしよう……」


 二人して腕を組んで考えるも、いいネタは思い浮かばない。


 やれることはやり尽くしている。大食いをしたり、ご飯を作ったり、遊園地――校條家が経営する――に行ったりもした。


「あ、そうだ! いい方法がある!」


 史佳が手をポンッ! と叩く。


「みつ、私達、結婚しましょう!」

「へ?」


 意味が分からない。どうしてそんなことになるのだろうか。


「どういうこと?」

「婚姻届を書いて、役所に提出するまでを動画にするのよ! そうすれば、きっと新しい人にも見てもらえるわ!」


 確かに一理ある。カップルが夫婦となるその過程を撮影すれば、インパクトとしては申し分ない。


 だけど……。


「偽の書類を役所に提出するのって、犯罪にならない?」

「何言ってるのみつ? 本物を提出するの! ほ・ん・も・の!」

「ええええええええええ!! じゃあ、本当に夫婦になるってこと!?」

「動画サイトの視聴者は嘘が嫌いでしょ? 私達、一回嘘がバレて炎上したことがあったじゃない。あの時は何とかなったけど、つかなくていい嘘はつかない方がいいわ」

「それはそうなんだけど……」

「それに動画のコンセプトも、カップルものから夫婦ものに変えられるわ! まさに一石二鳥よ!」


 ネタ切れから脱却を図る手段として、コンセプトを変えるというものがある。


 切り口を変えることによって、今までにはなかった発想も出てくるのだ。


「みつは私と結婚するの……嫌?」


 嫌じゃない。乗りかかった船だ。途中で降りるなんてまっぴらごめんだ。


 元々僕は史佳と結ばれたかった。動画のためとは言え、夫婦になることにためらいなんてあるものか。


「ううん」

「そっか、さっそく今から婚姻届を書く動画を撮りましょ!」

「分かった」




 ★★★★★




「HAHA! Ms.史佳結婚おめでとう。おっと失礼! 今はもうMrs.史佳だったね。HAHA!」

「えへー」


 史佳はサムに作戦が成功したことを報告していた。彼女のその表情は緩みに緩み、顔の筋肉は一切機能していない。


 長い時間をかけ、ようやく史佳は目的を達成した。惜しむらくはその喜びを分かち合う相手がサムともう一人しかいないことだろう。


「お嬢様、油断してはいけません。これからは妻として光宏君と添い遂げることになるのですよ」

「えへー」


 男喰らいのメイドが注意を促すが、史佳の耳に届いてはいない。


 美沙は史佳から結婚すると聞いて驚愕した。本当に史佳が動画で男を虜にしてしまうなんて思いもしなかったのだ。


 動画で光宏を依存させるという回りくどいやり方が上手く行くのか、実は美沙自身も半信半疑であった。


 されど、史佳はそれを成し遂げた。過去に美沙が史佳に耳打ちしたのはたったの一言。


 ――光宏くんと一緒に動画に出れば、新しい絆が生まれてきっと光宏くんはお嬢様から離れられなくなりますよ。


 これだけでよくここまでの結果を出せたはと美沙は思う。


「HAHA! Mrs.史佳見てごらん。これは僕はやったことじゃない。祝福のコメントが沢山きているよ。HAHA!」

「えへー」


 史佳は顔も名前も知らない人間からの祝福に、さらに浮かれるのだった。




 ★★★★★




 ――コメントが書かれました!


 @カメレオン撲滅委員会 : 本当に結婚して草。おめ。




 ――コメントが書かれました!


 @へるしおやん : またフェイク動画でしたね……。ってマジで結婚してる! おめでとう!




 ――コメントが書かれました!


 @消え去れ愚民共 : ふーみーの結婚には驚いた。確かにお似合いだとは思う。




 ――コメントが書かれました!


 @ゴンザレスゴメス239 : 結婚するとかないわ。もう少しカップルとしての二人を見ていたかったのに……




 ――コメントが書かれました!


 @マシンマジメイド : これは嘘の匂いがする……。みつがこんな美人な奥さんもらえるなんてありえない。




 ――コメントが書かれました!


 @井戸から出てきた蛙 : 役所に電凸したんだけど、マジで婚姻届提出してたみたいだわww。すごいなこの二人ww




 ――コメントが書かれました!


 @北見優成4ね : リア充死ね


最後まで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 完結お疲れ様でした♪ [一言] 作者さんの作品て、基本ヒロイン強(凶)キャラですが、いやーここまで自意識皆無でヒロインの言いなりで自分で何もせず、挙げ句にめんどくさい主人公って言うのも初め…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ