第36話 デート?
久々にやると、酔うタイプです。
ゲームを始めて数十分後、夏帆はソファにぐでんと倒れ伏して居た。
「うぅ〜、酔ったぁ〜!」
「あ〜、大丈夫?お茶飲む?」
暫く狩りを楽しんでた夏帆は、画面酔いをしてしまい、ダウンしてしまったのだ。
「うん……お願い出来る?」
「任せろ……って、もう飲んじゃってるのか。」
机に置いてあった、夏帆の飲みかけのコップを渡そうとしたが、中が空っぽなのを見て、新しく注ぎ直そうと冷蔵庫へ向かう。
だがその途中で、ストップがかかる。
「…雄貴君は、飲みきってるの?」
「え?いや、まだだけど。」
「なら、それをもらえないかな…。」
「……うん、まぁ別に良いけど。ほい。」
ぐでっとして、調子が悪そうな夏帆に、お茶が入ったコップを手渡す。
ー口は付けてるけど、まぁ本人が良いなら良っか。思春期真っ盛りな訳じゃ無いし、過剰に反応すればキモイと思われるしな。ー
口付けたところが、自身を向くように渡したので、関節キスとかは気にしないで済むだろう。
そう思い、油断していた雄貴は、思わぬ光景に目を奪われてしまう。
「……ごくん。」
コップを受け取った夏帆が、少し顔を赤らめたかと思うと、自身に向いてる方とは逆を正面にして飲み始めた。
ーなぁっ!?態々回転させやがった!?
……いや、ま、まさか、避けようとしてやっちまったのか!?なら、これは事故だ!本人には伝えないようにしないと。ー
顔が赤くなってくのを自覚しながらも、唇を一文字に結び、変な事は口走らないように気を付ける。
「……ふふ。」
「な、何かおかしい事あった?」
急に嬉しそうに、しかし恥ずかしさも混じった笑みを浮かべた夏帆。何か笑える事があったのだろうか。
「ううん。何でもないよ!それよりも、何かもう治ってきちゃった。」
そう言って、ぱっと立ち上がる夏帆。
「あ、大丈夫か…って、大丈夫そうだね。」
急に動き出したので、びっくりして支えようと動いたが、笑顔がいつもの元気な夏帆に戻っているようだったので、伸ばしかけた手を引っ込める。
「うん、心配かけてごめんね。」
「いや、別に謝られるようなことじゃないよ。にしても、ゲームには慣れてないみたいだね。」
「……うん。家だと一切させてもらえなかったし、今も定期的に確認されてるし。」
またしても、元気の欠片も感じない表情になった夏帆がポツリと漏らした言葉に、雄貴は一瞬だけ眉を顰めるが、すぐに戻して言う。
「そっか…。まぁ、俺の部屋になら、結構色々と取り揃えられてるし、したくなったらまた来ても良いよ。」
「え、良いの?」
「…あぁ、勿論。」
「やったぁ!ありがとう雄貴君!!」
「のわっ!きゅ、急に抱き着いて来ないでくれよ。色々と心臓に悪いからさ。」
心臓をバクバクさせながら、胸元に顔を擦り付けている夏帆の肩を叩く。
さっさと離れてくれという、意思表示だ。
ーいやいや、そんなに嬉しいんか!?オジサン的には、少しリアクションがオーバーな気がしますぜ!ー
雄貴はすっかり大混乱である。
「え?何で肩を叩いたの?そこは頭を撫でるところじゃ?」
雄貴の儚い望みは、物の見事に伝わらず、更にとんでもない要求をしてくる。
「ま、マジ?撫でないとダメ?」
「うんダメ!」
「う…。」
抱き着いたまま、上目遣いで見上げてくる夏帆。その表情に、思わずたじろいでしまう。
ー何この状況!俺にどうしろと!?ー
「…嫌なの?」
「……あ〜、うん、分かったよ。」
夏帆の懇願に、遂に耐えきれなくなった雄貴は、渋々首を縦に振る。小っ恥ずかしいから撫でたく無いのであって、夏帆が嫌な訳では無いのだから、何とか心を落ち着ければ、出来ないことは無かった。
「〜♪」
「……どう?」
しかし、こんな行為に慣れてない雄貴は、大丈夫なのか不安になり、手を止めて聞いてみる。
すると、手を止めたのが不満だったのか、じっと視線を向けてくる。
「んっ。」
「もっとやれと?」
短く言葉を返してきた夏帆に、苦笑いしながら応じてやるのだった。
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「……ん、もう良いよ。ありがとう!」
「そ、そうか。満足してくれたのなら、良かったよ。」
5分後、非常に満足した様子の夏帆に対して、少し疲弊した様子の雄貴が居た。
真正面から抱き着かれたまま、胸に顔を擦り付けられつつ、頭を撫でてやるというのは、案外クるものがあり、色々と自制が大変であった。
唯一の救いは、夏帆の身体があまり起伏に富んでいなかったという事であろう。
「また、してくれる?」
「……ん、まぁ、気が向いたらね。」
「やったぁぁ!」
ーぐぇっ!?ゲームやらせてやるって言った時よりも、すっげぇ喜んでね!?ー
一旦は離れてくれたものの、また撫でて貰える事に歓喜した夏帆が、また勢い良く抱き着いてくる。
「ちょ、ちょい、少しだけ苦しいから、緩くしてくれると嬉しいんだけど。」
「えぇ〜、こんなに良い筋肉してるんだから、少しくらいは大丈夫でしょ!」
『えへへへ』と、ふやけた笑みを浮かべをながら、雄貴の胸筋を指でつつく。
ーそ〜ゆ〜意味合いちゃうねん!てか、つつかんでくれ!ー
心の中で、全力で叫ぶ雄貴。
出かけるつもりでいたが、こんな感じでゲームしたりで、一日を過ごすのだった。
―出前をとった時、夏帆が大興奮してはしゃぎすぎて、また暫く抱き着かれたのは、ご愛嬌である。
さて、着火剤を買ってこよっと……(止めなさい)





