Recapture Strategy(15)
~Fort TATEYAMA Side~
LEGENDが撤収作業を始めたことで要塞付近の兵士たちの混乱が次第に収まり始め再び指令系統が復旧しつつあった。太平洋側では敵勢力を完全に抑え勢力圏を取り戻そうとしている。東京湾側の軍艦及び勢力は撤退し今戦闘は発生していない。しかしその間に機甲部隊一つと要塞の固定台が三つ、さらに小隊単位で数十は壊滅させられており、防衛としては大敗に終わっている。
それよりもせっかく確保した二人の人質を呆気なく奪還され、塩沢二等陸佐の顔は血の気が引き喋ることもできない。それもそのはず、このままでは全ての作戦は意味をなさなくなり処罰を受けることは免れないのだから……。
よって中川一等陸佐が全ての指示を出し事態の収拾に努めている。
太平洋側はほとんど無傷で第一から第四砲台までが全て稼働可能状態にあり敵艦大鳳に砲撃を加えている。
「まだ人質はこの半島の中にいる。敵艦を岸に近づかせなければまだ可能性は残されている!!」
保安局の中でも館山要塞の中川一佐率いる陸上保安局の部隊と東京沖で展開している海上保安局の艦隊が連携し防衛を行っているため、海上戦力の母艦一隻と潜水艦数隻を岸から遠ざけることは不可能ではないと考えていたからだ。
たとえ接岸されたとしてもその瞬間が隙となり最悪人質ごと沈めることも視野に入れているのだ。
砲撃戦から数十分、突如浮上を始めた潜水艦から発進された該当データなしの新型の戦闘機により横須賀からの航空支援が無駄に終わったが、未だ防衛の観点からすれば優勢であると考えていた。
館山半島は時間が経つに連れて敵の本隊を追い詰めている。
索敵部隊からちらほらと敵の目撃情報が流れてきたからだ。
「一佐、大鳳が信号弾を上げたとのことです」
「何か詳しいことはわからないのか?」
敵の資料からはその類の情報は一切ない。
だが砲撃戦は続いており、降伏を意味している訳ではなさそうだ。
考え込む暇もなくその理由は判明するのだ。
「海保局からの報告です。付近に所属不明の船団を発見したとのことです。尚、信号弾を受けて進路を変更した模様」
さらに別のルートからの情報でその船団が何を知ることになる。
「本部が船団の情報を持っていました。あれは船団護衛中のLEGEND第三機動艦隊です。タンカー、貨物船合わせて十五隻を護衛しているとのことです」
「つまり偶然通りかかったというわけか……、護衛船団の構成はどうなっているかわかるか?」
「戦艦級一隻、巡洋艦級二隻、駆逐艦級四隻、航空母艦級二隻とのことです。のち戦艦級と駆逐艦級が一隻ずつこちらに向かってきます」
あの信号は戦闘支援要請だったということだ。
「海保隊から、艦名は三笠型護衛艦 一番艦三笠、神風型護衛艦 四番艦冬風、どちらもLEGEND仙台司令部所属第三艦隊所属の第三戦隊とのことです」
「二隻だけですか?」
「報告ではそれ以外は船団護衛を続行し通り過ぎたとのことです」
「旧型の軍艦二隻程度ならば現戦力で何とかなるでしょう。こちらも砲撃を三笠と冬月に集中させましょう」
その直後館山要塞を激しい揺れが襲った。
「何がありましたか?」
「……第二砲台からの通信が途絶しました」
「南側展開中の第二十三小隊からの連絡です」
「回線を繋げ」
指令室に息切れたような音が爆発音を背景として聞こえだす。
『こちら第五小隊隊長菅野、第二砲台が敵戦艦を砲撃で使用不可能です。死傷者も多数でています。敵艦主砲は一発目でこちらを捉えています。このままでは南側はもちません』
塩沢二佐が中川一佐の方を向く。
「一佐、これは私がまだ下士官だった時に元自衛隊の幹部から聞いた話です。LEGENDの軍艦は見た目こそは旧型に見えるが中身は別物であると……」
「……その話からすれば、初弾が命中したのもまぐれではなくなるが、そう決めつけるのもまだ早い。敵艦が増えたと言っても高が二隻です。海保隊がどうにかしてくれるでしょう」
少し考えた後の結論であったが、その数分前に海上保安局の艦隊が撤退したことを知るのはこれから十分後のことだった。




