Recapture Strategy(13)
~Fifth Carrier Division~
龍鳳型護衛航空母艦 二番艦大鳳へ任務を終えた零戦が順次着艦している。旧型のデザインではあるものの蒸気式カタパルトを二基装備している。帝国海軍の軍艦の名前を取っているが、サルページ改修艦ではなく、昭和の後期に新たに建造された艦だ。
そのため竣工から約三十六年が経過しているが、十五年前に近代化改修が行われているため外装はとても綺麗だ。格納庫は二段あるが、近代化改修の工事でエンジンと電子装置を増設したことと艦載機に大型化の所為で搭載できる艦載機が少なくなっている。
飛行甲板の全長は約二百五十メートル、幅四十五メートル、両舷には四〇口径八九式十二糎七高角砲を四門ずつ装備している。またエレベータは後部中央、後部右舷、前部右舷の計三基設置されている。
現在戦闘機の着艦のために飛行甲板の照明が全て点灯している。戦場では中々見ることができない光景である。
船橋ではJu87C Stukaで出撃した少佐に変わって艦長の皐月東次郎海軍大将が指示を出す。歳は六十を過ぎ髪は全て白髪で杖をついている。
「第一次攻撃隊、随時着艦します。二番機と三番機は被弾している模様、消火班は甲板で待機してください。続いて少佐機が無人着艦します」
「第二次攻撃隊の発進はまだか?」
大将がゆっくりと問いかける。
「第二次攻撃隊、第一・第二カタパルトより随時発艦します」
「よし」
静かに頷いた。
「防衛省・保安局所属艦、たかつき型二隻、およびひうち型一隻、相対速度七十ノットで接近中、さらに横須賀基地から航空隊が発進した模様、レーダーが機影を十八機捉えています」
大将は少し考え込む。
「第二次攻撃隊を直衛隊に回せ、敵航空部隊と接敵までどれくらいある?」
「接敵まで三分です」
「第一次攻撃隊の着艦を中止、左転進九十度最大船速、水無月に音響通信、遅れるなと伝えろ」
「了解」
「第一カタパルトを閉鎖し第二次攻撃隊を通常発艦させる。第二カタパルトで試作戦闘機 F-X 橘花を出す」
橘花という名前は有名だろう。旧大戦末期に開発されて日本で初めてのジェット戦闘機だ。しかし名前は受け継いでいるものの全くの別物だ。現代に合うように設計された双発の戦闘機だ。三菱重工が開発中のF-3に類似した形状をしており、内部格納庫に空対空ミサイルを四発格納している。
「よろしいのですか? 橘花はまだ太平洋で運用していません」
「構わん、ここは出し惜しみをしている場合ではない。このままでは作戦部隊を回収することもままならん」
戦力差は明らかだ。こちらがいくら強襲揚陸艦とは言えども護衛艦がいない状況で、しかもF-15が出てきたとなれば、旧型の機体では制空権は取れない。さらに言えば艦載機は旧型が多いことに加えて艦載機数が少ない。
「第二艦隊西方方面隊所属、特潜あかりから音響通信です」
「何だ?」
「これより我が隊も戦列に加わるとのことです」
その直後前四百メートル海上に二隻の潜水艦が姿を現し浮上一分以内で晴嵐を計二機射出した。
さらに試作戦闘機 F-X 六花を蒸気カタパルトに固定する作業を始めている。
「第二次攻撃隊全機発艦しました。続いて橘花出撃します」
「少佐機無人着艦成功、第二エレベータで格納します」
第二次攻撃隊がF-15を牽制しに向かったが、F-15は六機編隊で、足止めできたのはたった六機だけ、残り十二機は艦首と艦尾から接近している。各六機ずつの隊列をなしている。晴嵐は護衛艦三隻に向けられているので、現在交戦可能なのは直衛に回した第二次攻撃隊だけだが、第二次攻撃隊は零式艦上戦闘機 五二型 五機であるため、F-15に簡単に突破されてしまうだろう。
F-15はギリギリまで接近せず、ミサイル射程に入った瞬間に一斉射したのだ。F-15艦前方の六機は横須賀の方角へ進路を変更したが、艦後方の六機はそのまま接近してくる。
「――――ミサイル接近、数二十四!!」
「回避取舵一杯、IRデコイ、チャフ射出、対空迎撃!!」
船体が大きく急速回頭するが転覆はしない。バラスト制御を行っているようだ。
『第二カタパルト準備良し、橘花発艦します』
「橘花一番機はF-15の迎撃にあたってください」
『了解』
橘花から通信が入る。カタパルトから橘花が発艦する。即座に転進して艦後方へ飛び去る。
ミサイルの三発は逸れたが残り二十一発が未だ接近している。
「――――乗員甲板から退避!!」
艦内アナウンスを流す。
ミサイルは大鳳へ真っ直ぐに進む。
―――――――――――ビュュュュ―――――ン!!!!!!!!
館山半島から突如発生した漆黒の粒子がミサイルを十八発迎撃する。残り三発中一発を対空砲迎したが二発が甲板に命中した。
「被害状況を報告しろ」
「後部甲板、左舷二番対空砲塔に命中、三名負傷、艦載機発着艦に問題なし」
「少佐から特別回線での暗号通信です」
『こちらの作戦は終了です。被害状況は?』
少佐は冷静でひどく冷たい声で問う。
「被害は軽微だ」
『そうですか、すぐにそちらに戻ります。それと艦長、零式機関の粒子残量は?』
補佐官が制御板を確認する。
「第三機関、粒子残量六十八パーセント、第四機関、三十六パーセントです」
『やはり再チャージまでは待ってくれなかったようですね。高速航行を中止し、雷撃に備えてください。十分以内に戻ります』
「なるべく早く頼む」
『了解しました』
その通信を聞いた乗員は少しだけ表情が緩む。
しかし、それも一瞬の出来事に過ぎなかった。
「高速水進音、二、魚雷接近!!」
「右舷アブソリュート展開三秒、第三機関の出力を全て防御に回す」
「……アブソリュート展開します!!」
右舷の側面に六角形の装甲が一定間隔で五センチほど張り出し目には見えない何かを展開した。
その直後、右舷水面が爆発音と共に数メートルの水しぶきを上げた。
「右舷魚雷二発命中、被害なし」
「第三機関、粒子残量は?」
艦長が問いかける。
「第三エンジン粒子残量四十五パーセント、後三回はもちます」
「そうか、魚雷は全て閉止障壁で防いでかまわん」
回避のために舵を切ったことで目標ポイントから遠ざかる。
「増援は間に合いそうにない。我々だけで敵艦を突破する。面舵いっぱい、第二デッキ主砲発射用意、左砲塔目標前方左たかつき型、右砲塔前方右たかつき型」
艦首にある防護シャッターが下がり、前方のみ二段式になっている甲板に取り付けられている20.3cm単装砲二基が姿を現す。主砲の上には飛行甲板があるため砲身角度に大きな制限があり、基本的に零距離射撃しか行うことができない。さらに回転角度にも大きな制限があるため、実質的に前方の敵以外を狙うことができない。
「主砲撃ち方始め!!」




