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GENERATION☆DESTRUCTION!!  作者: Yuki乃
EP07 Recapture Strategy
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Recapture Strategy(11)

                ~Sousuke Side~


 一二式閉止障壁の星形を成す極一部の線が間近に見える。線の幅は二メートル近くあり、それはまるで海上に続く光の道だ。

 しかしその線を越えることはできない。

 見ない壁に突き当たる。

「何だ、これは?」

 謎の障壁に阻まれ線を越えることができない。しかし衝突した感覚はなく、進めない理由を理解できない。

「進めないから障壁と呼ばれているのよ。でも原理は簡単だから今すぐにでも突破できるわ」

 イリスがその障壁にそっと触れる。

 障壁に触れるとその表面が波打つのが薄ら見える。

「……これはアブソリュートですね」

「よくわかったわね、その通りよ。端的に言えば、その子の能力を疑似的に再現したものよ」

「要するに同じ能力をぶつけて相殺するということか」

「小宇坂くんも鋭いのね、その通りよ。でも規模が違い過ぎるわ。障壁をある程度弱体化させないと突破は無理なの」

「だが通常兵器では効果がない」

 イリスは全ての攻撃を無効化してきた。一つだけ危ないと思ったのは戸村の

「ないともと言い切れないわ。能力を維持するために体力や精神力を消耗するように、機械にも障壁を維持するために消耗するものがあるはずよ」

 確かにそうだ。イリスを目に見えて疲労してはいないが、確実に疲労は蓄積されている。

 機械も何か特殊な消耗品を利用している可能性が高いが、もしそれが電力のように無限に供給可能なものであれば効果はない。

「爆撃機が来るわ」

 サイレンのような音を立てて急降下して来る機体、両翼に日の丸を掲げ、垂直尾翼には羽が五枚並んだ紋章が見える。

 羽の紋章は航空戦隊を表している。それが五枚ならば第五を示している。

 つまり第五航空戦隊ってことだ。

「何なんだよ、第五航空戦隊って」

「知らないならお姉さんが優しく教えてあげるわ。第五航空戦隊はLEGENDが所有している表向きは輸送船団よ。所属は北海道苫小牧にある潮泉基地の第一艦隊、でも今は作戦のために東南アジアで活動している都合上一時的に第五艦隊の指揮下に編入されているわ。今回の作戦への応援のために遠い所から遥々やって来たと言うわけよ。艦数はたった二隻だけ、母艦が一隻と護衛の潜水艦が一隻よ。母艦は大日本帝国海軍のものをサルベージして作られたという噂は有名ね」

 どこの世界の有名なのだろうか?

 俺は知らなかった。

 この人の解説の中に平和の国、日本とは思えないものまで混じっていたが、これでこそLEGENDだろう。

 艦隊を持っている時点で既に警備会社の域を超えている。一体どこを守るつもりなのだろうか。

 爆撃機Ju87C Stuka、旧大戦時に連合軍に悪魔のサイレンと恐れられた機体、しかし劣勢になってからは逆にこのサイレン音は隠密性にかける欠点となってしまったとか、しかし七十年近く前の機体が稼働できる状態で現存していることがそもそもの驚きだ。

 Ju87C Stukaは障壁の上空擦れ擦れから500kg爆弾が星形の陸側に食い込んでいるもう一つの点を狙い投下する。機体の動きから障壁は上空何百メートルもの高さがあり航空機は障壁に接触すれば最悪の場合撃墜もあり得ると思われる。

 さらに操縦席から人が爆発の後で落下するのが見える。

 どう見てもあれは単座の爆撃機だが、墜落することなく無人のまま急上昇し海上へ進路を変更した。

 爆発の後でさらに大きな爆発音が聞こえる。

「準備は整いつつあるわね」

 だがそれだけでは終わらない。

F-1が偵察を終えてJu87C Stukaが離脱したのと変わる様に海上の地平線の彼方から無数の光が突如として現れたのだ。

「何だ、あの光は? 飛行機か?」

「増援が来たみたいね。到着と同時にこちらも動くわ」

 次第に見えて来る機影、あれはレシプロ機だ。

 目視で十機以上は確認できる。

「あれが零戦よ」

「……まさか」

 日本に稼働可能な零戦はなかったはずだ。零戦は日本で作られながら、現存している零戦は海外にあるものがほとんどなのだ。

 しかし、イリスはそれをジッと見てから振り向いた。

「形状照合、零式艦上戦闘機五二型と確認できました。数十五、速度百メートル毎秒で接近しています、マスター」

 さらに機体の下に60kg爆弾を装備している。

「小宇坂くんは知らないのね。第五航空戦隊は旧大戦時の戦闘機の多くを未だに実戦配備していることから、別名、動く戦争博物館とも呼ばれているわ」

 しかし戦闘機の到着を待つことはなかった。

 山の斜面の一角から突如エンジン音がしたのだ。

「完全に要塞だな」

 それだけではない。海岸線に艦船が三隻ほど見える。

「あの軍艦は友軍ではありません。形状からひうち型一隻、たかつき型二隻です、マスター」

 それを聞き、俺は横目で朱雀院涼香に指示を仰ぐ。

「お姉さんは陸上の部隊を叩くから、小宇坂くんたちはここから逃げて!!」

 てっきり海岸まで出て戦えとでも言うと思っていたが、朱雀院涼香から発せられた言葉は真逆だった。

「あいつらはどうするんですか?」

 俺の人差し指は海岸を指す。

「あの船は危険よ。絶対に近づいちゃダメ! わかったわね」

「……わかりました」

 朱雀院涼香は張った制服の胸ポケットから一枚のメモ紙を取り出す。

「ここに部隊配置が記されているの、だからそれのどれかに合流するといいわ。それじゃあね、小宇坂くん♪」

 朱雀院涼香はメモ紙を渡すと敵部隊へ一直線に駆けて行ってしまった。

 俺とイリスでそのメモの内容を確認する。

 紙の両面に乱雑に書かれた簡易地形と凸印、それに大きな星型、潜水艦の位置まで記されている。

 どうやら潜水艦による部隊の回収地点付近に敵艦がいるようだ。

 まだ作戦が完了したという情報は入っていない。増援が来ている時点でまだ作戦中だと見て間違いない。

 保護対象は月宮瑠音つきみやるんだが、最新の情報では要塞内にいる可能性が高いとして秘密の突入部隊を送り込んでいる。

ならあの結界は何なのだろうか?という疑問が生じるのは当たり前だ。

 この五芒星は内部に何かを封印しているのは明白で、朱雀院涼香と第五航空戦隊はこれの破壊を目標としていることからも一二式閉止障壁を突破しなければならない理由があるのだ。

 ならば俺がするべきことは一つだ。

「イリス、やれるか?」

「はい、マスター。……アブソリュート」

 イリスは前面に能力を展開し、五芒星に少しずつ近づいて行く。

「無理だと思ったら無理をするなよ」

 障壁と障壁は衝突した瞬間を観測することなく。障壁はなかったかのようにイリスの手の先は五芒星の光る線の向こうへ通り抜ける。

 しかしイリスは反射的に手を引き戻した。まるで熱い物にでも触ったかのように……。そしてその場に座り込んで倒れるのを支える。

「大丈夫か、イリス?」

 さっきまでの無表情が一変して額には汗が流れ、力無くぐったりとしている。

「おい、イリス!!」

 一瞬失神しかけたイリスはすぐに意識を取り戻す。

「侵入、困難、時間的、後退、リアライズ効果、空間、断裂……。マスター……」

 あの障壁の内部がイリスの脳にかなりの負荷を与えたのだろう。文章を構成することができず単語だけを並べている。

 イリスは再び眠りに着いた。

 小さな体を揺らすが反応がない。

 どうすればいいんだ。

 さっきイリスが言った単語を繋ぎ合わせる。

「侵入が困難で後退するべき、リアライズ効果により空間が断裂しているって言ったところか……」

 どの道イリスなしでこの空間に介入することは難しい。

 もしこの障壁が超能力を同じものであるならば剣の力での突破も考えたが、この剣にも無効化できる容量に限界がある。ここで剣の効力を失う訳にはいかない。

 山からは新しく出現した機甲部隊、海岸には護衛艦が待機している。

 ここにいても仕方がないので、言われた通りのポイントを目指す。

 背中では零戦が空爆を開始し、爆音が響き森は爆風で揺れる。

 イリスを背負い道なき道を山と海岸線を頼りに進んで行く。

 未開の森は草木が生い茂り、ただでさえ暗い視界をさらに狭める。

 あれから何分歩いたかはわからない。

 俺たちの目の前に鈍く光る何かが見えたのだ。

 位置は高く、近づくに連れて街灯であることに気づく。

 海岸と並行に歩いていたがどこかの道路とぶつかったようだ。

 人気がないことを確認し近くの標識を調べる。

「……小沼?」

 街灯の近くの看板にはそう書いてある。

 ポケットからクシャクシャのメモ紙を広げ街灯の明かりに照らした。

「このあたりだ」

 地図上でこの辺りなのだが人影はない。

 この紙が正しければ予備部隊が駐留しているはずだ。

 道路を海岸方向に歩くと集落が見えて来る。

 その風景に合わない装甲車両が一台路肩に停車していたのだ。

 九六式装輪装甲車、側面装甲にLEGENDの文字、間違いない。

 その近くにいた同じ制服の男に事情を説明する。

「なるほど、大体の事情は理解した」

 作戦は未だ継続中で、一人は保護したようだが、まだ送り込んだ部隊は回収できていない。

 そうであるならば、もう一つ言わなければならないことがある。

 あのメモ紙を開き見せる。

「この回収地点に保安局の軍艦が展開しているところを確認した」

「それは本当か!?」

「ああ、ひうち型が一隻、たかつき型が二隻だ」

「なるほど、向こうも流石に黙ってはいないか」

 そうだ、保安局は既に駆逐艦を数隻させているようだし、既に東京沖海戦のような状況になっている。

「だが大した問題ではないんだよ」 

 俺は首を傾げる。

「我々がここを守っているのがその理由だよ。この先の海岸に予備の回収艦が待機しているのさ、君たちもそこへ急ぎなさい」

「わかりました」

 イリスが戦闘不能では戦うことは難しい。ここは素直に従おう。

 二人は海岸に向けて再び歩き出した。

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