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∞クロニクル・アルディア∞ ~101年目の未来~  作者: 空乃真芽
第六章 繰り返された百年編

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第九十九話 違う結末

「神崎蓮が覚えている世界線の中に。」


 レインは尋ねる。


「俺がいた履歴はいくつある?」


【対象:レイン・アークライト】


【照合を開始】


 禁書庫の前室で。


 全員が表示を待つ。


【名称一致:多数】


【対象識別:不一致を含む】


「同じ名前の別人もいる。」


「世界線が変われば。」


 学院長が言う。


「生まれなかった世界もあるのでしょう。」


 同じ家に。


 同じ日に生まれても。


 魂まで同じとは限らない。


「セレスや俺も同じなのか?」


「今は俺を調べてる。」


 レインは答えた。


「一度に広げたら、誰の記憶か分からなくなる。」


 セレスの既視感も、同じ理由とは限らない。


「今の俺と一致するものだけ。」


【魂情報による照合:制限付きで実行】


     ◇


 最初に見えたのは。


 剣を持たないレインだった。


 学院の制服を着たまま。


 北門の外へ倒れている。


 魔物の爪が迫る。


 身体は動かない。


 魔力を断つ方法を知らなかった。


「やめろ!」


 トーマの風が魔物へ当たる。


 わずかに進路が変わる。


 爪が肩を裂いた。


 痛みが走る。


 今の肩には傷がないのに。


 レインは床へ手をついた。


 景色が変わる。


 今度は。


 剣を抜くのが早すぎた。


 魔物を斬り倒し。


 逃げていた群れが一斉に襲いかかる。


 セレスの水が弾かれ。


 トーマの風が乱れる。


 選んだ一手で。


 戦いの結末が変わった。


 倒した個体の後ろから。


 白く染まった魔物が飛び込む。


 レインは剣を返せない。


 ガレスが間へ入り、風で群れを押し返す。


 その背中へ白い光が触れた。


 景色はそこで途切れた。


     ◇


 さらに景色が変わる。


 魔物はいない。


 北門も壊れていない。


 レインは学院にすらいなかった。


 遠い村の道を。


 一人で歩いている。


 クロニクルも見えない。


 桐谷玲の記憶もない。


 ただ。


 北の空を見上げていた。


『行かなければ。』


 理由を知らないまま歩き出す。


 その背中が遠ざかる。


「切れ!」


 ガレスの声で。


 レインは目を開けた。


     ◇


「三つ見た。」


 呼吸を整えながら説明する。


 傷ついた自分。


 魔物を倒した自分。


 学院にいない自分。


「全部、今のレインと同じ魂ですか?」


 セレスが尋ねる。


【魂情報:一致】


「同じ。」


「でも、桐谷玲の記憶がなかった。」


「見えなかっただけでは?」


「そうかもしれない。」


 日本語を知らない。


 クロニクルを認識できない。


 その二つは。


 短い景色だけでは断定できない。


「ほかの履歴にも、日本語の反応があるか調べる。」


【利用者言語情報を照合】


【初期履歴群:反応なし】


【途中履歴から反応を確認】


 最初からではない。


 何度も繰り返した途中で。


 レインの中に日本語が現れた。


     ◇


「桐谷玲が。」


 トーマが言う。


「途中から、レインの中にいた?」


「可能性は高い。」


 レインは胸へ手を置く。


 二人分の人生が。


 どちらも自分のものとして存在している。


 だが。


 そうなった始まりを知らない。


「誰が日本語の魂をつないだ?」


【魂経路の作成者を検索】


【対象識別:神崎蓮】


 神崎の名前が現れた。


 初代魔王を倒した勇者。


 何万もの百年を覚える魔王。


 その人が。


 世界の外側から。


 桐谷玲へ届く経路を作っていた。


 なぜ玲だったのか。


 狙って選んだのか。


 この表示だけでは分からない。


「経路が作られたことと、魂が来たことは別です。」


 学院長が言う。


「はい。」


 決めつけない。


 次に探すべきものは。


 桐谷玲が初めて現れた世界線だった。


 日本の記憶が偶然残ったものではないなら。


 神崎は何を求めて、世界の外へ道を伸ばしたのか。


 玲が来る前の失敗から調べる必要があった。


 成功だけを見ても。


 神崎が何を恐れ、何を諦めなかったのかは分からない。


 失敗した世界線にこそ。


 最初の願いが残っているかもしれなかった。

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