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《REVELATION ONLINE》 ―人格診断みたいなVRMMOで、最悪の適性が出た―  作者: 如月 爐
愛と悪意の熱

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38/42

ゲリラ配信

投稿若干遅れて申し訳ありません!

 少女と男を乗せた車は、グリーンテンペストの外郭へ向かって走っていた。


 街の中心部を離れるにつれ、人の姿は少なくなっていく。


 広場を埋め尽くしていた露店は姿を消し、整備された石畳はひび割れたアスファルトへと変わる。通りを行き交うNPC達もまた、その数を減らしていた。


 代わりに増えていくのは、使われなくなった建物だ。


 窓ガラスの割れた雑居ビル。錆び付いた鉄骨、看板だけを残して潰れた商店。



  発展を続ける街の裏側には、必ず取り残される場所がある。それは人の業の結晶。奪い、壊し、なおも貪欲に成長を続ける様は、まるで巨大な蛇を思わせる。


 「……そういえば、なんで灰色の墳墓って名前を聞いた時、嫌な顔をしてたんだ」


 「……普通にめんどくさかっただけでさぁ」


  少女の口ぶりは、何かを隠しているような、自分でも、意識しないようにしているような。独特の含みがあった。


 「どういう場所なんだ?」


 「さぁ。そういうの考えるのは考察勢の仕事でさぁ。あーしらもそこまで詳しい話を知ってるわけじゃありやせん」


 「……知ってることだけでも教えてくれないか」


 「はぁ。いいですけど……」


 少女は億劫そうに語る。考察勢の間では、灰色の墳墓のある一帯は、戦時中に整備された工業地帯だったと言われている。


 「かつてこの世界を分断するような大戦争がありやがったんでさぁ。それで……」


 「……墓、か」


 「弔う意味があるなら、良かったんでしょうが」


 その遺跡が持つ本来の役割は、墓地ですらなかった。実務的で、無機質で、残酷なもの。


 「戦争が起こったら、色んなゴミが出やす。環境汚染とか、まぁ、捨てる場所にも困るでしょう」


 「現実と変わらないな」


 「一番、場所を取って、一番土地を汚染するゴミ……おっさん、なにかわかりやすか」


 「……まさか」



 「────人の死体、でさぁ」



 死者を弔う場所ではなく、死者を効率よく処分するための施設。それが灰色の墳墓。墓というのはある意味、当時の人間がその様を皮肉った呼び名なのだろう。


 「だからまぁ、色んな噂が出やがりやす。誰も居ない通路から足音が聞こえる、耳元から突然話しかけられる、足首を掴まれた……とか」


 「ありそうな噂だ。実際本当なのか?」


 「いんや、あーしは少なくとも、ゴースト以外の化け物は見やせんでしたね。その噂の数々も、このゲームが始まってから二ヶ月経たずで聞かなくなりやがりましたし」


 「ふむ……噂が消えるというのは、物騒な話だな」


 少女が言うには、それ以外に関しては、他の遺跡と比べてマップが狭かったり、一本道だから迷いにくかったりと、初心者にオススメの遺跡の一つであるらしい。ただ──


 「ただ、好んで近づこうと思う人間は少ないでしょうが」


 「人間の死体が埋まっていると考えたら、心理的には……そうなるか?」


 「そんなの一々気にしちまう人間は、もうこのゲームに残ってねぇでしょう」


 「なら……?」


 少女はそれ以降、口を閉ざしてしまった。宙ぶらりんになった男の問いは、弱々しいエンジン音に掻き消される。


 車はやがて舗装路を外れ、寂れた土地へと踏み入る。地面の色が変わったことに気がついた。


 周囲には、風が吹くたびに、白とも灰ともつかない粉塵が舞い上がっている。


 遠くの景色は霞み、空と地面の境界が曖昧になっていた。そこは既に、グリーンテンペストの外ではなかった。街に属しながら、街から切り離された場所。ゴーストタウン、なんて響きが、男の脳内にこだましていた。


 最初に見えたのは煙突だった。


 崩れ落ちた巨大な煙突が、斜めに傾いたまま空を突いている。


 巨大な焼却炉は、火を失って久しく、搬送レーンにはなんのものか分からない、赤黒いシミがべっとりと付着していた。巨大なクレーンは首を折ったまま停止し、その先端は灰に埋もれていた。積み上げられた鉄骨は、今にも崩れそうに、ギイギイと嫌な音を立てる。


 灰色の墳墓。亡霊の巣窟となったその場所は、今尚、時代の面影を感じさせる。


 「……雰囲気が、あるな」


 「ベタですねぇ、おっさん」


 この手の造形に知識のない男は、なんの情緒もない言葉を吐く。それを半笑いで流す少女は、車を降りると、物怖じせずにその中へと入っていく。


 施設内は薄暗く、埃とカビに覆われていた。鼻をつく異臭は、生ゴミと、それ以外の何かを混ぜたような、嗅いだことのない匂い。一歩、歩く度に、湿った地面が、粘着性のある音を発する。


 「空気が、悪いな」


 「ここはまだマシでさぁ。奥に行くほど、嫌なもんが見れますぜ」


 少女の足取りは軽い。流石に慣れているのか、はたまた、別の理由があるのか、男には分からなかったが。


 「奥……どのくらいまであるんだ」


 「ここは浅層だから……あぁ、遺跡ってのは三層構造になってるんでさぁ。あーしらが今いるのは浅層。次に中間層。最後に深層。深層の一番奥にはボスがいて……」


 少女の足が止まる。手に持っていた携帯端末を見つめたまま、動かない。


 「?どうした」


 「なんっで……こんな時に……おっさん!!帰りやしょう!!」


 「え、まだ来たばっかじゃ」


 「いいから!!」


 少女の右眼のモニターに浮かぶ「危」の文字。それから男は、強引に少女に手を引かれ、来た道を引き返していく。


 「くそっ……!いねぇんじゃねぇんですかい……!」


 「何の話だ!?」


 握った掌から、少女の脈動を感じた。酷く早鐘を打つ鼓動。男は、この世界で少女が感情を顕にしたシーンを思い出していた。嫌いな奴に会った時、企業勢のような数の暴力に追い詰められた時、或いは────


 もっと異質な、不幸



 「おや」



 声が響く。低音の女声。透き通り、だが確かに浸透する、不思議な声。悪意や敵意を全く感じない、優しくて、穏やかな音色。



 「まだ、いらっしゃったんですね」



 だが、男の本能は、明確に警鐘を鳴らしていた。



 「狩り尽くしたと思っておりましたが、幸運、ですね。今日はお仕事も上手くいって、上司さんにも褒められて、良い一日です」



 少女の端末には、あるプレイヤーの配信画面が映し出されていた。


────────────

【日課】ドキドキ!初心者さんと交流しよう配信♡ Part258


[獲物きちゃ!]

[こんばんは〜]

[初見です!]

[あら〜^^見つかっちゃったねぇ^^]

[なんか見た事ある人いるな]

[モニカたん!?]

[モニカきたwww]

[蝙蝠女あつ]

[うひょー!有名人!]

────────────


 なんの緊迫感もない、コメントの数々。その書き込みは、数万は超えていただろう。同接の人数は7000人。


  男たちは、観られていた

 


 「ゲリラ配信でしたし、今日は彼らで終わりにしましょうか」



 《PLAYER RANKING:2位》



 ──── “灰墓(グレイヴ)



 その名で知られる、この世界の、圧倒的強者に、見つめられていた

読んでいただきありがとうございました。次回の更新は18時頃を予定しています。


お陰様で累計PVが2000を突破しました!また、今回のお話で10万文字も突破しています。本当に多くの方に読んでいただき嬉しく思っています。稚拙な文章ですが、これからも応援してくださると嬉しいです。

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